第21話 命の重み
「次回の特攻は君たちだ!」
「……」
その言葉に私たちは何も言い返せませんでした。
「コーネリア……大丈夫?顔色悪いよ?」
「大丈夫ですよ。少し風に当たってきます。」
私はフラフラと室内から出ました。死という現実を受け止められなかったのです。国のために死ぬ……私は軍人である以上当たり前のこと……しかしあまりにも急、そしてやる事は敵の足止め、その間に上から敵ごと生き埋めにするというものでした。
「怖い……」
戦いの中死ねるならまだ良かったです……しかし私たちはそれすら許されないのです。幼少期は父の武勇伝が子守唄でした。昼間は外で遊びと言う名の訓練に勤しみ、避け方、物の投げ方を学びました。
「……あれ?」
知らない間に私の目からは涙が出ていました。同じ団員の仲間は強いです。私は今命惜しさに泣いているのですから……
「私は軍人失格ですね……」
「失格なのではありませんよ。」
私は後ろを振り向きました。そこには小さな女の子がいました。
「命は大切です。ですが、生きて帰ろうとする意思は最後の最後に勝ちをもたらします。」
「あなたは……ではなく、こんな所に子供が来てはダメです!今すぐ帰りなさい!」
私は泣いてる目を擦り悟す様に女の子を注意します。
「ごめんなさい。自己紹介がまだでしたね。私は第3師団の指揮官メアリー・バーンです。」
「えっ……あなたが……あの天才指揮官?」
天才指揮官がいるという噂は知っていました。しかしそれが今回子供のような見た目をしてるとは思いませんでした。
「そう呼ぶのは一部の方です。それより……あなたたちの隊に特攻の命令が出たそうですね。」
「はい……命をかけてその責務を全うしようと……思い……ます。」
「はぁ……しなくていいですよ。」
「……え?」
「しなくて問題なしです。私が作戦を考えました。これ以上犠牲者は出しませんから……」
そう言ってメアリー指揮官は本部へと歩き出しました。
「ま、待ってください!そんな事できるわけ……」
「出来ます。私の隊とあなたたちが力を貸して頂ければ絶対に!」
とても華奢な体にそして小さな体躯……それなのにその闘気は私を簡単に気押しました。
「私たち生きて良いんですか?」
「戦争である以上絶対はありません。しかし無駄死にささせる様な戦い方などしなくてもこの戦は勝てます。優秀な皆さんとなら!」
これから死ぬ事でしか価値を与えられない私たちをここまで言ってくれました。ならばこの命をこの方の為に使いたい……そう思わせてくれる人でした。
「皆さんに明日の作戦に支障が出ない様、ゆっくり休息を取る様にとお願いします。」
「……ありがとうございます。しかしこれは総指揮官の命令です。メアリー指揮官がどうにか出来る事ではありません……ですが、あなたの言葉は今の私には最高のお言葉でした。ありがとうございました……」
私はそのまま拠点へ戻ります。そして皆に伝えました。私たちを優秀な人財と認めてくれる方がいた事を……もともとこの師団は寄せ集めです、私も戦闘より雑務や書類整理などの仕事がメインでしたし、度重なる敗戦がこの現状となったのです。つまり非戦闘員がほとんどなのでした。
「皆さん。明日は最期の日です。この国のために最期は華々しく散りましょう。」
私の声に皆さんから呼応する声が上がりました。そしてその直後扉が開かれます。
「皆さん……静かにして下さい。」
「あ、あなたは……」
そこにいたのは先程別れたメアリー指揮官でした。
「皆さん楽にしてください。そして座って下さい。」
今までの激しい感情を冷やすかの様な静かな声音、まるで水を打ったかの様に静まり返る室内……そしてもう1人の方が入ってきます。
「はぁ……またメアリーのせいで始末書よ……」
そこには額に手を当てて入ってくる女性、さらにもう1人笑いながら入ってくる子供がいました。
「あはは!ならその紙私が裂いてあげよっか!」
「馬鹿言わないで!」
この3人は私たちの前で漫才をしてるのかと思うほど陽気でした。
「このお2人は気にせずに……話を続けます。この第9師団の指揮官はたった今から私の第3師団と統合となりました。」
私たちはポカンとなりましたがすぐに他の方が聞き返します。
「あの、私たちの指揮官は?」
「長期離脱となりました。帰ってくるかは分かりませんがね。」
数10分前……
「第10師団指揮官、アバルトさんですね。」
「いかにも……なんの様だね、第3師団指揮官メアリーさん。」
メアリーさんは私たちの指揮官と人気のない場所で会っていました。
「あなたこの前も自分の隊員を特攻に出してましたよね?今回もですか?」
「当たり前だ、国の存亡危機に命を張るのは当然だ。」
「……なるほど言ってる事は理解できます。ですが、貴方はいつ行くのですか?」
「ん?なぜ私が行かなくてはならんのだ?私は指揮官だ。私がいなくなれば誰が第10師団を動かすのかね?」
「ならばなぜ特攻に行かせてまた新たな人員を入れるのです?今の貴方は自分の番にならない様に盾を置いているみたいですよ。」
それを聞いたアバルト指揮官は激怒しました。
「私を愚弄するか!ただの子供のくせに!」
「子供に本当の事を言われて怒るなど本当に無能な指揮官でしたね。さようなら」
グサッ……
それはアバルトの後ろから……真っ直ぐと心臓を貫いていたのでした。
「な、この黒槍は……」
「聞いててムカついたよ。死んでみんなに謝ってこい……」
「ガハッ……」
そのままアバルト指揮官は血の海に沈みました。
「敵陣のすぐそばに捨ててきて下さい。敵さんとしたら指揮官を取った事になりますからね。最期は誰かの役に立ってもらいましょう。」
そして今になります。
「よって私が指揮官になりました。メアリーです。よろしくお願いします。」
「私は副官のセレナです。それに伴い、皆さんに出ていた特攻の話は無くなりました。そして……ここでこの戦いに決着をつけようと私たちは考えております。」
メアリー指揮官とセレナ副官の言葉に泣き出す者もいました。当たり前です。誰も死にたいなんて思っていないのですから。
「そしてその作戦とは?」
「まず……逃げますよ!」
「……はい?」
私たち第10師団26名が一同にこう言ったのでした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もお楽しみに!
今回は特攻兵器桜花についてです。
これは人の道に外れた兵器です。必死兵器と言われてます。本来無人機として陸軍で作られてました。それを海軍は有人機として改造。
そしてその考案者はというと……逃げました。最初は私が先陣を切ると言っていたのに出撃を何かと理由をつけて逃げました。終戦後は子宝にも恵まれて天寿を全うしています。開発者もその人がパイロットと思って開発したとの事、もしパイロットでもない事を知っていたら叱りつけて反対していたと戦後語ってるそうです。




