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 九州での惨状は遠く離れた北海道にも当然届いていたが薫達は北海道、帯広で怪異と相対していた帯広を襲った超異常寒波、それは帯広の街を氷で覆い人々は生きながらにして氷像と化していた一瞬の出来事だったのだろう階段を降りていた者は氷像となりそのまま階下へ落下すると粉々に砕けていた-196℃の液化窒素であるがこの温度でさえ皮膚を凍結させるに至るのが精一杯である、宇宙空間の気温は-270℃と言われているがこの温度でも一瞬で人を凍りつかせるには至らない現世の物理法則で不可能なものを再現できるとすればそれは常世の仕業であると薫、裕二、巌の3人はその原因を探し帯広の街を彷徨っていた、気温は-5℃これでも十分寒いのだが人を凍結させる温度には遠く及ばなかった。


「おい薫ぅやっぱダウンこおてやぁー、寒ぅてかなわん」


「誰ですか『子供は風の子んなもん要らへんわ』と言ってたのは」


「わし子供ちゃうし」


「そんな事わかってます、でもこの状況じゃダウン買うにもですよ」


 帯広の街並みはいつもと何ひとつ変わらぬ様子であったが人々の喧騒や車の走行音など一切なく聞こえてくるのはアーケードを抜ける風の音だけだった、商店は普段通り営業していたがそこに居る店員は笑顔で凍りついてるだけで接客を望む事は出来ない火事場泥棒も聞こえが悪いと薫は巌に我慢するように諭した、とりあえず状況を確認して先生のいる札幌へ戻って考えようと、今回から慈照も随伴していたが前線に立たすのはまだ不安があると総指揮を頼んで札幌へ残って貰っていた。


「兄貴、薫さん、なんか来ますよ」


 栄通商店街にいる薫達に凍える様な寒風が吹き込んできた。


「薫、お前は下がっときや」


 巌は首元を正すと肩を回した、裕二は横でいつもの儀式を始めると薫は目を背けた。


「薫さん終わりましたよ、いい加減慣れて下さいよ」


「無理だよ⋯」


 薫はそう言うと思い出し軽く(えず)いていた、寒風に続き今度は地吹雪が足元を駆け抜けてゆく、前方からは雪煙の壁が薫達に迫ってくるとアーケードの天井と商店の看板はあまりの低温に軋んでいた、裕二は前に進み出ると雪煙の正体を探る為その中に刀の鋒を突っ込んだ、そして振り返ると首を振り瞬時に薫の元へ帰ってきた。


「多分、あの雪煙が原因だと思うよ」


 裕二は刀の鋒を見せた、霧島博士が裕二の為に七支刀を地球外の鉱物と共に打ち直した刀、その鋒が凍り付き軋んでいた。


「初めてだよこんなの、多分、僕は無理だよ」


「ではとりあえず写真だけ撮って退散しましょう原因はハッキリしましたし」


 しかしそれを聞き入れられない男がひとり、巌は軽く飛び上がると拳を構えた、裕二が言った。


「でも兄貴なら大丈夫です、兄貴の身体は何も受け付けませんから」


 巌は迫りくる雪煙に突っ込んで行った、ドライアイスの煙の中に何かを落としたようにパッと雪煙が広がり巌を呑み込んだ続いて中で動き回る人影が微かに見えた拳を振るっているのかその度に雪煙が激しく鼓動する何が中で起こっているのか薫と裕二はそれをただ見守った、その状況が10分程続いたか突然雪煙は霧散すると辺りの温度は元の-5℃に戻った、しかし体感は常夏の国を想像させていた。


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