26
相変わらず薫は白に染まった世界を無駄とわかりつつ凝視していた、すると横にはいつの間にか裕二が現れ同じく窓の外を眺めていた。
「裕二さん見えるんですか?」
「いいや、見えないよ」
とは言うものの眼光鋭い裕二の表情に薫は何かを悟り続く言葉を呑み込んだ、裕二は顎に手をやりブツブツ意味不明な事を呟くと薫に言った。
「薫さんそろそろ行こうか」
地下駐車場では汗こそかかないが雪女の必死の攻撃を巌は踊る様に受けては躱し、躱しては受けるを繰り返していた。
「姉ちゃんはあの中におらんと何もでけへんのやな、ええで待っとるからどないかしぃや」
雪と変わらぬ真白な顔、眼だけが炎の如く紅く血走るとスッーと滑る様に後退する、巌から距離をとり雪煙に向かう雪女は突然背中にドンッと何かに当たると驚き背後を見た、雪女の後ろには慈照が立ちはだかりスッと掌を雪女の背中にあてがっていた、雪女は振り返り慈照に冷たい吐息を吹き掛けようとしたが身体は固まり視界の端にしか慈照を捉えられないでいた。
「我々は貴女に仇なす者ではありません、どうかお鎮まり下さい」
慈照の言葉を受けても抵抗を続けた雪女だったがいつしか諦めると禍々しいオーラを解いた、それを感じ取った慈照も拘束を解いた。
「先生、甘いんとちゃうかぁ」
巌が呆れた顔で近付いて来ると慈照はそれを静止した、実際雪女は巌の言う通り右手には鋭利な氷の礫を握っていたが慈照の人間にしておくには惜しい程の潔白さと精霊としての誇りがそれを止めさしていた。
「何があったかお話を伺えませんでしょうか」
雪女の手からは礫が落ちると静まり返った地下駐車場に乾いた音が響いた。




