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305  作者: 灰谷 An
第1章・1年次、全日本Jr.クラブ選手権 編
10/22

010:Aチームの力

 春季リーグのデビュー戦で、累は10分の出場時間を与えて貰った。

 開幕から最高の3Pを決める。

 そのままの勢いで得点を決めていき最終的に、12PTSまで記録を伸ばした。

 他の記録としても4REB、1AST、2BLK。

 相手が弱いというのもあるが、それでもデビュー戦の結果としては最高と言っても良いだろう。

 チームも39対112と大勝。

 累にとっては最高のアピールである。



「よし、引き上げるぞ! 引き上げたら帰る者は帰って良いが、これからAチームの試合があるから見に行く者はマイクロバスに乗ってくれ!」



 ベンチの片付けをしたら、今日の試合は終わりなので帰る者は帰って良いと言う。

 これから別の会場で、Aチームの試合がある。

 もしも見たい人が居るなら、レッドスターズ専用のマイクロバスで会場まで送ると伝えた。

 1人も居なくても大貫コーチは、そちらに合流しなくてはいけないので手間は変わらない。

 すると誰よりも早くピッと累が手を挙げた。

 しかも満面の笑みで。

 少し遅れて「自分も!」と千隼が手を挙げる。



「よし、行きたいやつがいるな? それなら準備をして、10分後に出発するからなぁ」



 累と千隼は急いで着替えてからバックを持って、大貫コーチが運転するマイクロバスに乗り込む。

 まだ出発しないので、累たちは今日の試合の話をする。



「お前って、とことん1on1は上手いよな」


「そ そうかな! 千隼に言われたら嬉しいな……」


「勘違いするなよ? オフェンスの全てが凄いってわけじゃ無いぞ、アシストも1って少な過ぎるわ。あとディフェンスも2ブロックしてるけど、一か八かのブロックに飛びすぎなんだよ!」



 千隼は今回の試合を見て、やはり累の1on1スキルは1年生とは思えないと言った。

 人に褒められるなんて慣れていない累は照れる。

 照れてクネクネしている累に、千隼はイラッとしてから褒めた事を後悔する。

 そしてさらにダメなところを徹底的に指摘した。

 自分でも理解している累は「うっ!?」と胸を突き刺されたような痛いところを突かれた感じだ。

 2人の間に、なんとも言えない雰囲気が流れる。

 この空気感を読んだんじゃないかと思うタイミングで、マイクロバスが会場に向かって出発。


 会場に到着すると中学生のリーグ戦に関わらず、それなりに観客が入っている。

 累たちはAチームに同行している応援団たちと合流。

 コート内でのアップが始まっており、やはり普段通りAチームのメンバーのオーラは只者じゃない。

 山梨県内の1部リーグとは言えども、レッドスターズたちからしたら1強と言っても過言では無いのだ。

 累もオーラの違いに、やっぱりレッドスターズに入って良かったと思うのである。

 そしていよいよ試合が始まる。



【RED STARS】

PG:伊門 蓮(1年生159cm)

SG:勝場 樹里(3年生186cm)

SF:安藤 誠(3年生179cm)

PF:舞華 啓太(3年生185cm)

C :木下 正彦(きのした まさひこ)(2年生181cm)


【FIRST STEP】

PG:森 友彦(3年生166cm)

SG:丸岩 淳(2年生168cm)

SF:加藤 英樹(2年生172cm)

PF:井上 勇気(3年生173cm)

C :柴田 健二(3年生177cm)



