第5話-①
雲に覆われた薄暗い空の下は、いつまでも雨が降り続いている。
湿った土の匂いと激しい雨音が、俺の意識を支配してくるようだった。
気づけば俺は、近くの公園のベンチに座り込んでいた。
どうやってここにたどり着いたかわからない。今が何時なのかも、わからない。
重たいまぶたをなんとか閉じないようにする。ふと、服の袖に目をやる。
雨を吸ったスーツは、最初の輝きなんてもうどこにもない。
今は、ただ重いだけの役立たずに成り果てていた。
いっそ脱ぎ捨ててしまおうか。そんなことを考えた、その時だった。
ピコンという電子音と共に、ポケットの中のスマホが震える。
なにかの通知かと思い、俺は取り出して画面を確認する。
画面には、メッセージアプリの通知。送り主は……トオルだ。
そのメッセージは、こう書かれていた。
『どうだ。一世一代の告白はうまくいったのか?』
いつもながら俺に気をかけてくれている。優しいやつだ。
でも今は……その優しさがつらい。
俺は返事をせず、ただうつむいていた。
なんて返せばいい。もう、告白だのって次元の話ではないんだ。
俺には、手に負えない話なのだから……。
すると今度は、スマホに着信が入った。
画面に映る名前は、これまたトオルだ。
……こいつはどこまで俺を気にかけているんだ。
頼む、放っておいてくれ。あとで事情は話すから……今は……。
しばらくしても着信は止まらない。こんな時に限ってしつこすぎる。
俺は着信を切ろうと画面に触れる。
「ぁ……」
だが降り続く雨のせいか、間違って通話ボタンを押してしまった。
「おっ、やっと出たな。既読無視なんてらしくないじゃないか。どうした?」
「……」
さっさと切ってしまおう。今の俺にはなにも言えない。
伝えても解決しない。無駄なんだ。
指を、スマホの通話終了ボタンの上にそえる。
……けど。
「……トオル、俺は」
縋るように、スマホを握りしめていた。
「……どうしたんだ? タイヨウ?」
「俺……俺……っ!」
「……」
降り続ける雨の中、俺は必死に声を振り絞る。
この雨音にかき消されないように、口を開いた。
「俺は……お姉さんに、なにもできなかった……」
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