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着地の衝撃で雪煙がパッと霧散したがまた巌の下半身を包んだ、正面には無表情な雪女が立っていた。
「なんやネェちゃん、顔晒してええんか」
雪女はおもむろに両手を水平にあげ正面で掌を合わせた、それに同調する様に巌の周りだけ雪煙が盛り上がり巌を包み込んだ巌は蚕の如く繭の中に閉じ込められたが甲高い音と共にその繭が割れて巌がヌッと出てきた、巌は手にする五鈷杵を見つめ唸った。
「無茶苦茶ええやんけコレ」
雪女が一瞬眉を細めた、次の瞬間目の前に巌がいる事に今度は目を見開き同時に味わった事のない苦痛に膝を付いた、雪女は恨めしそうに巌を見上げた。
「女殴るんは性に合わへんが男女平等にうるさいからな今は」
その頃、上階のテラスに出た3人は建物の端まで行くと薫が眼下のモミの木を指差し言った。
「裕二さん、あの木を斬って建物に立て掛けて下さい、私達はそれを伝って降ります」
「えっ僕は?」
裕二は自分を指差していたが早く行けと言わんばかりの表情で薫は裕二の背中を押した。
「酷いなぁ薫さんは、一応僕年上なんだからね、先生より年上だし⋯」
裕二は愚痴りながらもピョンと階下に飛び降りた。
「薫さぁーん、これ高さ足りる?刀曲がらないかなぁ⋯」
裕二は刀を一度鞘に収め木に向かい合うと大きく息を吐いた、サッと積雪が舞い上がり裕二の居合い抜胴は直径50㎝程のモミの木を両断にした、しかしあまりに正確無比な一刀に木は微動だにせず裕二は階上の薫に向けて両手を広げた。
「何やってるんですか裕二さん、斜めに斬らないと倒れないでしょ」
「だって刀が曲がると嫌だから」
「言い訳はいいですこっちに押し倒して下さい」
裕二は不貞腐れた態度で刀を鞘に納め木を後ろから押した、ガサッという音を立てモミの木が建物に倒れ掛かると先端が薫に襲い掛かってきた、薫は慌てて逃げようとしたが足元を取られ転ぶと思い切り腰を強打し声を上げた。
「薫さぁーん、どうかしましたか?」
すると慈照が笑いながら今の状況を裕二に伝えていた。
雪女はあらゆる攻撃を巌に放っていたが巌と五鈷杵の前に何も出来ないでいた、巌はのらりくらりとその攻撃を躱し時には弾き明らかに時間稼ぎをしていた、出し切った感の拭えない雪女に対しこの場で終わらす事も容易であると巌は考えていた、しかし雪女の放つ一撃一撃には切ない程の殺意が乗せられていた、昨日一戦を交えはしたがこれ程の殺意を抱かれる覚えはない過去に遭遇した可能性はない断じて言える巌は寒がりである関東より北に行った事がないのだ雪女側がバカンスと南に下って来ていれば話は別であるがそれも考えにくかった、では何故ここ迄の殺意を抱いているのか慈照の言う鎮める行為がこの雪女には救済になるのではないだろうか戦いの中で巌はそう考えていた、すると図書館の外を3人が駆け抜けて行った。
「ネェちゃんお開きや、次まで修行しときや」
巌はそう言うとガラス窓を突き破り3人の後を追った、雪女は呆然とその後ろ姿を眺めポツリと呟いた。
「⋯雪音」




