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“ピチャ”
薫の頬に水滴が落ちてきた最初こそ気にもしなかったがそれが巌にも慈照にも落ちてくるとあり得ない状況に皆が辺りを見渡した、雪煙は消え去っていたが同じく信じられないと雪女は顔を引き攣らしていた。
「お前キモいねん、いねや!」
皆が一斉に巌を見たが当の巌は何だよと不満げな表情、っと突然、薫が乙女の様な金切声を出し横に飛び退いた、薫の傍らには突如として見知らぬ少女が現れていたのだ、ルッキズムを口にするのは憚れる昨今のコンプライアンスではあるがその少女は身長120cm程度、肌は透き通る程に美しいのだが膨よかで全体のシルエットは球の様であった。
「⋯ゆっ雪音!」
雪女は駆け寄りその少女に抱き付いた、その少女こそ雪女の実娘雪音であった、皆、声にこそ出さなかったが心中で思う事は同じで母と娘を交互に見返していた、しかし薫だけはワナワナと小刻みに震えていた薫は少女の向こう側を見ると怯え駐車場の床を這う様に後退っていた脳裏にはあの川崎での情景が浮かんでいた、そして薫は叫んだ。
「ガンさん!裕二さん!」
巌は薫の叫びに眉間へ皺を寄せたが裕二はハッと何かを思い出し取り繕う様に説明を始めた。
「あぁゴメン、ゴメン、言いそびれてた、さっき博士から連絡があって⋯実は娘さんを探して貰ってて⋯まぁそんな感じで⋯ここに至る、以上」
裕二の説明を受けて尚、突如現れた焔の精霊を受け入れられない薫、そして慈照であったが薫のそれとは違い同じ焔の精霊でありながらも川崎で感じた禍々しさと圧倒的な畏怖の念を抱く事はなく同じ精霊なのかと疑っていた、巌は完全に舎弟扱いで人質救出を労っていた。
「あの皆様、私共はこれでお暇致します皆々様から受けた御恩忘れるものでは御座いません、もし何か御助力出来る事が御座いましたらお声掛け下さいませ、では、行こうか雪音」
「えっー嫌や、久々にこっち来たんやしも少しいようや」
「雪音、わがまま言わないでお母さん少し疲れたの、常世に戻って静養しないと」
「ほなオカンだけお帰りや、うちこのお爺ちゃんとおるし、ええやろ?」
雪音は慈照を見上げ手を握ると現世に残ると言い出した、修行に明け暮れ救世に尽力し気付けば還暦を過ぎていた当然妻もおらず子もいない、なのに急に孫が出来たのだ勿論、本当の孫ではなかったが小さい子からお爺ちゃんと言われればいくら慈照と言えども意識せずにはいられなかった。




