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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
12/21

012:やられたらやり返す

 AチームとBチームの選考試合が始まった。

 構図としては面白い構図である。現エースを率いる上級生と、これからの未来を担う下級生。どちらが勝っているのかを決める対決でもある。

 しかしどれだけ今年の1年生が優れていても、レッドスターズの3年生たちは容易に勝たせてはくれない。

 だからこそ勝ち取るに値するのだ。


 まずゲームを進めたのはAチーム。

 PGは2年生の小林。安定したシュートとパス能力はあるものの突出した才能は無い。いわゆるところのロールプレイヤーなのである。

 だが凡庸なPGでもレッドスターズからしたら、調和が取れていると言っても過言では無い。なぜならレッドスターズには圧倒的非凡。エースの樹里がいる。



「さてさて、アレからどれだけ成長したのか。楽しませて貰おうじゃないか」



 樹里のマークマンは累だ。

 選考会の最初のプレーは累と樹里の1on1からスタートする。右45度の3Pラインで、累と樹里は相手を伺うように睨み合っている。

 先に仕掛けたのは累の方からだ。

 普通は腕一本分(ワンアーム)の距離で、相手と駆け引きするものである。そこを累はピタッと半歩詰めて自由にさせないという意思を示す。

 これに樹里はニヤッと笑って「この!」と言う。ドライブで勝負に出る樹里に対しては、ワンアームより半歩離れて様子を見ながらマークするものだ。そこをピタッとマークするという事は、一歩たりとも引かないという意思表示と取れる行為である。


 だがディフェンス能力が、そこまで高くない累にとっては、かなり一か八かな賭けのような事だ。

 真っ向から受けて立つと言わんばかりに、樹里はピボットを踏み始める。ディフェンスが上手くない累にとって、エースのピボットに着いていくのは難しい。

 それにより累と樹里の間に、ドリブルが出来る隙間が生まれてしまった。上手くは無いが、馬鹿では無いので累も隙間が空いたのに気がつく。急いで距離を埋めようとしたが、もはや後の祭りだった。

 ドリブルを突いて、累を抜き去る。それはそれは完璧に累を抜き去ったのだ。



「やっぱりアンタは、そう来なくちゃな!」


「伊門……さすがは新生(スーパールーキー)だ!」



 累が抜かれると読んでいた蓮が、3線側に大きく寄っていた。それにより樹里を、ペイントエリア内に侵入する直前で迎え撃つ事ができたのである。

 さすがはスーパールーキーだと、樹里は苦笑いをしてから足を止めようとした。

 しかし樹里は「俺以外もイケてるぞ」と口角を上げ、蓮のマークマンである安藤にキックアウトのパスを出す。ヒュッと綺麗な弾道で、安藤の胸にスポッと収まる。



「樹里、ナイスパスっ! 開幕パンチは俺が頂く!」


「そうは行きませんよ、安藤さん!」


「牛沢か!? この野郎……」



 良いパスが来たので、安藤はそのままシュートモーションに入ろうとした。

 しかし蓮が動いた時点で、トップにいる小林のマークに付いていた千隼がチェンジングでカバーしに来た。先手で動いていたのが大きかったのだろう。

 こうなったらシュートは打てない。安藤はチッと舌打ちをしてから顎に上げたボールを、丹田にまでボールを下げて仕切り直そうとする。


 安藤は後ろにドリブルを突きながら間合いを作る。

 後ろに下がったのを見た千隼は「あっ」と思って、シュートを打てる間合いを作らせないように距離を詰めた。

 しかし安藤は、この千隼の動きを狙っていた。千隼の全身が前のめりになったところを見逃さず、一気にドライブを仕掛けたのである。

 Cの加藤が咄嗟にカバーに入った。タイミングも間合いも完璧。普通は引き下がるか、また同じようにキックアウトをするかの2択だろう。

 だが安藤はランニングステップの1歩目を踏んだ。それはそれは躊躇する事なく踏み込んでいる。



「な 舐めやがって! 叩き落としてやる!」



 加藤は自分を下に見られていると思って、ブロックして叩き落としてやるとジャンプした。

 すると安藤は2歩目を踏み込んだ瞬間、空中で1回転して加藤を避けてレイアップを決めた。このシュートにセレクション時に居た人間たちは「あっ!」と声を出す。なぜならば累がやったプレーを真似したからだ。

 安藤は累を見て「ふっ」と鼻で笑ってからディフェンスに戻っていく。あのプレーを相当、イラついていたんだという事を周りの選手たちは思った。

 やり返された累は「さすがは安藤さん!」という感じで楽しくなりそうな予感を感じている。



「誠、アレはやろうと思ってたのか?」


「あぁ? 別に咄嗟にやっただけだわ、あんなガキンチョに舐めたプレーをされたまま、やり返さないのは俺の主義に合わないからな。あんなんは俺クラスだったら、当たり前にできるんだよ」


「さすがは誠だ、この調子で頼むぞ」


「テメェこそ、あそこは無理にでもシュートに行けたんじゃねぇのかよ! 蓮がカバーに入ったところでらテメェのスキルなら決められたはずだ!」


「そこまで言ってくれるのは嬉しいじゃ無いか。まぁまぁ先は長いんだから気長に行こうか」



 樹里と安藤は自陣に戻りながら、今のプレーについて話をするのである。側から見たら樹里に対して、かなりのライバル視をしているように見えるが。

 とにかく樹里は安藤のプレーを褒めた上で、まだまだ試合は始まったばかりだから、ゆっくりと行こうじゃないかと不敵な笑みを浮かべながら守備につく。


 ゴールに吸い込まれたボールを蓮が拾い上げ、エンドラインの外に出ると、PGである千隼にパスを出した。

 ゆっくりと千隼はドリブルを始めて、蓮は千隼を走って追い抜いて、いち早くフロントコートに入る。

 

 千隼がフロントコートに入った瞬間、左45度の3Pラインにいた蓮が動き出す。千隼に向かって走り出し、マークマンである小林の右側にスクリーンをかけた。

 小林はチラッと横目で、スクリーナーを確認する。

 そして視線を千隼に戻すと、既にスクリーンとは逆の方向にドライブを始めていた。これはあえてスクリーナーを囮に使ったフェイク。小林は「くそ!」とスライドステップで着いて行こうとするが、千隼が思ったよりもスピードがあって、ランニングステップに切り替えた。

 ドライブで抜いてきたのを見ていた左45度の樹里が、早めにカバーに出て来た。タイミングとしても。カバーの角度としても絶妙と言える。完全に千隼の間合いを潰し、マークマンの小林との間にもスペースは無い。

 すると読まれるというのを計算していたのか。千隼は迷う事なく左45度の累にキックアウトした。これに累は上手くミートして「千隼、ナイスパス!」と呟く。

 

 しかし同じサイドの0度にいる岡田を、マークしていた啓太が「打たせないぞぉ!」とスイッチしに来ていた。しかも0度にいる岡田に、パスを出させないよう上手く角度をつけていた。これではシュートを打てない。

 だが比較的に累は落ち着いている。

 チラッと岡田を見てから、啓太の上を通してパスをしようという動きをした。察しの早い啓太は、直ぐに姿勢を岡田の方に向けた。

 岡田にパスを出そうというのはフェイクだった。直ぐにボールを顎のところに持っていく。そのままシュートを打とうとした時、カバーに出ていた樹里が戻り始めていた。

 それでも累は3Pシュートを選択した。

 樹里がチェックに入りながらも、累の手からボールは離れリングの方に向かっていった。ボールはリングの中央にスパッという音と共に吸い込まれた。

 Bチームは点が取られてから直ぐにやり返す。

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