15話:聖女、筋肉の悲鳴を聞く①
「あと3周! あ! こら! 身体強化魔法を使ったら2周追加だからね!」
「「はいっ……!」」
私たちは今、だだっ広い屋外演習場を走らされている。
なぜ魔法の世界でこんなことになったかというと、話は少し前に遡る……。
*
「ヴィリアリナ、君には夏休みにある討伐隊に参加して欲しい」
「承知しました!」
(絶好のレベリングの機会、キターー!!!)
ユリウス殿下から下された聖女としての仕事。それは、瘴気が濃い場所に発生する魔物を定期的に間引く「討伐隊」への同行だった。
「とは言っても、いきなり討伐隊への参加は危険も伴うからね。討伐隊の参加までは、騎士魔導部で修行しておいで」
「騎士魔導部ですか??」
殿下の説明によれば、そこは学園創立時からの伝統を誇る精鋭揃いの部活動。選抜試験を突破した一握りのエリートのみが入部を許され、ユリウス殿下やシルベール兄弟も籍を置いているという
「騎士魔導部は定期的に軍の討伐隊にも協力している。魔物との戦い方や、チームでの連携を学んでおいで」
「分かりました!!」
(強そうな生徒がいたら、魔王討伐メンバーにスカウトするチャンスかも!)
私は淡い下心を抱きつつ、強者が集うというその部室の門を叩いた。
*
「ヴィリアリナと申します!よろしくお願いします!」
「初めまして!私はカルティナ!カルティナ先輩って呼んで!今日からよろしくね!」
シルベール様の案内の元やってきた騎士魔導部で、出迎えてくれたのは、高等部の部長だという厚い眼鏡に緑の髪をお下げにした女子生徒。チラリとステータスを覗くと、Lv.55。私よりも高い。高等部では頭一つ抜けた実力者だ。
「聖女様ってことは、聖属性が使えるんだよね??攻撃魔法の弾速は?防御壁の圧縮強度は? 光属性との多重展開による相乗効果については……」
「えっ…?えっと……」
挨拶もそこそこに、顔を数センチの距離まで近づけて質問を連発される。
「カルティナ、そんなに矢継ぎ早に聞いても答えられないだろう」
引き気味の私を助けてくれたのは、引率のシルベール様だった。
「貴重な聖属性ですよ!?これが落ち着いてられますか!?」
そういって彼女は興奮した様子で一歩、また一歩とジリジリ距離を詰める。
彼女は魔法に対する探求心が人一倍……というか、異常に強いらしい。この高レベルも納得の魔法オタクだ。だが、こういう理論派も魔王戦のパーティーに欲しい人材である。私の脳内スカウト名簿に、有力候補が一人追加された。
*
「みんな集合! 今日から聖女様が練習に参加してくれます!」
「は、初めまして!ヴィリアリナ・イースティアです!よろしくお願いします!」
演習場に集まったのは、高等部から選りすぐられた猛者たち。前世の運動部のような熱気に、私の背筋も自然と伸びる。
「よし! 練習を始めるよ! 今日はチームでの模擬戦を5戦! 半分以上負けた人と、魔力が2割を切った人は、部活終了後に演習場外周の走り込みね!」
「「はい!」」
(予測外のスポ根展開!)
魔法の世界でのスポ根展開に驚く。なんでも、最大魔力量は生まれ持った素質だけでなく、基礎体力の向上によっても底上げされるらしい。
(魔法の世界なのに、そんな運動部みたいな……)
前世の記憶が蘇る。運動部の走り込みは、異世界でも健全なようだ。
話が長くなったので、2話に分けます!




