15戦目 驚愕
私とコーネリアが帰ってきた時、アネリーとフェスは訓練中でした。フェスは私を横目で見たのでしょう。アネリーに対して槍を大きく振り自分の間合いから遠ざけます。
「ふぅー……おかえり!」
「ただいま。続けてても良かったのですよ?」
「いいよ、少し休憩したかったし。それで何か成果は?」
「相変わらずの総指揮官という所でした。」
私は先程の話を2人にしました。するとフェスはゲラゲラ笑い、アネリーは信じられないという顔をしていました。
「他の20の騎士団はどうするのかしらね。」
「クルス団長たちは最悪私に指揮をとってもらうと言ってましたが……上は許さないでしょうね。」
「許す許さないも、クソみたいな作戦を立てて兵を死の淵に追い込む方が問題でしょ!」
フェスの意見はごもっともだった。
「言い過ぎですよフェス!例え、本当のことでもです。」
コーネリアの言い方も散々なものだった。
「コーネリア、その辺で……それよりあそこに向けての新たなアイデアが出来ました。」
私は人差し指を天井に向けました。
「何かしらの案が出来ましたか?」
「ええ、得られましたよ。みなさんには頑張って貰いますからね。」
露骨に嫌な顔をするフェスとワクワクしてるアネリーで対照的だったのは面白かった。コーネリアにロゼッタ姫とレイを連れてきて貰い会議を始めます。
「やる事は縫い物です。」
「縫い物?」
フェスは少し明るい表情になりました。料理は下手だが編み物は得意なのがフェスだった。
「何を編むの?」
「まだ構想段階ですが……これです。」
私は簡易的な絵を見せました。
「本当にこうなるのですか?」
「煙突から煙が昇ります。つまり、その空気を集められればできるはずです。そして燃えない様にするにはどうやら綿が必要なようです。」
「綿ですか?」
「はい、お爺さんの鍛冶屋さんではあの高温の炎の近くで布が燃えてませんでした。恐らくですが布を重ねてるだけでなく熱が伝わりにくくしてるのだと思います。」
「つまり綿にはその力があると、考えていられるのですね。」
私は頷きます。他の物も考えましたが鉄を持つ以上なるべく軽い物で熱を伝わらなくし、かつ嵩張らない様にするなら恐らく綿だと結論付けました。直接聞ければ良いのですが、素直に教えてくれる相手ではありません……姫様もレナも具体的なアイデアに興味を持ってもらえたようです。
「良いじゃん!やろやろ!」
「ええ、ですがまずは材料集めです。本当に綿にその効力があるのかを確かめなければなりません。他にも布の調達も必要です。」
「それでしたら王室御用達のお店に話をつけましょう。」
「ひ、姫様そんな大層な物は……」
流石にそんな高価な物を頼めるはずがありません。
「分かっています。不要な布を戴く事が出来るか聞いてみるだけですよ。」
「それだと助かります。私も方々へ尋ねてみましょう。」
「なんじゃ、面白そうな話をしておるのぅ。」
「帰ったのですね。ソラさん、マーヤさん。」
「ただいま帰りました。ソラさんの容体ですが、まだまだ完治には時間がかかりますね。」
「ご報告ありがとうございます。では、明日もよろしくお願いします。こちらの2人に頼むと手合わせと言い暴れそうなので。」
私はフェスとアネリーを見て言うとマーヤは笑顔で頷きました。逆に2人はぷくーっと頬を膨らませていました。
「それでそれで!なんの話をしておったのだ?」
逆にソラは先程の話が気になる様ですので話をしました。
「なんじゃ、お主らは気球を作りたいのか?」
「これの作り方がわかるのですか?」
私たちが1から作ろうとしてる物にソラは心当たりがあるようでした。
「作り方は知らん!だが、気球という乗り物で空を行く者達がいるのは知っておるぞ!」
「その方たちは何処に?」
「ここから数ヶ月東に歩いた街におった。其奴らも旅をしとるらしいからな。だが、それがあれば船を使わずとも海を渡る事が可能だと言っておったなぁ。」
「つまり彼らの足取りを掴まないといけないのですね。」
