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 巌とは出会って間もないがこの様な断末魔をあげもがき苦しむ姿は想像だにしていなかった、痛いや苦しいなどこの男の中に存在しないと思っていた慈照は巌を抱き起こし顔を覗き込むと思わず顔を背けた。


「痛い、痛いよ先生、どないかしてやぁー」


 慈照は顔を背けたまま肩を振るわせていた、雪女も暫くは勝利の余韻に浸っていたが巌へ近付くと同じく顔を背け肩を揺らした。


 駅前に停めてあるコンテナの扉が開くとファッと白い煙が漏れ出し中からは全身を白で染める人型が次々と飛び出し地下駐車場のスロープを降りて行った、何体降りて行ったであろうか100体は優に超えていた最後の一体が降りた時、裕二が飛び出しその一体を鹵獲すると薫の元まで引きずってきた、もがく人型を裕二の蛇を思わせる腕がガッチリと自由を奪うと裕二は顔を下に向けあの儀式を始め刀が積雪の上にボトりと落ちた。


「薫さん、それ持って来てくれる?」


「えっ裕二さんはどうするの?」


「僕はコイツの中に入るからイイ感じでそれ渡してね」


 そう言うと裕二はヘナヘナと積雪の上に倒れた、同時にもがいていた人型は黙って薫に向き直ると親指を立てた。


「ちょっちょっと裕二さん!」


 薫の声も聞かず裕二の入る人型はスロープを降りて行った、裕二は怪訝そうな顔つきで唾気の残る刀の柄に雪をかけそれを除去すると両手でそれを持ち上げた。


「だからこれ重いんだって⋯全く、でもイイ感じの時に渡せって区別のつかない100体からどうやって見つけんだよっ!お前はバカなのかぁ!」


 薫の叫び声が吹き荒む吹雪の中、人気のない帯広の街に響いた。


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