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改 悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
この世界のヒロインは

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16話:聖女、筋肉の悲鳴を聞く②

 4戦終わり、私は全勝。魔力切れの生徒も出てきているが、私はまだ魔力も8割以上を維持している。

(よし、これなら走り込みは回避できそう……!)

 そう安心した時、シルベール様を含む、大学部の先輩が演習場に数人入ってきた。

 

「最後の試合は、大学部の先輩も混ざってくれるって!」

「やったー!」

「えぇぇ……」


 弾んだカルティナ先輩の声色に対して、部員からは歓喜と悲鳴が半々。私の隣では「終わった、走り込み確定だ……」という絶望の声が聞こえた。

 

 *

 

 大学部の先輩4人を加え、合計32人での大乱闘。

 開始の合図と共に、演習場には巨大な火柱が上がり、爆風が吹き荒れる。

(火力が、さっきまでと次元が違う……!?)


 この世界では魔法攻撃のみではどれだけダメージを受けてもHPが1残る(死なない)設定があるせいか、模擬戦でも攻撃に一切の容赦がない。

 咄嗟に自分に防御魔法を展開するが、火力が異常だ。炎が収まった時、両陣営の人数はすでに半分に減っていた。

 すかさずHPが削られた味方に範囲回復魔法(エリアヒール)をかける。数的優位を取り戻した、と思った矢先。

 

「ぐあっ!」

「いたぁっ!!」

 

 前方の味方が、木の葉のように次々と吹き飛ばされた。

 

「アリナちゃん、逃げて!!」

「!?」

 

 先輩の叫びに反応し、距離を取ろうとした瞬間――背筋が凍るような冷気を感じた。

 

 ガキンッ!

 重い衝撃と共に、展開した光の壁に亀裂が走る。

 10人近くを薙ぎ倒し、一直線に私を狙ってきたのは、シルベール様だった。

(重い……っ!)

 容赦なく振り下ろされる木刀と、その隙間を縫って飛んでくる氷の魔法。

 削られたそばから壁を継ぎ足すが、破壊の速度が再生を上回る。

 

 パリンッ!

 

 ガラスが割れるような軽い音と共に、私の防御壁が砕け散った。

 正面からは木刀、背後からは氷塊。どちらかしか防げない。私は本能的に「より危険」だと感じた木刀を光の壁で防ぎ、魔法攻撃を背中で受ける選択をした。

 

「ゔっ……!!」

 

 背中に走る衝撃。一気にHPが3分の1削られる。すぐに回復魔法をかけるも、切れ目ない追撃にどんどんHPが削られていく。

 

(せめて、1撃だけでも……!)

 防戦一方ではジリ貧だ。私は覚悟を決め、あえて防御を捨てて突っ込む。

 横薙ぎに払われる剣に二の腕が当たる寸前に身体を捻り、両腕を交差させて直撃を受ける。その一瞬、防御に割いていた意識をすべて攻撃に切り替え――

 

 ゴキッ!

 

(いったぁぁぁぁぁ!?!?)

 腕に走った衝撃で、視覚が白くなる。そのまま身体ごと吹き飛ばされたが、なんとか私はシルベール様へ渾身の1撃をねじ込んだ。

 

「っ……あだだ……」

 

(折れて……ないよね、これ……?)

 力の入らない腕に回復魔法をかけ、必死に体勢を立て直す。

 相手が女子だと剣筋に迷いがあった生徒もいたが、この人は全く容赦がない。

 

(次が来る!)

身構えた私に対し、シルベール様は突っ込んで……こなかった。

 代わりに彼が左手をかざすと、切れ目のない氷の刃が雨のように降り注ぐ。

 光の壁で凌ぐが、あまりの物量に魔力がゴリゴリと削られていく。

 

(防ぎ……きれない……!)

 魔力残量が2割を切るより先に、壁が押し切られる。パリンと乾いた音と共に防御が割れた。降り注ぐ氷の刃に対し、目を瞑って腕で頭を守った。

 ……が、衝撃は来なかった。

 

「……魔力切れだ」

 

 シルベール様はそれだけ言うと、まだ混戦が続いている味方の元へ戻っていった。

 確認すると、私の魔力は「19%」。規定ラインを僅かに下回り、リタイア。

(強い……。そして、悔しすぎるーーーっ!!)

 完膚なきまでに叩きのめされた私は、初の完敗に地団駄を踏んだ。

 

 *

 

 結局、最後まで立っていたのは大学部の先輩4人と、3年生のうち2人だけだった。

 それ以外は全員、地獄の走り込みへ。

 屋外演習場、外周約1キロ。これを5周。

 

「あと3周! あ! こら! 身体強化魔法を使ったら2周追加だからね!」

「「はいっ……!」」

 

 頼れる魔法は封じられ、残されたのは己の肉体のみ。

(思えば、この世界に来てから体力勝負なんてしたことなかったな……)

 魔法に頼りきりだった脆弱な身体から、筋肉達の悲鳴の合唱が聞こえてくる。

 

 その日の夜、私はやっとのことで就寝準備を済ませると、食事もそこそこに泥のように深い眠りへと落ちていった。

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