33話:破魔の聖剣④ 見えない共闘
案内された部屋の奥には、やはり3体目のケルベロスがいた。
仲間の危機を本能で悟っているのか、巨体を檻に打ちつけて狂ったように暴れている。鋼鉄の棒が衝撃で鈍くたわむたびに、重々しい音が室内に響いた。
「い、今は少々虫の居所が悪いようですので、時間を置いてから改めて……」
歪んだ檻を見て顔を青くしたローブの男が、引き返そうと提案してくる。彼の視線が檻に釘付けになっているこの瞬間――絶好のチャンスだ。
私は背後で、静かに魔力を練り上げた。
「いいえ、今しかないわ」
放ったのは、光の槍11本。
逃走防止用に男へ1本、そしてケルベロスを狙って10本。
「ぐあっ!」
「キャイン!」
不意打ちを受けた男が転倒し、ケルベロスのHPが10%ほど削れる。
(うん!聖属性で強化した光属性の攻撃魔法もいい感じ!やっぱり魔物には効くね!)
「せ、聖女様……何を……!?」
地面に這いつくばった男が驚愕の声を上げる。返答代わりに次弾を装填しようとしたその時、部屋の扉が勢いよく開いた。
「マレナ様! 警備隊がここを嗅ぎ付けたとの噂が! ……って、これは一体……!?」
報告に来た下っ端の男が、入り口で凍りつく。
無惨に転がったマレナやらと、その男と魔物に向けて光の槍を構える聖女。状況だけ見れば、私が一方的に暴れている狂人に見えなくもない。
「おい!檻を開けろ!すぐにだ!」
「は、はい!」
マレナ様と呼ばれた男の怒声に、下っ端が反射的に入り口の操作盤を叩いた。
ゴゴゴゴゴ――!
地面に埋まっていた檻が上に持ち上げられ、怒り狂ったケルベロスが解放と共に私に襲いかかる。その凶悪な爪と牙を光の壁で弾き、放たれた闇魔法を聖域で霧散させる。
「あっ!?ちょっと!待ちなさい!!」
一瞬ケルベロスに集中した隙を突き、マレナたちは転がるように部屋から脱出し、外から鍵をかけられてしまった。
追いかけたいが、今は目の前のケルベロスが優先だ。
(シルベール様の方には回復持ちがいるけど、彼なら倒し続けてくれてるはず!あとは私次第!)
闇属性を無効化できる私にとって、魔法攻撃主体のこの個体は最高のカモだ。
物理攻撃を回避しつつ、隙間に攻撃魔法を叩き込んでいく。
あっという間にケルベロスのHPが赤色に染まる。あと一撃。
(シルベール様とタイミングが合いますように!!)
私はこの一撃がトドメになることを祈って、ケルベロスに光の槍を叩き込んだ。
「グギャアアアアア――――」
断末魔の咆哮が響き、巨体が地面に沈んでいく。
復活を警戒して追撃の構えをとったが……奴は起き上がることは無かった。代わりに、死体から弾け飛んだ光の塊が、私の手元へと飛んでくる。
「これは……っ!」
光が収まった手に残されたのは、小さなお守りだった。
「『経験値のお守り』……!? ノーダメージの完封勝利報酬が来るなんて!!シルベール様、ナイスすぎ!」
これは小ボス以上の敵をノーダメージで倒した際にのみ手に入る、獲得経験値+5%の超レアアイテム。
闇ダメージ無効化スキルを持つ私はともかく、2体を同時に相手取ったシルベール様まで無傷だったということだ。
捨て身の戦いかたを「避けてから殴れ」と矯正してくれた師匠の特訓が、思わぬところで最高の結果をもたらしてくれた。
「よし、これを装備して『黒龍』も効率よく狩るぞ!」
ガッツポーズを一つ。さて、問題はこの部屋の脱出だ。
扉を蹴ってみたがびくともしない。魔法攻撃もダメだ。どうやら、物理・魔法両対応のコーティングがされているようだ。
「……でも、あんな巨体を運び込む搬入口が、どこかにあるはず」
ケルベロスは扉よりもはるかに大きい。私は脱出ルートを探るべく、先ほどまでケルベロスがいた檻の奥へと足を踏み入れた。
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騎士団は王家直轄の軍隊、警備隊は各地で編成される警察のような組織です。