「ちょっとちょっと!メアリー!正気ですか?」
流石に待ったを掛けたのはロゼッタ姫だった。これにはコーネリアも待ったを掛けたそうな顔をしていました。
「一師団の団長が他国遠征など認められません。これは姫としてではなく友人としても止めさせて下さい。」
「私も反対します。メアリー様はこの国にとって大切な存在。死なせる訳には参りません。」
やはりというかコーネリアもロゼッタ姫と同じ考えらしい。
「凄い好かれようじゃのう。まぁ焦らずとも時期にここにも来るだろう。」
「どう言うことですか?」
私はソラに尋ねました。
「先程も言うたであろう。奴らは旅をしておると、ならばいずれここにも来る。風の吹くままにな。」
「それもそれで問題なのですが……」
「なぜじゃ?」
その説明はロゼッタ姫がしてくれました。
「なんと!そんな事では発展は見込めんな!」
「他所の国ではもう空へ向けて動いているのですか?」
「もちろんじゃ!お主らが作ってる気球なんぞ比べ物にならん物をな!」
ソラの話は信じられない物ばかりでした。飛行機なる乗り物に爆弾という火薬を使った兵器を積み街に落とすという話、その乗り物は馬とは比較にならないくらい速いという事、その飛行機に弾丸という鉄の玉を入れ飛行機を落とすなどこの国では信じられないものばかりでした。
「今その国は何処に?」
ロゼッタ姫は恐る恐る聞きました。
「ここから南西の方角へ海を超えたその先じゃ。ここは岩で造られた家だが、あちらは鉄という岩より硬い物で建物を建てておる。」
「海の向こう……つまり空を飛んで攻撃してくる事もあるというわけですか……」
「こんな小さな国を周りは必死に取り合う周りの国とはスケールが違いますね。」
コーネリアの言うことはもっともだ。私たちは井の中の蛙です。一刻も早く技術力の向上に努めなければなりません。
「あれ?じゃあソラはどうやってここまで来たの?」
フェスの質問にソラは普通に答えます。
「船できたぞ。海を渡るために鉄で出来た船でな!」
私たちは鎮まり帰りました。この国に海はありません。内陸国ですから……海が有るのは南の国スルバスと西の国のセイランだけです。つまりこの2つの国は既に鉄を使った技術を有してる可能性が高いと言えます。
「なんじゃ?鎮まり返って?」
私は我に返りすぐに指示を出します。
「ロゼッタ姫!今すぐ王の元へ!大使を通じてセイランにアポイントをお願いします。」
「わかりました!」
ロゼッタ姫は駆け足で王城へ戻ります。恐らく馬車も使うでしょう。一刻の猶予はありません。また戦争が起こります。
「な、な、何何急に!?」
「アネリー、今は静かに……メアリー様がなんとかしてくれます。」
新たに技術を得れば使いたくなる。そしてセイランは恐らく我々の国にスパイを送ってるはず……情報も筒抜けでしょう。しかし、まず倒したいのは北のインペルのはず……まだ戦争が起こったという情報はありませんが、インペルを倒した後属国として挟み撃ちにされるのは詰みです。
「ふぅーーー……第1師団へ向かいましょう。それとソラさん、貴女はこの国を出た方がいいです。恐らく戦争になります。」
「なんじゃ?戦をやるのか?」
「起こらないようにしなければならないのです!そして今起こる可能性が高まっています。なのであなたは逃げて下さい!」
「起こらぬかもしれん……だが、一宿一飯の恩を返さずに去るのはワッチの流儀に反する。」
ソラは立ち上がって私の前へ来ました。
「もし、戦になった時はワッチも使え、この手でも後方支援くらいは出来る。」
鋭い眼光の奥には覚悟が見えました。私はソラの手に自分の手を置きます。
「わかりました。ですが、負けそうな時は逃げて下さい。私たちの国の問題で迷惑をかけるわけにはいきませんから。」
私にも信念があります。そしてこれが私が曲げられない信念と覚悟です。これだけは引かないと私も眼光を鋭くします。
「……お主もやはり戦士なのだな。分かった。その願いはしかと受け取った。」
ソラは一時的に第21師団の仲間になりました。




