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改 悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
この世界のヒロインは

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6話:【急募】王子の攻略法

 ストーリーを進めるべく覚悟を決めた私は、リリアージュ様からのいじめを誘発するため、王子へのアプローチを開始した。

 しかし、前世を含め恋愛なぞろくに経験してこなかった私に、籠絡スキルなどあるはずもなく……


「手強い……!あの王子、私のことなんてアウトオブ眼中!!」


 作戦開始から3週間。ピクリとも上がらない攻略度に、私の心は折れかけていた。


「ちょっとくらい仲良くなってくれてもいいんじゃない!? 挨拶とお天気の話しかできてないけども!」


 この3週間、王子が視界に入った時は必ず話しかけた。マナー違反だが知ったことはない。むしろそれを見たリリアージュ様が「無作法な女ですこと!」と注意しに来てくれたら万々歳だ。

 しかし、聖女という地位と学園という場が立場の違いを曖昧にする。私のマナーを欠いた行いは、「不慣れな地方貴族の愛嬌」程度にスルーされ、咎められることはなかった。


 直接攻撃アプローチがダメなら広報活動だと、私は噂を流すことにした。内容はシンプルに「私が王子に横恋慕している」というもの。

 王子と公爵家の子息達が偶然にも集まったこの学年の令嬢は、「誰が推しか」という話題に事欠かない。

 私はその問いの回答全てを「アレン王子」に統一した。

 

 これで「婚約者の座を脅かす邪魔者」として池にでも落としてもらえれば……と期待したが――

 ……結果は、王子から若干避けられる、ただの悲しい女子生徒になっただけだった。

 

「はぁ……。ゲーム内の課金アイテムとか、裏技はないのかな…?」


 こんな時にゲーム内の課金アイテムを見つけて……なんてお決まり展開に期待を抱きつつ、私は誰もいない生徒会室の本棚を眺める。

 ふと目に止まったのは、精神魔法への対策をまとめた古びた魔導書だった。

 手にとって中身をパラパラとめくる。


(色んな魔法があるんだなぁ)


 この世界の魔法は、火・風・水・土・闇・光の6属性に聖属性を加えた7属性で構成される。精神魔法はそれらの応用のひとつだ。


「好感度を上げる魔法とかないかな?」


 不謹慎な裏技を期待してページをめくっていた私の目が、ある項目で止まる。


「『魅了への対策』? ってことは、魅了魔法が存在するってこと!?」

 

 思わぬ収穫に顔を輝かせた瞬間、背後から氷のような声が突き刺さった。


「やめておけ」


(――っ!?誰!?)

 

 振り向けば、誰もいなかったはずの生徒会室に、透き通るような銀髪の男が立っていた。


「同意なく精神魔法をかけた者は、罪に問われる」


 感情を一切排した、静謐(せいひつ)で冷酷な声。

 この部屋には王家と公爵家の人間、そして聖女しか入れないはずだ。容姿はジーク様に似ている。けれど、纏っている空気が明らかに違っていた。ジーク様より冷酷なその瞳は、彫刻のように整った顔立ちから、人間味を削ぎ落としていた。

 何より、ジーク様なら15はあるはずのラブメーターが、真っさらな「0」を表示している。

 

「……どちらさまでしょうか?」


 ジーク様の兄弟だろうか。けれど、そんな設定はゲームの記憶にない。恐る恐る声をかけると、しばらくの沈黙の後、彼は無機質な声で短く答えた。

 

「……シルベールだ」

 

 やはりシルベール公爵家の人らしい。名前を聞けば何か手がかりがあるかもしれないと思った私は、もう一度名前を尋ねた。

 

「失礼ですが、お名前は……?」

「……シルベールだ」

 

 1度目と全く同じトーン。犯罪未遂者に名乗る名などない、という拒絶の意志だろうか。

 

「シルベール様。ご忠告、ありがとうございます。気をつけます」


 名前を聞くのを諦めた私が引くと、彼は興味を失ったようにソファに腰掛け、懐から取り出した本を読み始めた。

 

(攻略対象……? でも、ゲームにこんなキャラいたっけ?)

 彼のメーターは、私に対してもリリアージュ様に対しても0だった。誰にも心を開いていないような、鉄壁の拒絶。気になってステータスを覗こうとしたが、真っ白で何も表示されない。

 

(レベル差が10以上あるとステータスは見えない。ということは、少なくともレベル60以上!?)

 こんな規格外の強者がゲームでは魔王討伐のメンバーにいなかったことに混乱していると、背後の扉が開いた。

 

「お! ジークとアリナちゃん、早いね!」

 入ってきたライオス様が、親しげに彼の肩を叩く。

 

(え? ジーク……?)

 驚く私を余所に、その後集まったメンバーは全員、彼を「ジーク」として扱い、何事もなかったかのように放課後を過ごした。

 

 背の高さも、声の響きも、放つ魔力も、昨日までのジーク様とは明らかに違うのに――

 

 翌日、生徒会室へ行くと、そこにはいつもの「ステータスが見える、ラブメーター15のジーク様」がいた。

 

(昨日の人は、一体誰だったんだろう……)

 

 皆が気づいていて「ジーク」として扱っているのか、それとも本当に気づいていないのか。

 なんだか聞いてはいけない、触れてはいけないような気がして、私は結局、誰にもそのことを聞き出せなかった。

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