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改 悪役令嬢がいじめてこないのでストーリーが進まない! 〜もしかして私は、悪役令嬢がヒロインの物語で断罪される元ヒロインですか!?〜  作者: うみの もずく
この世界のヒロインは

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10話:聖書(ラノベ)の整理

 ここで、手に入れた『聖書』――もとい、リリアージュ様が主役の『小説版』のストーリーを整理しておこう。

 

 小説版の主人公はリリアージュ様だ。彼女は5歳という幼さで転生したため、ここがゲームの世界だとは知らない。

 本来のシナリオでは、病弱で家族に甘やかされた結果、わがまま放題に育つはずだった公爵令嬢。しかし中身が『莉愛』になったことで、彼女は「捨てられたくない」一心でお手本のような令嬢へと成長した。

 聖女としての務めも完璧にこなし、順当に王子の婚約者の座を射止めている。

 

 だが、そんな彼女を面白く思わないのが、ゲームの知識を持つ「転移者の聖女」――つまり、私だ。

 小説の中の私は、ちやほやされるはずだった攻略対象たちが自分に見向きもせず、リリアージュ様と仲睦まじいことに嫉妬。彼女を排除するために魔物をけしかけるが、全て倒され失敗。

 

 そこで私は禁じ手に出る。聖女の固有能力である『魅了』を乱用して攻略対象たちの心を上書きし、いじめを捏造してリリアージュ様を追放。王子の愛を奪い、贅沢三昧の限りを尽くす。

 

 しかし、そんな暴挙も長くは続かない。

「王子の心が彼女にあるなら……」と一度は身を引くリリアージュ様だったが、私の暴挙を止めない王子に廃嫡の声が上がり、彼女はついに立ち上がる。

 

 リリアージュ様は聖女の力を封じる『封魔の勾玉』と真実を映す『真実の鏡』を手に入れ、自分と私、双方の『魅了』を強制解除する。

 ……が、もともとリリアージュ様は魅了魔法など使っていなかった。

 術が解け、正気に戻った王子は、魅了とは無関係にリリアージュ様を愛していた自分に気づき、真実の愛を確信する――。

 

 そして『真実の鏡』によって悪事が露見した私は、魅了の乱用、暗殺未遂、詐称罪で断罪され、投獄。その地下牢で精神を病み、魔王へと変貌して王国を襲うのだ。

 最後は王子たちの手によって討伐され、大団円。……これが、リリアージュ様が歩むはずだった「小説版」のハッピーエンドだ。

 

(……救いがない。私、完全にただのモンスターじゃん)

 自分の不憫な末路に頭が痛くなるが、ゲーム知識と合わせることで重要なルールも見えてきた。


・王子の固有スキル: 愛する人がパーティにいれば、全員のレベルを「+20」する(魔王戦の必須条件)。

・レベル50の壁: レベル50を超えると固有スキルが覚醒する。

・魔王化のリスク: 聖女(私)が闇堕ちすると魔王になる。

・聖女の能力: 聖女は『魅了』の能力を持つ。

 

 ただ、まだパズルのピースが足りない。

 ゲーム版ではリリアージュ様が、小説版では私がけしかけていた魔物がドロップするはずの「破魔の聖剣」の入手方法。そして、私の固有スキルも判明していない。

 何より、3年後に復活するはずの「真の魔王」に関する情報が小説版には一切登場しないのだ。

 

(そして断罪の回避のために、まずはこの魅了をどうにかしないと……!)

 私には、攻略対象の頭上に『ラブメーター』が見えている。

 リリアージュ様のメーターは青、私のメーターは赤だ。

 ただの識別用だと思っていたが、小説によれば意味が違った。

 青のメーターは純粋な攻略度(好感度)、赤のメーターは魅了へのかかり具合だという……

 

(王子にはかかってないけど、他の生徒会メンバー達にはかかっちゃってるよ……)

 まだ数値は15程度ではあるが、私が無意識に放出した魔力が、彼らに精神干渉チャームをかけているのは事実。すでに断罪フラグに片足を突っ込んでいる。


(あとは、いじめを捏造せず、魔物をけしかけず、王子に近づかないと。でも、それだけじゃ魔王が倒せない……!)

 魔王戦までに必要な準備は3つ。

 1.リリアージュ様による王子の完全攻略。

 2.重要アイテムの回収。

 3.パーティメンバーの徹底的なレベリング。

 

 魔王討伐の必須レベルは、王子のスキルを加えても最低「60」。

 実家の裏山にあった『試練の間』に通い詰めれば楽勝だったが、学園からは遠く、気軽に行ける距離ではない。おまけに、本来なら経験値稼ぎのカモになるはずだった「聖女または悪役令嬢がけしかける魔物」は、どちらも用意する予定はない。

 

「……とりあえず、最優先は魅了の無力化と、効率的なレベリング方法の確立、かな」

 

 王子との恋愛はリリアージュ様に任せ、私は戦闘力で加勢する。これこそが私の進むべき道だ。

 

 私は自分が魔王になるリスクについては伏せつつ、これからの作戦についてリリアージュ様に語り始めた。

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