第29戦 情報戦
少しの昔話をマーヤにしたのは私ですら暗殺の対象になり得るという事を伝えるためだった。
「私は……それでもセレナさんのお役に立ちたい。自分の身は自分で護ります!もし、私が人質に取られたとしても気になさらず真っ直ぐお進み下さい!私はメアリー指揮官に救われました。ならばあの人の理想を叶える為に私も全力を尽くします。」
「ナイフは使えるの?」
「はい、メアリー様とコーネリア様に護身術には教えられました。」
流石に無謀な事はしないか……ただまだだ。私は机から模擬ナイフを2本取り出して一本をマーヤに渡した。
「私の攻撃を受けきってみなさい。」
「はい!」
最初の刺突……
「フーン……」
マーヤはナイフを使わず体を逸らして躱していた。
「やるわね……」
「ありがとうございます。」
先程の緩んだ目じゃない。命を狙われてる時の草食動物の目……つまり生きようと逃げる為の覚悟の目だ。そこからは乱戦だった。しかもこの子……
「躱すのは上手みたいね。」
「野生動物相手に比べれば……まだなんとかなります!」
そう言えばこの子は狩猟が本職でしたね。スピードをもう1段階上げても何も変わらず躱してきた。
「すいません……」
「は?」
なぜか謝られた。しかしその瞬間私の首元には模擬ナイフが添えられていた。
「隙が何度かあったので狙えという事なのかと……」
「確かに油断はしたわね……だけど反撃も出来るとは思わなかったわ。」
「……はっ!し、失礼しました!」
いきなり我に返ったかの様に頭を下げるマーヤに私はとりあえず頭に手を置いた。
「とりあえず合格よ。その集中状態をいつでも出せるようにしておきなさい。」
「はぁ……」
なんとも気の抜けた返事だがあの目はものすごい集中力を発揮してる時のものだ。
2日後……
私の前にメアリーとフェスを正座させていた。
「なんで私まで……」
「あなたが主役だからよ!」
「じゃあ私は?」
「過去にやらかした事を思い出して反省してなさい!」
フェスに関しては理不尽だが過去の清算だ。
「それで、私が何かしましたか?」
「メアリー、アンタあの子に何仕込んだの!」
「あの子?もしかしてマーヤ?」
「そうよ!何あの子!私のナイフを全て捌いたのよ!こっちは自身喪失よ!」
メアリーは目を丸くしてました。もしや何もしてないのか?
「……あー!あれが開花したのね!戦争が終わったらパーティしましょ!」
1人で浮かれてるメアリーをとりあえず1発殴って正気に戻した。一から説明していただきます。
「説明なさい。」
「はい……あの子が矢を放つ時を何度か見てたのですが、あの子の命中率はものすごく高い集中力のおかげだと思いました。だからナイフを……いえ、攻撃を避けるという一点に集中させる事で私やコーネリアクラスのナイフなら捌けてしまうのです。ですが……セレナのその様子だとカウンターを貰いましたね?」
私は再びゲンコツを落としてメアリー黙らせました。これは当然の報いです。
「でも、間に合って良かったです。本格的な戦争を前にあの子が開花して……これで護られる側から護る側へ変わったのですからね!」
「まさか……あの子を戦場に!?」
「出させませんよ?でも、市民を護る為には必要な戦力です。いざという時の為に育てましたからね。」
そういうメアリーの眼光は鋭かった。昔からこの子は先を見ていた。そして感情を抜きに作戦を考えては後悔をして亡くなった方へ手を合わせた。その覚悟は今もその眼光に残ってる。
「戦わせない為に戦うってわけね。なら、私もその役に1つ貢献しますか。」
「結局負けた腹いせじゃん!ぎゃああー!」
フェスの膝に大石を乗せて私はそのまま帰宅した。
翌朝、私は資料を読み込ませる為にマーヤを家に呼んだ。
「この量……凄いですね……」
「毎日睡眠時間を削って読んでるわ。」
それは私が作った地下倉庫、あの後も何箇所かの隠し場所を見つけて集めていたのだ。
「待ってください!この方って……」
「いいから読み込みなさい。」
マーヤの驚愕など織り込み済み、とにかく読んでもらうことを優先させた。読み終える頃には2日は過ぎていた。
「法界は全て敵みたいですね。」
「法界どころか政界もよ。しっかり読みなさい!」
私はコツンとマーヤの頭を叩いた。
「はい、すいません……でも、これって……」
「勝ち目は殆どないわよ。だからこちらも少しずつ瓦解させていくわ。」
そう、敵の敵は味方……所詮は烏合の衆情報を駆使すれば敵も味方になる。
ここまで読んで頂きありがとうございました次回もお楽しみに!
第二次世界大戦において情報戦を繰り広げた方がいました。その人は相手の戦闘機の編隊から番号まで暗記し、暗号解読にも長けていました。そんな彼は畏怖の念を込めてマッカーサー参謀と恐れられたそうです。




