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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
18/25

018:ライバルたち

 去年の関東大会4回戦。

 2年生ながらエースとして試合に出場した樹里は、手越を擁するブルドックスと対戦した。その結果は散々なものであり、樹里は前回の試合まで2桁得点は当たり前の選手だったが、この試合は手越に手も足も出なかった。

 オフェンスでは完全に手越に止められ、ディフェンスでも圧倒的な手越のパフォーマンスに止める事ができない。

 試合は97対81の敗戦でブルドックスが勝利し、その勢いのまま関東大会を準優勝を果たす。



「レッドスターズは、その後 敗者復活戦で何とか全国大会に駒を進めたんでしたね。へししし!」



 岩崎が言うように、4回戦で敗退したレッドスターズは敗者復活トーナメントに回る。そのまま何とかトーナメントを突破し全国出場を決めた。

 自分たちの事を煽っているのかと、岩崎の言い方から煽りのようなものを感じる。気味の悪い笑い方も、安藤たちの怒りを増幅させるのである。

 すると蓮が「思い出したぜ、テメェの事」と言う。



「さっきまでのスマした顔は、俺の記憶になかったら忘れてたぜ。ジャパンでのテメェの表情は……その気味の悪い笑い方だったぜ、岩崎っ!」


「思い出してくれて嬉しいぜ……伊門っ!」



 さっきまでの猫を被った表情は、蓮の記憶になかった。しかし今の不気味に笑っている顔には見覚えがあった。

 ようやく思い出してくれたのかという感じで、また岩崎は「へししし!」と笑う。

 ジッと蓮は、岩崎と眼を飛ばしあっている。

 もう良いと手越が岩崎の肩にポンッと手を置く。気味の悪い表情を止めた岩崎は「あっ、もう行きますか?」と手越が帰りたがっているのを察した。



「今日のところは、とりあえずおめでとうございますとだけ言っておきましょうか」


「あぁそれはどうも」


「お互い順調に勝ち進めれば、今回も4回戦で当たる事になりますね」



 普通に立ち去るのも良いが、ただ喧嘩を売っただけでは心証が悪い。だから勝った事を、今日のところはという言葉を付けて祝福の言葉を送る。

 そして今年も順当に勝ち上がったならば、レッドスターズとブルドックスは4回戦で当たる。



「その時は、またウチが勝たせて貰う……ですよね、手越さん!」



 今年も自分たちが勝つと言いたい表情を浮かべ、岩崎が代わりにレッドスターズに言うのである。

 去年の悔しさも合わせ樹里は「昨年のようには……」というところまで言いかけ、そこから先の「いかねーよ!」っていうのは割って入った蓮が言う。



「今年のレッドスターズには、俺が居るからな!」


「そんなこと言うなら、今年のブルドックスには僕が居るんだぜ?」



 互いに眼を飛ばし合ってから、手越たちは「戦うのが楽しみだ」と言って立ち去って行った。

 累は樹里と手越、蓮と岩崎、レッドスターズとブルドックス。色々と強い人間たちの間で、激しいやりとりがあるんだと固唾を飲むのである。


 レッドスターズには接触しなかったが、今日の試合を見ていた大物がいた。

 名前は宮星 礼央(みやほし れお)。所属はオレンジスピリッツの1年生。このオレンジスピリッツは前回の関東大会優勝チームである。

 宮星と共に、オレンジスピリッツのキャプテン・馬越 大地(うまごえ だいち)も偵察に来ていた。



「宮星、お前の感想はどうだ?」


「そうですね……あの1年生だけが目立っちゃいましたけど、やっぱり伊門 蓮ですね。彼だけなんですよ」


「彼だけ?」


「彼だけは放ったシュート、全てを沈めています。彼の才能は素晴らしいものがあります、頭の上にバスケットの王冠が見えました」



 圧勝したとは言えども、安藤や啓太もシュートを放って何本かは外している。

 しかし蓮だけは違った。15得点を取っていながら、放ってシュートを全て沈めている。これを宮星は素晴らしい才能であると褒め称えた。



「でもね、馬越さん。王様は王様でも、彼は小国を治める人間で、この僕は……大国を治める皇帝なんですよ、王様は皇帝には敵わない」


「宮星……何を言っているんだ? どういう意味?」


「じゃあもう1回言いますね。彼はただの王様で」


「いや、わざわざ言わなくて良いよ」



 彼らもまたレッドスターズとの対戦を楽しみにしていると帰路の途中で話している。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 試合の翌日はオフ。2日後から練習が行なわれる。

 前の試合でダメだったところを再確認しながら練習を行なうのである。累はベンチメンバーに選ばれているのでBチームからAチームに昇格した。

 そんな中で累は、次第にディフェンス面でのカバーの立ち回りなどが上手くなって来ている。



「少しづつだが、上手くなって来てるな! この年代の吸収能力は目を見張るものがある!」


「えぇ、ですが……スイッチしたり、複雑なポジショニングになると対応できないでしょうね。オフェンスでも合わせの動きやパスが、まだまだ及第点にも届いていません。1on1能力以外は全て弱点ですから……1つずつ消していくしかありませんね」


「気にしなくていーんだよ、そんな細かいこと! ウチの方針はスケール大きく面白くだ! 俺たちの都合で成長を急がせちゃあ潰れかねないからな!」


「まぁそうなんですけど……」



 コーチ陣は累の弱点ばかりが気になり、監督である大輔が可能性を楽しみに見ている。

 しかしコーチ陣が言うように弱点が多すぎるのは、どうにか少しづつ消していく必要があるはずだ。


 今日の練習は半面を男子が、半面を女子が使っている。

 すると女子の方が休憩中に、この前に知り合った倉糸がネットで仕切られているところまで近寄る。そして腕を組みながら練習を眺めている蓮に声をかけた。



「なぁ(アイツ)って上手いのか、下手なのか、分からない選手だよな?」


「まだまだ上手くねぇよ、こんなんで満足してるんなら弱小校にしか行けねぇよ」



 この間の試合を倉糸は会場で見ていた。なので初めて累のプレーを見て困惑するのだ。上手いのか、それとも下手なのかの判定ができなかったから。

 しかし蓮は上手くないと断言する。今の状態で満足してるくらいなら、高校では弱いところにしか行けないと断言したのである。

 それでも蓮の目には累の可能性は感じている。


 そして全体練習が終わったら、累は樹里に合流して個人トレーニングを行なう。

 テニスボールを使ってのドリブル練習やアリーナの外に出てのランニングメニューなどをこなす。最初の頃は樹里に着いていけ無かった累だったが、ここ最近は必死になってもがきながら着いていけるようになった。



(大した奴だな! 器用でも、特別に物覚えが良い方でも無いわけだが……着実に1歩1歩、成長しているのが目に見えて分かる! 俺とは真逆なタイプだな)



 樹里は累の直向きに練習し、着実にゆっくりと成長している姿に大した奴だと認めている。

 ランニングを終えた累は、休憩所で両膝を着いて息を切らせながら座り込む。



「ほら、飲みな」


「あ ありがとうございます……あの樹里さん」


「ん? どうした?」


「あっ、いや……やっぱり良いです」



 飲み物を受け取った累は、ゴクゴクッと飲んでから樹里に声をかけた。樹里はペットボトルから口を離し、どうしたのかと聞いたのである。

 しかし言いづらそうにして、何でも無いと止める。

 だが樹里は「なんだよ、気になるじゃ無いか」と言ってから、気にする事なく言えと促す。ならばと累は「それじゃあ」と前置きを入れる。

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