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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
4/22

004:オモチャを前にした子供

 累のスーパープレイに見ている人間たちは唖然とする。

 リングやボールが変わるはずの中学バスケットで、1年生から こんなプレイは珍しい。

 困惑しながらも2軍チームはプレイを再開をする。

 しかし動揺は隠せない。



「おい! たかだかワンプレーで乱されるんじゃねぇよ、俺たちの方が有利なんだからよ!」



 2軍チームも同様が広がってある中で、安藤が声をかけ動揺をなんとか最小限に抑えた。

 このまま動揺が広がっていれば付け入る隙もあったのだろうが、2軍チームは持ち直してしまう。

 2軍チームのターンの攻撃で、またもトップの位置で安藤がボールを保持。

 

 マークマンは安藤に自由にさせないように、利き手の右手側にマークする。

 するとゆっくりと左手でドリブルを、ゆっくり始める。

 左サイドに移動するように、ゆっくり移動。

 45度の選手をマークしている累は、カバーに出た方が良いのかと様子を伺っている。

 これを逆手に取られた。

 真横にマークマンがいるのに、安藤はマークマンの胸に体をポンッと預けてからジャンプシュートを放つ。

 シュートは綺麗にリングへと吸い込まれていった。



「おぉさすがは誠だな、玄人好みのプレーをしやがる」


「この様子なら怪我は、もう問題なさそうだな」



 安藤のプレーを見ていた同級生たちは、玄人好みのバスケをすると褒めた。

 そして怪我の心配は無さそうだと話している。

 このまま試合が進めば、もっと安藤たちの調子が上がっていくので、大差が付くだろうと予想していた。

 しかし2連続で安藤が決めると、やり返すように累が2本連続となるフィールドゴールを決めるが、今度は3Pシュートを沈めて来たのである。

 また累かよと、2軍チームは警戒度を上げる。



(マズイな、池田だけが目立ってる……このままだったら良いところなく落ちる!)



 千隼は累のプレーを喜ぶのではなく、自分がアピールできていないと危機感を持った。

 何かしら印象に残るプレーをしなければいけないと、次のアピールチャンスを待つ。

 時間が進んだところで、累への警戒度が高まる。

 そんなタイミングでボールを、右45度で千隼がボールを所持し、マークマンの様子を伺う。

 するとマークマンが、チラチラと累の方を向いている事に気がついたのである。



(チッ! 舐めるんじゃねぇよ……俺だって池田くらいのプレーはできるんだよ!)



 千隼は目を離した瞬間を見逃さず、打てる間合いだと判断して3Pを放った。

 そのシュートは手から離れた瞬間、全員が入ると悟る。

 シュートが入る前に、千隼は両手を広げながら守備へと戻っていくのである。

 シュパッという音が体育館に広がった。

 観覧者たちが「おぉ」と歓声を上げる。

 点数は15対10と2軍チームが勝っているもののセレクション生チームも劣ってはいない。

 1Qの後半へと差し掛かった。


 2軍チームは安藤のドライブと、それに釣られてカバーに出て来たところを狙ってのアウトサイドシュートを中心に攻撃を仕掛けていく。

 セレクション生チームは累の圧倒的な1対1能力と、千隼によるプレイメイキングによって一丸となっての攻撃で対抗していくのである。

 しかし喰らい付いているとは言えど、自力の差が次第に付くのは仕方ない事だろう。

 千隼すらも難しいと思い始める。

 だが1人だけ気持ちは違った。



(楽しい! チームでやるバスケって、こんなに楽しいものなんだな!)



 27対19で負けてはいるが、累はチームでやるバスケは楽しいと笑みを浮かべている。

 そんな累を見た千隼は「負けてんのに笑ってんじゃねぇよ!」と頭をボコッと叩く。

 残り時間的にワンプレイだろう。

 千隼は仕方ないと累にボールを回した。

 ボールを保持した累は、満面の笑みを浮かべる。



「おぉ……あそこまで笑顔なのも珍しいな」



 満面の笑みを浮かべている姿を見た、スカウトマンの入江は「笑ってるわ」と驚いている。

 驚かれているとは知らない累は、ゆら〜ゆら〜と独自のリズムを作り始めた。

 そしてドリブルを突き始める。

 レッグスルーを2回連続で行ない、マークマンを翻弄しようと仕掛けた。

 さっきのプレーもあり、マークマンはジッと耐える。

 予想通り内側に向かってドライブ。

 マークマンは耐えた結果、真横にピタッと張り付いており、そう簡単には抜け無さそう。

 ディフェンスの狙いとしては、ピタッとマークマンが張り付いたまま、カバーの選手で挟む事である。



「あぁこれはディフェンスの方が上手かったなぁ、このまま挟み込んでスティール。そこから速攻で、もう1点を取って1Qは終わるな」



 入江はディフェンスが誘い込んだんだと賞賛した。

 このままでは挟み込まれボールを奪われ、そこから速攻を出して1Qが終わる。

 これが最悪なシナリオ。

 累は絶体絶命である。


 そんな事を言っていると、やはり3線のカバーが向かって走って来た。

 あぁもう終わる。

 見ている選手たちの脳裏に最悪なシナリオが再生され、実際に起きると信じて疑わない。

 だが累だけは違った。

 自分のマークマンが、3線のカバーが来た事で少し安心して気を緩めてしまった。

 マークマンと3線の間にスペースが生まれる。

 累は見逃さなかった。

 スペースに向かってギャロップステップを踏んだ。



「なっ!?」


「嘘だろ!?」



 完全なフリーになった累は、ペイントエリア内でフワッとソフトタッチでシュートを放つ。

 綺麗にシュパッと音が鳴り、それと同時にビビビーッと1Q終了のブザーが鳴った。

 選手たちは各自のベンチへと下がっていく。

 27対21で、そこまで点数差は付かなかった。

 これは累と千隼が、何とか良い勝負に見せているのだ。



「ふぅ……楽しいね!」


「楽しくねぇよ! 点数差以上に実力が開いてるんだ……2軍で、こんなに強いのかよ」


「だからこそ、楽しく無い?」


「たくっ! お前はお気楽で良いな」



 負けていながらもバスケを楽しんでいる累に、点数差以上の実力差に心が折れかけている他の選手。

 累たちが次に出れるのは3Q目。

 2Q目は残りの出ていない5人の選手が出る。

 出たいと思っていたが、こればっかりは仕方が無いと累はベンチに座る。

 だが出た過ぎて貧乏揺りをし始めた。

 これには千隼が「うるせぇ!」と累の頭を叩く。



「ねぇ安藤先輩って凄かったね」


「当たり前だろ。今は2軍にいるけど、元々はバリバリの1軍スタメンの選手だからな」


「やっぱりレッドスターズは凄いね!」


「はぁ……お前が呑気そうで羨ましいわ」



 殴られた頭を「いててて」という感じで摩りながら、安藤が凄かったという話をする。

 そりゃあ安藤は1軍でバリバリスタメンを張っているようなスター選手だ。

 そんな選手とやり合おうとするのは無理がある。

 まだ進学先は決まっていないが、ほぼ確実に強豪校への進学が期待されている。

 嫌な雰囲気が漂う中、2Q目がスタートした。

 このQには累のようなスコアラーも、千隼のように試合の流れを作る選手も居なかった。

 ギリギリで接戦を繰り広げていた試合が、2Q目で総崩れしてしまうのである。

 点数が63対32と大差が開いてしまった。

 そして問題の3Q目を迎える。

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