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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
6/24

006:エース

 1軍はメインアリーナ、2軍はサブアリーナに移動。

 もちろん累と千隼たちは2軍として呼ばれた。

 ちなみに監督である大輔は、基本的に1軍の方を見ているので、2軍はコーチ陣が担当してくれている。

 まず練習を開始する前にコーチが選手たちを集めた。



「君たちの目標としては1軍に上がるところだが、まずは春季リーグが近い。そこで1軍に行けるという事を、是非ともアピールして貰いたい」


『はい!!』



 中学クラブチームは全国大会のような大きな大会の他、山梨県内のクラブチームによるリーグ戦が4月〜5月と10月〜11月にある。

 そのリーグ戦も1部から3部に分かれ、各6チームの計18チームで争われる。

 ちなみにレッドスターズは1部に1軍が、3部に2軍という2チームが参加している。

 まず2軍の目標はリーグ戦で結果を残す事だ。


 全員の目標が統一されたところで練習が始まる。

 ジョグから動きながらのストレッチをするダイナミングストレッチからスタートした。

 人数も人数なので、こんな中で練習するのは初めてだ。

 ほんのり汗をかいて来たところで、はしご状のラダーと呼ばれる器具でフットワークの練習をする。

 強豪校では当たり前のようにやるので、スイスイと間違える事なくやれる。

 だが累は初めてなので足元が不正確だ。



「おい、新人っ! スピードを落として良いから、丁寧にフットワークを意識しろ!」


「は はい!」



 累はスピードが遅くなったら、後ろの人や先輩に迷惑がかかると思い、速度を早くして雑になって来た。

 それを見た先輩が丁寧にやるように指示をする。

 スピードを落として良いからと顔と声とは裏腹に、先輩方は累に寄り添ってアドバイスした。

 アドバイスを受けたので、累は大きな声で「はい!」と返事をし意識し直すのである。


 そしてさっきよりも汗をかいたところで、ようやくボールを持っての練習が始まる。

 まずはボールを2つ持ってのドリブル練習。

 片方は強く高く、片方は強く低く歩きながら行なう。

 片方に意識をしたら、片方のバランスが悪くなる。

 難しすぎるわけでは無いが、これが無意識でできるようになればハンドリング能力が上がる。

 これは普段もやっていたので、先輩方に引けを取らないハンドリング能力を見せた。



「よーし! レベルを上げるぞ、レッグスルーとクロスオーバーを交互にやれ!」



 ドリブルメニューが進んでいき、良い感じに体がホクホクして来たところで、1度給水タイムが設けられる。



「累、お前はやっぱりハンドリングは凄いな。そこだけは認めてやっても良いぞ」


「そ そうかな? 千隼くんだって、ラダーの時にビックリするくらい速かったよ!」


「そんなのが早くてもなぁ……」



 給水している累に、千隼がハンドリングを褒めた。

 褒められて嬉しくなった累は、ラダーメニューの時に異様に速かった事を褒める。

 嬉しそうにしてから悔しそうな顔をした。

 ラダーメニューが速いからって、ハンドリングで劣っていたら無意味だと思っているからだ。

 なんとも気まずい雰囲気。

 2人を助けるようにコーチが「再開するぞぉ」と選手たちを呼び戻すのである。


 ここからはシューティングの基礎練習が行なう。

 やはり個人メニューを3年間もやっていた事もあり、ハンドリングとシューティングに関してはピカイチだ。

 近距離から遠距離へと次第に遠くになっていく。

 レッドスターズが強豪と呼ばれているだけあって、2軍チームの面々もシューティングが丁寧。

 レベルが高いので累のテンションも上がる。



「累っ! 手だけで打たずに、足と腰を使って打て!」


「はい!」



 個人練習とは異なる第三者による指導に、累は自分自身の新たな発見をするのである。

 レベルが高い場所での練習は楽しい。

 そう累は考えている。

 周りは自分よりも遥かに上手い選手ばかりで、気を抜けば置いていかれる世界に立っている。

 こんなにもワクワクする事が他にあるかと思う。

 そんな風に楽しんでいると、コーチが累に「ちょっと来てくれ」と声をかける。



「累、監督がメインアリーナに来てくれと言ってる。ここの練習は良いからメインアリーナに行きなさい」


「わ 分かりました」



 コーチは監督からの伝言を累に伝える。

 伝言とは累をメインアリーナに呼ぶようにとの事で、それが聞こえた2軍の選手たちはザワザワする。

 確かにハンドリング能力やシューティング能力が高いのは認めるが、それ以外のディフェンスやオフボールの時の位置どりは全くもってダメ。

 なのに1軍に呼ばれるのかと困惑するのだ。

 どうなっているのかとザワザワしている中、累はサブアリーナを出て行ってメインアリーナに向かう。


 メインアリーナの扉を開けて中に入ると、累は1軍を全身で感じるのである。

 最初から1軍で練習をしている蓮を含め、全選手が全身から殺気が出ているんじゃないのかという雰囲気で、1つ1つの練習をしている。

 別に仲が悪いわけじゃないが、弱気なプレイをしたりなどは遠慮せずに指摘しあっていた。

 その雰囲気に累は「わぁ!」と目をキラキラさせる。

 1軍の練習に見惚れ佇んでいる姿を発見した大輔は、手をパッパッと動かし「こっち来てー」と呼ぶ。

 ハッと我に帰った累は、大輔に駆け寄っていく。



「おぉ来たか、2軍の練習はどうだ?」


「周りのレベルも高くて楽しいです!」


「そうかそうか、このレベルで楽しいと言えるのは凄い事だ! さてとわざわざ来て貰ったのにはわけがある」



 2軍とはいえども練習のレベルが高いのに、そこを楽しいと言える累を大輔は感心する。

 そして呼んだ理由について説明を始めた。



「うちの1軍はダイナミックストレッチや対人系のメニュー以外は、ポジション別に分けて練習しているんだ。そこで累くんには、これからコイツと共に練習して貰う!」


「一緒に練習?」



 レッドスターズの1軍はチーム全体でやらなければいけないメニュー以外は、ポジション別に細かく分けて練習をしているのである。

 そんな中で累には、ある選手と組んで練習して貰うと大輔は満面の笑みで語った。

 誰と練習するのだろうと思っていると、大輔の後ろに腕を組んでいる人がいるのに気がつく。

 パッと見て累よりも遥かに大きい。

 そして何よりも口の左下にホクロがあり、端正な顔立ちをしている爽やかイケメン。



「おぉ君が噂の累くんか。俺は このチームで一応エースをやらせて貰ってる《勝場 樹里(かつば じゅり)》だ、ポジションはPFだ。ぜひともよろしく」


「え エース……よろしくお願いします」



 これから累が共に練習をするのは、このレッドスターズのエースである樹里だ。

 身長は185cm。

 エースと言われる前からオーラのようなものを感じており、累は言葉が詰まらせながら挨拶する。



「これから この樹里と個別の練習をして貰う。あのセレクションでのプレーに、この樹里と同じ素質を感じた。だから樹里を間近で見て、君もエースとは何かを学ぶんだ」


「は はい! 分かりました!」


「うん! それじゃあ樹里、累くんを頼んだよ」


「はい、しっかりとやりますんで」



 累の素質をエースの樹里と同じモノを感じ、今からでもエースとは何かを学んで欲しいと言うのだ。

 その期待に応えるべく、大きな声で返事をする。

 樹里も累に自分のメニューを、一緒にやらせると不敵な笑みを浮かべながら返す。

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