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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
23/26

023:因縁の相手

 ブルドックスの試合を前日に控え、大輔は選手たちに休むように言った。しかし蓮は自宅のトレーニング場にあるゴールで、シューティングを行なっている。それなりの時間やっているのだろう汗だくだ。



「おい、蓮っ! 明日に疲れを残すなよ。オーバーワークは……」


「るせぇな、わーってるよ!」



 オーバーワークするのはダメだと大輔が注意しようとするが、蓮は分かっていると言って一蹴する。

 いよいよ明日はブルドックスとの一戦だ。はなから敗者復活戦なんて考えてはいない。このまま一気に全日本選手権まで決めてやると考えている。

 しかしあの攻撃力は、さすがの樹里とは言えども手越を無失点に抑えるのは難しい。どうにか樹里以外のところで点数を取らなければいけないと考える。

 蓮のマークマンはポジション的に岩崎だが、岩崎は雑魚だと思っているので眼中に無い。問題なの超期待(ライジングスター)である倉田 篤だ。そこを止めなければ難しくなって来る。もちろん啓太が負けるとは思っていないが、蓮もカバーしようと考えている。



「岩崎をボコボコにして、ブルドックスに勝利する。そして俺が超期待(ライジングスター)になり変わる!」



 岩崎をボコボコにして自分が、超期待(ライジングスター)になり変わってやると心に決める。

 そして樹里も早めに湯船に浸かりながら、明日の試合について考えていた。



「明日か。アレから1年が経ったのか……なんとかまた、ここまで来ましたよ、茶谷先輩」



 自分を変えるだけの試合が終わってから、もう1年も経ったのかと浸っていた。

 そして復活した要因とも言える茶谷の事を考える。

 樹里と茶谷が出会ったのは、樹里が中学1年生で茶谷が中学3年生の時だ。



「おう、勝場っ! お前、女は好きか?」


「え?」


「だから女は好きかって聞いてんだよ!」


「ま まぁそれなりには……」



 初対面の樹里に、茶谷は女が好きかと聞いてきた。いきなりの質問に答えられず、困惑していると「だから」と同じ質問をするのである。答えないわけにはいかないので、それなりという何とも言えない答え方をした。

 この時には既にレッドスターズの絶対的エースだった。

 1on1で押していくハンドラータイプで、レッドスターズを全国ベスト4に導いた大エースだ。

 樹里は「この人みたいになりたい!」と思った。この日から「俺も! 俺も!」という気持ちで試合に臨み、あの試合を迎える事になったのである。



「俺のようになりたい……だと? テメェは超絶なアホなんじゃねぇのか?」


「え?」


「全国ベスト4程度で負けるような選手なりてぇのか? まるで見えてなかったようだな……俺が、チームで何を背負っていたのかが」



 茶谷は自分の全てを投げ打ってエースとして、レッドスターズで戦っていたのだ。それがまだこの時の樹里には分かっていなかった。

 しかし今ならば分かる。

 樹里は手越にも申し訳ないと思っている。樹里はリベンジなんて微塵も考えていない。樹里とってはブルドックスですら単なる通過点に過ぎないのだ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 6月20日、緑が丘スポーツ公園体育館。

 レッドスターズとブルドックスの両チームのアップは、既に始まっている。

 球場には、この試合を見逃すわけにはいかないというファンやスカウトたちがやって来ていた。



「千葉の名門ブルドックスと、山梨の絶対王者レッドスターズ。激戦区の関東大会で、長年に渡りライバル関係を築いて来た両チーム。2年前はレッドスターズが勝って、去年はブルドックスが勝った。今年はどちらが勝つか」



 もちろんレッドスターズとも関係の深い京洋大茅野のスカウトマン・入江も試合を見に来ている。

 そして長年に渡ってレッドスターズとブルドックスの試合を見届けているので、今回はどちらが勝つのかとファンとしてもワクワクしながら試合を待つ。


 最後のシューティング中に、ボールが観客席の方に転がっていったので蓮が取りに行く。

 すると観客の1人がボールを先に拾った。観客に取って貰ったので蓮はお礼を言おうとするが、拾った観客の顔を見て「お前は!」と声に出す。

 ボールを拾ったのはオレンジスピリッツの宮星だった。



「柔らかいシュートタッチに、相手の先を読むディフェンス能力……何より全てにおいて能力値が高い。やはり君の才能は光り輝いているね。まさしく領地を収める王様のようだ……しかし!」


「こ この気持ちの悪い語り口調は!?」


「才能が天に届く……皇帝には敵わない」


「宮星!?」



 愛媛県に本拠地を置くオレンジスピリッツの宮星が、どうしてこんなところにいるのかと驚く。

 そして何よりもナルシストの上位互換のような語り口調に、蓮は嫌気が差していた。

 観客席はザワザワする。

 なにせU12で蓮と同じチームでありながら、チーム内でトップの得点数を誇っている選手だからだ。



「君と岩崎の試合は見逃せないと思って、わざわざ愛媛県から来たんだよ? まぁ他にも用事があったから来たわけだけどね」


「うるせぇな! そんな事よりボールを早く返せよ」



 宮星と話している暇は無いと蓮はボールを返せと迫る。

 まだ宮星は話していて珍しく蓮がドギマギしていた。するとそこにニコニコに笑っている樹里がやって来た。



「何をしているんだ? さっさとシューティングに戻れ、こんなところで油を売って、試合でシュートを外したら洒落にもならないぞ?」


「は はい……」



 樹里は蓮に、さっさとシューティングに戻るよう言う。

 薄ら笑いを浮かべていた宮星が真顔に戻る。それは樹里のオーラと言うべきか、闘志と言うべきか。とにかく樹里を近くで感じたからである。



(彼はまだ進学先が決まっていない……超期待(ライジングスター)と言えない? そんな選手だとは思えないんだけどね)



 宮星は樹里の事を見て、どこの名門や強豪校に進学が決まっていない一般選手には見えない。何ならオーラや雰囲気、アップ内容を見る限り超期待(ライジングスター)に匹敵するだけのものがあると思った。


 そしていよいよ試合が始まる。



【レッドスターズ】

PG:伊門 蓮 (1年生、164cm)

SG:安藤 誠 (3年生、180cm)

SF:勝場 樹里(3年生、186cm)

PF:舞華 啓太(3年生、185cm)

C :木村 正彦(2年生、181cm)


【ブルドックス】

PG:岩崎 芳樹 (1年生、158cm)

SG:最上 琥太郎(1年生、159cm)

SF:手越 勝利 (3年生、187cm)

PF:倉田 篤  (2年生、180cm)

C :清水 裕太(しみず ゆうた)(3年生、183cm)



 両チームのCが、センターサークルの中に入る。

 全選手の準備が整っているのを見た審判が、センターサークルに入る。そのままCの顔を見てからボールを上に上げティップオフした。

 木村と清水が同時にジャンプする。先にボールに触れたのは清水の方で、PGの岩崎がいる後ろに弾いた。試合はブルドックスのボールからスタート。



「さぁ行きましょうか!」



 岩崎が左腕を上げ、人差し指をピーンッと1本立てる。

 そのままマークマンである蓮が待つフロントコートへと岩崎はボールを運ぶ。

 左サイドの45度にいる手越がボールを要求。やっぱり最初は手越からだと岩崎はパスを出した。

 手越の前には、しっかりとニコニコの樹里がいる。

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