010:Aチームの力
春季リーグのデビュー戦で、累は10分の出場時間を与えて貰った。
開幕から最高の3Pを決める。
そのままの勢いで得点を決めていき最終的に、12PTSまで記録を伸ばした。
他の記録としても4REB、1AST、2BLK。
相手が弱いというのもあるが、それでもデビュー戦の結果としては最高と言っても良いだろう。
チームも39対112と大勝。
累にとっては最高のアピールである。
「よし、引き上げるぞ! 引き上げたら帰る者は帰って良いが、これからAチームの試合があるから見に行く者はマイクロバスに乗ってくれ!」
ベンチの片付けをしたら、今日の試合は終わりなので帰る者は帰って良いと言う。
これから別の会場で、Aチームの試合がある。
もしも見たい人が居るなら、レッドスターズ専用のマイクロバスで会場まで送ると伝えた。
1人も居なくても大貫コーチは、そちらに合流しなくてはいけないので手間は変わらない。
すると誰よりも早くピッと累が手を挙げた。
しかも満面の笑みで。
少し遅れて「自分も!」と千隼が手を挙げる。
「よし、行きたいやつがいるな? それなら準備をして、10分後に出発するからなぁ」
累と千隼は急いで着替えてからバックを持って、大貫コーチが運転するマイクロバスに乗り込む。
まだ出発しないので、累たちは今日の試合の話をする。
「お前って、とことん1on1は上手いよな」
「そ そうかな! 千隼に言われたら嬉しいな……」
「勘違いするなよ? オフェンスの全てが凄いってわけじゃ無いぞ、アシストも1って少な過ぎるわ。あとディフェンスも2ブロックしてるけど、一か八かのブロックに飛びすぎなんだよ!」
千隼は今回の試合を見て、やはり累の1on1スキルは1年生とは思えないと言った。
人に褒められるなんて慣れていない累は照れる。
照れてクネクネしている累に、千隼はイラッとしてから褒めた事を後悔する。
そしてさらにダメなところを徹底的に指摘した。
自分でも理解している累は「うっ!?」と胸を突き刺されたような痛いところを突かれた感じだ。
2人の間に、なんとも言えない雰囲気が流れる。
この空気感を読んだんじゃないかと思うタイミングで、マイクロバスが会場に向かって出発。
会場に到着すると中学生のリーグ戦に関わらず、それなりに観客が入っている。
累たちはAチームに同行している応援団たちと合流。
コート内でのアップが始まっており、やはり普段通りAチームのメンバーのオーラは只者じゃない。
山梨県内の1部リーグとは言えども、レッドスターズたちからしたら1強と言っても過言では無いのだ。
累もオーラの違いに、やっぱりレッドスターズに入って良かったと思うのである。
そしていよいよ試合が始まる。
【RED STARS】
PG:伊門 蓮(1年生159cm)
SG:勝場 樹里(3年生186cm)
SF:安藤 誠(3年生179cm)
PF:舞華 啓太(3年生185cm)
C :木下 正彦(2年生181cm)
【FIRST STEP】
PG:森 友彦(3年生166cm)
SG:丸岩 淳(2年生168cm)
SF:加藤 英樹(2年生172cm)
PF:井上 勇気(3年生173cm)
C :柴田 健二(3年生177cm)
1年生ながら蓮がスタメンに名を連ねている。
しかも同学年の中ではSFだが、上級生たちの中ではPGを任せられているみたいだ。
累は蓮から将来的にPGをやりたいというのを聞いていたので、そういう事なのだろうと察する。
だが隣にいる千隼は「チッ」と舌打ちをした。
舌打ち音が聞こえた累は、パッと反射的に千隼の方を見ると蓮の事を睨んでいた。
「ど どうかしたの?」
「あん? 普段はSFですよ〜って顔をしておきながら、試合では完璧にPGをやるって思ったらイラッとした。これだから天才は嫌いなんだよ」
「そ そんな事ないんじゃない? 蓮くんは、蓮くんなりに悩んでるみたいだし」
「そこだよ! 天才の分際で悩んで努力しやがって、天才じゃない俺はアイツの100倍努力しなきゃいけないんだからよ。たまったもんじゃねぇよ」
天才が努力したら、天才じゃない自分たちは苦労するんだと千隼は溜息を吐く。
ちゃんと蓮の実力を認めた上でのイジリだ。
累は何とも言えない表情をしている。
そんな2人を尻目にティップオフした。
ボールは2年の木下が、蓮の方に弾いてレッドスターズのボールからスタートする。
累は蓮が、どんなプレイメイキングするのか楽しみだ。
ゆっくりとドリブルしながらフロントコートに入る。
キョロキョロと小まめに首を振りながら、情報を確認してメイキングを考える。
そしてやっぱりまずはエースからだと決めた。
蓮は「樹里さん!」と左45度の3Pラインにいる樹里の名前を叫ぶのである。
樹里はIカットしてボールを保持。
その姿に累は前のめりになって見入る。
ボールを持っている樹里からも、累が前のめりになっているのが視界に入っていた。
ニコニコしながら「そんなに見られたらやりづらいじゃないか」と思いながらピボットを踏む。
そして左足を軸足に、右足をマークマンの右足の横に踏み込んでドライブを開始した。
一瞬にしてマークマンを置き去りにした。
そのままペイントエリア内に侵入する。
「いきなり点数取られてたまるか!」
「おっ! 思ったよりも反応が早い……でも、まだまだ小さいな」
樹里がペイントエリア内に侵入すると、そこには樹里を警戒していた3線の選手がカバーに来ていた。
しかし樹里はカバーに来ているのを気にしない。
そのままランニングステップの1歩目を踏んだ。
負けてたまるかという気持ちが強いカバー選手は、シュートを叩き落としてやるとジャンプする。
(お おい、ちょっと待てよ……滞空時間が長く無いか)
ブロックしようと、後にジャンプしたはずだ。
しかし先に飛んだはずの樹里が、後に飛んだカバー選手よりも長く空中にいる。
樹里はリングに向かってボールを叩きつけた。
ダンクによってリングが揺れてガシャーンッという音が体育館に響き渡る。
そして観客たちから「うぉおおおお!!!!」と地響きするくらいの歓声が上がった。
「ま マジかよ!? アレで本当に中学生か!?」
「後に飛んだ選手の方が、先に地面に降りてたぞ! 足のバネ、どうなってんだよ!」
観客たちは本当に中学生なのかと、困惑と共に凄いモノを見たという興奮でザワザワしている。
その姿に安藤は舌打ちし「ただのダンクだろうが」は悪態を吐き、啓太は「さすがは樹里だ!」と笑う。
なんとも言えない雰囲気の3年生たちに蓮は「切り替えましょう!」と手を叩いて声をかけた。
この最初のプレーは大きかった。
向こうのチームは、かなり動揺があり普段はしないようなパスミスやターンオーバーを重ねる。
隙を突くようにレッドスターズが攻め立てた。
パワータイプの啓太が、ゴリッゴリのセンタープレーでマークマンを押し込んでのロールが定番パターンだが、意外な事にミドルや3Pも器用に決めてくる。
安藤はセレクション戦で見せたように、安定した3Pとドライブからのシュートで得点を量産。
蓮も3年生たちに遅れは取らず、自身の得点とアシストで存在感をアピールした。
終わってみたら46対123と圧勝で終わった。




