第28戦 布石
私が法界に入った時の話だ。
「この国は腐敗していますね。」
先輩は笑って私の言葉を突っぱねた
「ワハハ!みんなそう思ってるさ!政界と法界は別である。なのにこれだ。笑えるだろ?」
「笑えませんからね。」
法は政界が作る、それを国王に進言する、その国王の相談役に法界がある。なのに裏では法界と政界はズブズブの関係。道理で悪法が通りやすいわけだ。
「まぁそのおかげで仕事は減ってる。無駄な会議もなくなった。お偉いさん達が勝手に決めて勝手にやってるんだからな。僕たちの意見は丸々無視だ。」
彼はスワン・メディ先輩。やる気が無いようで要所はしっかりと押さえてる為に評価は高く見られてるがその実態はサボり魔だ。
「適度に力を抜けよ。全てに力入れてたら怒って泣いて失望するだけだ。」
「はぁ……左様で……」
正直高い目標のある私はこの人のことが苦手だ。適当に周りに愛想振り撒いて雑談ばかり……かと思えば姿を消して何かしらの仕事を片付けてきてる。
(仕事早いくせに……)
能力があるのに余力を残して終わらせて帰る。この状況を変える気なんてサラサラないみたいに見えてた。
(学ぶもの学んだらさっさと離れよ。)
そうして3ヶ月後の話だ。
「もう僕から学ぶ物はなくなったかい?」
「ええ、まぁ一通りわ。」
「そっか……じゃあここに行くといい。」
「……ここは?」
手渡された紙には住所しか書いてなかった。
「ここには僕より優秀な人財がたくさんいるから学ばせて貰うといいよ。」
「そうですか……」
「うん、君は上を目指してるのだろう?自分の為ではなく誰かの為にね。その向上心を僕は止めてはいけないと思ってる。」
「半分正解ですが、何故そこまでしてくれるのです?」
「さぁね?僕にもわからない。だけど君ならやってくれると信じてるから……かな?」
「スワン先輩は無駄なことを省けば出来ると思いますがね?」
「ワハハ!それは無理だこれが性分だからね!」
それを聞いて私は呆れてしまいました。
「そうですか……やはりあなたとは考え方が合わないようですね。失礼します。」
私は頭を軽く下げて先輩の部屋を出た。その3日後先輩は亡くなった。
「過労死だってよ。」
「あんな良い人が……」
などと周りからは聞こえる。愛想は良かったからそう思われるだろう。
「ご苦労だったな。」
雑多の中その声は確かに聞こえた。しかし誰が言ったかは分からなかった。その時新しい先輩ヴェルデさんから声がかかった。
「セレナ君、スワンの資料を知らないか?」
「資料ですか?部屋にある分以外は知らないですが……」
「そうか……なら良いんだ。」
このセリフに違和感を覚えた私は仕事が終わった後スワンの事務所の部屋に向かったがそこには何もなかった。
(処分されたようね……)
しかし私は知っている。あの人が隠してる場所を……
「なんですか?それは?」
「あぁ、写しだよ。記録を自分の手元にも置いておこうかなと。」
「確かに必要ですが、手間では?」
「ところがどっこい、これは2枚重ねにしてるんだよ。こうして書くとねあら不思議、裏には何も書かれてない!」
「……バカなのですか?それともバカにしてますか?」
「そう怒らないでよ、確かに何も写ってないね。でもこうして黒く紙を塗りつぶすと……」
「嘘でしょ……」
「上の紙より下の紙を少し厚くしてるんだ。そしてそらを黒く塗りつぶすと凹んだ場所は色が出ずに文字の形が残るんだよー。特注品だから誰にも言わないでよー。作るの大変らしいから。」
そしてその写しはというと……
「ここはやはり何もされてませんね。」
屋根裏だった。ご丁寧に灯りも置いてあった。そして何故か机まで……
「日記かしら?」
そこに置いてたのは18冊のノートだった。そこにはこの国の悪事やその証拠が書かれていた。
「アイツ……あんなチャランポランな事してた癖に……日付やその日の天気まで書いて……」
しかし最近の方になると私のことを書くようになっていた。笑った事、失敗した事、成功した事全て書いてた。
「本当に可愛がられてたんだ。私……」
そして最後の一文には……
『どうやら私はあの子に嫌われたみたいだ。だがこれで良い、あの子を守れて未来を託せる。あとはあの子がこの場所を覚えていてくれる事を祈る……』
「真面目にこうやって仕事してたのなら嫌わなかったわよ。でも、あなたの願い聞き届けたわ。」
その後ここの資料は少しずつ自宅に持ち帰った。その時はフェスとメアリー、コーネリアにも手伝ってもらった。
そんなある日……
「あら?夜道で女性を狙うなんて男として恥ずかしくないの?」
「国に仇を為す者よ。遺言はあるか?」
「そうね。貴方の雇い主くらいは聞きたいわね。」
「知る必要はない!」
その瞬間飛んできたのは六角の細くて短い鉄棒だった。しかも正確に心臓を狙ってきていた。私はそれをナイフで弾いた。
「ほぅ……やはり騎士団上がりなだけはある。楽しませてもらおう。」
「私は今もの凄く機嫌が悪いの……あなたを楽しませるつもりは……ない!」
私はスタートを切った。それと同時に相手もスタートを切った。
「な、なんという手数……」
「……」
すこぶる頭がクリアだった。戦場にいたけどここまで頭がクリアになった事はなかった。次第に相手から血飛沫が舞う。
「チッ!」
距離を取ろうとするがスピードが足りない。すぐに追いついた。
「何!?」
「終わりね。」
虚をついた一瞬で私は敵の左肩から斜めに切り裂いた。
「暗殺者さん、死ぬ前に聞いてあげる。誰の差金?」
「言うと思うか?」
「言うはずないわね。プロですものね。」
「ただこれからもお前は狙われる。私は地獄で待ってる……ぞ……」
その暗殺者はそのまま息を引き取った。
「忠告ありがとう。でも……この道を止めるわけには行かないのよ。」
私は死体をメアリーの所へ持って行き処分してもらう事にした。スワンの敵討ちなんて考えてないがメアリーの望む世界に向けて使わせてもらうわ。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
優秀な人ほど嫌われる
今も昔も変わりません部下からの信頼は厚いのに上層部は毛嫌いしてる……
現場を知る者にしか分からない事もあります。
現に硫黄島では兵に玉砕命令を出していた大本営に対し現場指揮官は最後まで守り、アメリカ軍を恐怖させました。
沖縄戦でもペリリュー島でも現場を知っていた者が最後まで抵抗し、その後のアメリカ軍の作戦を延期させてきました。
我々も現場を見ながら考え相談しながら日々を過ごさないとですね




