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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
5/25

005:彼らの未来

 1Q目に絶好調な活躍をしていた累だったが、ここ数年間を個人メニューで練習していた事が仇となる。

 もう負けられないと思った2軍のマークがキツくなり、パスや連携で得点を取ろうにも経験が無いので上手くいかず、3Qだけで5つのターンオーバーを記録してしまう。

 そして累が機能しなくなると、もう千隼たちでは対処できなくなり、さらに点数が開いた。

 結果を見れば96対46と大差で敗北した。


 セレクションが終わり監督の大輔とコーチ陣は合格者を話し合うと共に親睦を深める為、見学に来ていたスカウトマンの入江を連れ焼肉へと向かった。



「いやぁ、やっぱり大輔さんのところのセレクションは面白いですねぇ! 最後こそ大差で決着しましたが、前半戦までは目が離せませんでしたよ!」


「後半は地力の差が出ましたねぇ。それでも才能の片鱗は感じる試合でした」



 乾杯をしてから入江は試合についての話題を出す。

 後半からは目も当てられないような試合になったが、前半だけを見れば悪く無い試合だった。

 大輔が指導する選手は、本当に面白いと入江は語る。



「池田くんは2Qを出て17PTS、5REB、2BLKの活躍をした一方で。0ASTに5TO……これはどう評価するべきなんですねぇ」


「彼は蓮と知り合いらしく、蓮曰く3年生の頃に当時 入っていたクラブチームを抜けて、上手くなる為に個人での練習に切り替えたみたいなんですよ」


「だから個人技は才能を感じるのに、パスやコート上での立ち位置が悪かったんですね!」



 累のスタッツをどう評価するべきなのかと、ここにいる大人たちは腕を組んで悩む。

 しかし大輔からの補足が入った。

 補足によって悪かったパスとコート上での立ち位置に理解がいったのである。



「池田くんとは逆に8PTS、2REBと自身の攻撃力は劣りますが。7ASTとプレイメイキングはピカイチだったのが牛沢くんでしたね!」


「えぇ確かに彼が居なければ、もっと酷い試合になっていたのは確実でしょうね!」



 千隼が居なければ試合は、もっと早く崩壊していたと全員の総意である。

 チームプレイが出来ていない累も、別にこれから学んでいけば、別に問題ないだろう。

 そう大輔は考えている。

 なので合格者が決定する。

 決めるべき事も決まったので、ここからは単純に飲み会を楽しもうと大人たちはビールを頼む。



「セレクション生も良かったですけど、何より安藤くんが絶好調なのは良かったですね! この試合でのMOMは安藤くんでしょうね」


「えぇ! 怪我が完治したとは聞いてましたが、どこまで復調しているのかが気になってたんです。しかし蓋を開けてみたら、好調も好調で本当に収穫のある試合でした。そうだ、これはオフレコなんですけどね……」


「ん? 何かあるんですか?」


「今、話している安藤に関してです」



 累や千隼の人材の発掘も嬉しいところだが、それと同じか上回るくらい収穫がある。

 それは怪我をして2軍に落ちていた安藤の復調だ。

 大輔は周りをキョロキョロしてから、スッと姿勢を向かいに座っている入江の方に前のめりになる。

 どうしたのかと入江は困惑。

 今から話す事はオフレコであると念を押す。



「安藤なんですけどね、どうやら進学先の第1希望として京洋大茅野さんらしいんですよ」


「そ それ本当ですか!?」



 安藤が高校の進学先として希望しているのが、入江がスカウトマンとして働いている京葉大学附属茅野だ。

 まさかそんな事を聞けるとは思っておらず、入江は立ち上がるほどに驚く。

 全国常連のレギュラーが自分のところを希望している。

 もしも取れたとして活躍すれば、スカウトマンとしての力を認められる事になるだろう。

 だから興奮しているのだ。



「これからもレッドスターズさんとは、親しい関係性になれそうですね! これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!」


「えぇこちらこそよろしくお願いします!」



 監督である大輔としても、強い高校との関係性は教え子たちの未来を決める事になるので重要だ。

 だから、こうやって接待もしている。

 しかし実際はプレイしている選手が、自らの力で特待を勝ち取る必要がある。

 今はまだ安藤はエースとは言えない。

 だがこれからの活躍によれば、京洋大茅野よりも上の高校からも特待が来る可能性が無いとは言えないはずだ。


 そしてここにもまた未来のエースの物語が始まる。

 いつものように庭に置いてあるゴールで、黙々とシューティングを累はしていた。

 そこに累の姉で次女の綺羅(きら)がやって来る。

 綺羅の手には封筒が握られていた。



「ねぇこの前のクラブチームから試験の合否が届いてるみたいだよ?」


「え!? 本当に!」



 シューティングをしていた手を止めて、累は綺羅のところまで駆け寄って封筒を受け取る。

 緊張しながら封筒を開けると、そこには大きく「おめでとうございます、合格です!」と書かれていた。

 累の手は興奮で震えている。

 そして両手を天に掲げて「よっしゃあ!」と叫ぶ。

 嬉しさのあまり自然と声が出てしまったのだ。



「おっ受かったんだ、良かったね」


「うん! 良かった、とても楽しかったから。バスケやるなら、あそこしか無いって思ってたんだ」


「やるって決めたら、しっかりと最後までやりなさいよ。お父さんもあ姉ちゃんも、もちろん私も期待してるから」



 セレクションに合格した累は、次の週の月曜日に初めての練習に参加する。

 ワクワクし過ぎて普通よりも早く到着してしまう。

 すると千隼もやって来て「あっ」となった。



「千隼も受かったんだ! 良かった!」


「あぁん? 自分は受かる気満々だったって? あんだけ最後の最後にやらかしておいてよぉ」


「それは忘れてよぉ〜、俺も恥ずかしいんだからさぁ」



 再会を喜ぶ2人。

 さらにチームのリュックを背負っている蓮が、やって来て累を見ると「ようやくスタートラインだな」と呟いてから更衣室に向かった。

 そして累も「うん!」と答える。

 これから累の伝説が始まる。


 着替えを終えた選手たちはコートに戻る。

 レッドスターズは全選手を合わせると60人もいる。

 なので体育館の中はパンパンだ。

 ザワザワしているところに、入り口の扉が開いて大輔とコーチ陣が入って来る。

 選手たちは話すのピタッと止め「おはようございます」と全員で挨拶するのである。



「おぉ元気そうで何よりだ。今日から新年度の練習開始日だが、今年こそは全国制覇を目指す! その為に1日1日を無駄にする事なく頑張るように!」


『はい!!!!』


「今から名前を呼んで1軍と2軍を別けるが、1軍のメンバーは このメイン体育館に残れ。2軍のメンバーは隣のサブアリーナに移動だ!」



 レッドスターズの1軍の人数はベンチ入りの15人と、予備メンバー10人の計25人で形成されている。

 もちろんベンチ入りができるのは15人までなので、残りの10人も落とされてしまう。

 そして1軍が25人という事は、2軍が35人だ。

 これだけでも普通のチーム人数がいる。

 1軍に上がるだけでも至難の業。

 当たり前の事ではあるが、3年生でも実力が無かったら2軍の試合にすら出れない。

 そんな残酷な世界がバスケである。

ご愛読ありがとうございます!!

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