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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
21/23

021:超期待

 ブルドックスの岩崎は、アップの最後にリングに向かって走り出した手越に向かってアリウープパスを出す。手越は空中でボールを掴むと、激しくリングに叩きつけた。

 この光景に相手のチームは青ざめている。



「ほ 本当に中学生かよ……」


「あのパス出した奴、まだ中1だってよ」



 相手選手だけではなく観客たちも、あんな事ができるのかとザワザワし出す。至極当然と言えば当然だ。

 アップを見ていた大輔が、岩崎について口を開く。



「俺が見た中学1年生のPGの中で、最もパスが上手いのは岩崎だな! ジャパンの時に何度か、蓮よりもアシスト数を上回ってたな」


「そうか? 全く覚えてねぇ」



 大輔は岩崎を中学1年生の中で、最もパスが上手いと褒めるのである。パスだけなら蓮を上回っているとすらも誉めており、それを蓮は忘れたと言う。

 しかし飲もうとしていたペットボトルを、ぎゅっと握って中の水が溢れ出した。忘れたと言っていたが、これは明らかに覚えて根に持っていると全員に突っ込まれた。


 アップを終えた選手たちはは、ベンチへと戻っていく。

 しかし1人だけコートに残って、レッドスターズの方をジッと見て来ている。体格や雰囲気からして累たちと同じ中学1年生だろう。茶髪でチャラそうに見える。

 誰を見ているんだろうと累は、少年の視線を辿ると倉糸の方を見ている事に気がついた。

 どうして倉糸を見ているのだろうと疑問を持つ。



「やっと会えたね、凛っ! 97日と1時間47分ぶり! 毎日電話しても出てくれないし、LINEも既読にならないから心配してたんだよ……心配だから家まで様子を見に行こうとか思ったけど、さすがにそれはストーカーに近いと言うか……」



 どうやら倉糸と面識あるらしいが、少年の言っている事は全ての人間に「あっコイツ、ヤバい奴だ」と思わせる。

 関わられたく無いと倉糸は近くにいた累の後ろに隠れ、少年からの視線から自分を守ろうとした。いきなりだったので累は「え? ちょ!?」と驚く。



「ごめん、私アイツに苦手なんだよ……」


「え? でも」



 少年はブルドックスのSG・最上 琥太郎(もがみ こたろう)。最上はピタッと累と倉糸が、くっ付いているので「誰だよ! 離れろよ!」と叫んでいる。

 倉糸と最上が出会ったのは、2年前のU12レッドスターズとU12ブルドックスで合同練習をやった時だ。その時に惚れてしまったのだ。

 そこからずっと追いかけており、とても慕っているので倉糸が累と触れ合っているのが許せない。ワナワナしていると手越に担がれベンチへと戻っていく。

 

 手越はチラッと樹里の方を見る。

 樹里と手越が初めて戦ったのは、今から5年前。

 そこから良きライバルとして何度も対戦し、ずっと今日まで切磋琢磨して来た。樹里は力は五分だと考えていたのだが、手越は考えが違った。自分の方がヤられてばかり。

 それが去年の試合で大きく変わった。肉体的にも技術的にも大きく進化した手越が、樹里に圧勝した。

 しかし手越としてはヤられた分が多すぎるから、あんなもので勝ったとは思っていないと思っているのだ。互いに互いを尊敬している証拠である。

 それでも樹里は負けたままでは無いと考えており、何倍にして返してやると心に誓っている。


 ブルドックスの監督である大野 健一(おおの けんいち)が選手たちに集合をかける。大野はメガネを掛けて立派な顎鬚を蓄えている渋いアラフォー。



「お前たち、最っ高に目立ってたぞ! プレーヤーは目立ってこそだ、スカウトにも観客にも自分の存在価値を圧倒的に誇示しろ! どんな天才だって、見て貰わないと無意味なんだからな!」


『はい!!!!』


「自らのバスケ人生の為……目立って勝ってこそ、我らブルドックスのバスケだ!」


『はい!!!!』



 大野の考えはプレーヤーが、自分から目立とうとしなければ意味が無い。プレーヤーは観客やスカウトに見て貰えなければ無価値であると考えているのが大野監督。

 目立って勝つを信条にしているのがブルドックスだ。

 いよいよ試合が始まると、レッドスターズの選手たちは楽しみだと笑すら溢している。


 試合が始まってみたら阿鼻叫喚の地獄絵図だ。

 3Qが終わった時点で11対120と大差が開く。相手の監督は頭を抱えて「もう……許してくれ」と見ていられずに項垂れてしまう。



「残念ながら手加減なんて、スポーツをやる上で最も愚かであると教えているからね。もっと目立て……手越!」



 手越は左サイドの0度でボールを貰うと、ゆっくりとピボットを踏み始める。マークマンはゴクンッと唾を飲み込んでから瞬きをした。目を開けた瞬間、目の前に手越の姿は無かったのである。

 既にリングに向かってドライブしていた。

 3線のカバーがやって来る。しかし全く手越は気にする事なく踏み込んで、カバーの選手を吹き飛ばしながらダンクシュートをかました。ドーンッと爆発したかのような音が体育館中に鳴り響く。



(この音だ! ずば抜けたスピードとパワーがある証拠なんだ。高校のスカウトが、この音を体育館の外から聞いて手越の特待を決めたんだ)



 大野は手越のダンクシュートを見て、このパワーとスピードが破壊力をもたらしていると確信している。そしてその音を体育館の外にまで響いており、その音を聞いた高校のスカウトマンが手越の獲得を即決した。

 

 そのスカウトマンとは日本一の高校、福岡県の〈博多大学附属舞鶴〉のスカウトマンだ。

 去年のウィンターカップを優勝し3連覇を果たした博多大舞鶴。ここ10年でウィンターカップを4回、インターハイを2回、国体を1回、U18毎日食品トップリーグを1回の優勝を誇る今現在の日本一だ。



(15年のコーチ生活で、手越のオフェンス能力は最も目立っている。日本一の高校に進学するのは必然だ!)



 ブルドックスの試合を真剣に見ているレッドスターズの選手たちだったが、試合に出ていないメンバーたちはブルドックスの強さに動揺が隠せない。

 手越は樹里が必ず止めてくれると信じているので、他の選手たちを見てみる。ブルドックスの試合に出ているメンバーの中で、PFの選手を見て少し安堵する。



「さすがに上手いな」


「でも、このレベルなら狙う隙はあるんじゃないか?」


「このバカが、アイツはスタメンじゃねぇよ。控えの2番手ってところだ。本当のスタメンのPFは……あぁ今から出て来る選手がスタメンだ」



 このレベルなら狙って倒せるかもしれないと思ったが、その選手はスタメンじゃないと安藤は伝える。本当のスタメンは、今から出て来るブルドックスの2年生・倉田 篤(くらた あつし)である。

 PFとは思えないクロスオーバーで、ペイントエリア内にドライブを仕掛けた。見事なドライブで、最も簡単に選手を抜いてレイアップを決める。



「倉田 篤……2年生ながら既に、宮城大学附属明王への進学が、ほぼ内定している逸材だ」



 樹里は倉田が2年生ながら明王への内定が、ほぼ決まっていると説明した。まさか樹里が行きたいところに、2年生で決まっているなんて累からしたら驚く。

 千隼は樹里に質問する。



「え!? 2年の夏に、進学先が決まるって事あるんですか!?」


「稀にな……超期待(ライジングスター)とスカウトマンから判断されれば……な」



 普通ならば2年生の頃に決まる事は稀で、本当に超期待されている選手だけしかあり得ない。

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