 1年生ながら蓮がスタメンに名を連ねている。

 しかも同学年の中ではSFだが、上級生たちの中ではPGを任せられているみたいだ。

 累は蓮から将来的にPGをやりたいというのを聞いていたので、そういう事なのだろうと察する。

 だが隣にいる千隼は「チッ」と舌打ちをした。

 舌打ち音が聞こえた累は、パッと反射的に千隼の方を見ると蓮の事を睨んでいた。



「ど どうかしたの?」


「あん? 普段はSFですよ〜って顔をしておきながら、試合では完璧にPGをやるって思ったらイラッとした。これだから天才は嫌いなんだよ」


「そ そんな事ないんじゃない? 蓮くんは、蓮くんなりに悩んでるみたいだし」


「そこだよ! 天才の分際で悩んで努力しやがって、天才じゃない俺はアイツの100倍努力しなきゃいけないんだからよ。たまったもんじゃねぇよ」



 天才が努力したら、天才じゃない自分たちは苦労するんだと千隼は溜息を吐く。

 ちゃんと蓮の実力を認めた上でのイジリだ。

 累は何とも言えない表情をしている。

 そんな2人を尻目にティップオフした。

 ボールは2年の木下が、蓮の方に弾いてレッドスターズのボールからスタートする。


 累は蓮が、どんなプレイメイキングするのか楽しみだ。

 ゆっくりとドリブルしながらフロントコートに入る。

 キョロキョロと小まめに首を振りながら、情報を確認してメイキングを考える。

 そしてやっぱりまずはエースからだと決めた。

 蓮は「樹里さん!」と左45度の3Pラインにいる樹里の名前を叫ぶのである。

 樹里はIカットしてボールを保持。

 その姿に累は前のめりになって見入る。


 ボールを持っている樹里からも、累が前のめりになっているのが視界に入っていた。

 ニコニコしながら「そんなに見られたらやりづらいじゃないか」と思いながらピボットを踏む。

 そして左足を軸足に、右足をマークマンの右足の横に踏み込んでドライブを開始した。

 一瞬にしてマークマンを置き去りにした。

 そのままペイントエリア内に侵入する。



「いきなり点数取られてたまるか!」


「おっ! 思ったよりも反応が早い……でも、まだまだ小さいな」



 樹里がペイントエリア内に侵入すると、そこには樹里を警戒していた3線の選手がカバーに来ていた。

 しかし樹里はカバーに来ているのを気にしない。

 そのままランニングステップの1歩目を踏んだ。

 負けてたまるかという気持ちが強いカバー選手は、シュートを叩き落としてやるとジャンプする。



(お おい、ちょっと待てよ……滞空時間が長く無いか)



 ブロックしようと、後にジャンプしたはずだ。

 しかし先に飛んだはずの樹里が、後に飛んだカバー選手よりも長く空中にいる。

 樹里はリングに向かってボールを叩きつけた。

 ダンクによってリングが揺れてガシャーンッという音が体育館に響き渡る。

 そして観客たちから「うぉおおおお!!!!」と地響きするくらいの歓声が上がった。



「ま マジかよ!? アレで本当に中学生か!?」


「後に飛んだ選手の方が、先に地面に降りてたぞ! 足のバネ、どうなってんだよ!」



 観客たちは本当に中学生なのかと、困惑と共に凄いモノを見たという興奮でザワザワしている。

 その姿に安藤は舌打ちし「ただのダンクだろうが」は悪態を吐き、啓太は「さすがは樹里だ!」と笑う。

 なんとも言えない雰囲気の3年生たちに蓮は「切り替えましょう!」と手を叩いて声をかけた。


 この最初のプレーは大きかった。

 向こうのチームは、かなり動揺があり普段はしないようなパスミスやターンオーバーを重ねる。

 隙を突くようにレッドスターズが攻め立てた。

 パワータイプの啓太が、ゴリッゴリのセンタープレーでマークマンを押し込んでのロールが定番パターンだが、意外な事にミドルや3Pも器用に決めてくる。

 安藤はセレクション戦で見せたように、安定した3Pとドライブからのシュートで得点を量産。

 蓮も3年生たちに遅れは取らず、自身の得点とアシストで存在感をアピールした。

 終わってみたら46対123と圧勝で終わった。

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