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放心状態で馬車に乗る前にも、すでにソフィアの心をゴリゴリに削る出来事があった。
「所でそのままのポーションで濡れた状態では、何か健康に悪い影響を与える可能性がある。ともかく急いでポーションを洗い流した方が良い」
「そうだね、誰かの目につくと困るからここのシャワー借りるよ。でも手がつながったままだね、上手に脱げるかなあ」
「ブブブブライス様!!! とりあえずこここここのままで!! とりあえず!! 服はこのままで!! 流すだけ流して下さい!!」
「服は脱いだ方が綺麗に落ちるけどなあ。まあいいや、急ごう。何のポーションだったか忘れたから危ないかもしれない」
わけのわからんポーションを被ったままで濡れたままの二人をそのまま放っておくのは危険だが、人目を避ける必要がある。
なんとソフィアはブライスと手がつながった状態で、王太子の部屋に備え付けのシャワーに入ってポーションを洗い流すというとんでもない羽目になったのだ。
ソフィアの必死の訴えで着衣ではあるが、異性耐性ゼロのソフィアにとって、顔面だけは国宝級に美しい男とシャワー。 ゼロ距離で見える、透けた白いシャツ越しのブライスのたくましい体にドキドキと、ソフィアの胸の鼓動がとまらない。
「二人でここの部屋のシャワーに入った事はないけれど、二人だと結構狭いんだねえハハハ」
どうやらしょっちゅうシャワーを借りているらしいブライスは何も気に留めずに豪華な金のシャワーヘッドを器用に動かして、二人ともにお湯が当たるように上手に調整してくれた。
(メンタルが・・メンタルが持たないわ・・こんな恐れ多い場所で、こんな格好いい人と同じシャワーに入っているなんて・・・なんかブライス様からいい香りがするし・・恥ずかしいを通り越して気絶しそう・・ブライス様濡れるとまた一層格好いいんだけど、どうなってるのかしら)
「よーし、あらかたポーションは落ちたね、じゃあこのまま乾かす。君に触れるよ。いい? それ!!」
シャワーの後は、ブライスがポタポタと濡れたソフィアの体に軽く触れて乾燥魔法をかけてくれた。
乾燥魔法は火魔法の応用で、これほど一瞬で完璧な乾燥魔法を展開できる人間などソフィアはブライスの他知らない。
(うわあ濡れているブライス様、本当に格好いい・・それからなんてすごい方なのかしら、本当にすごい魔法だわ、これで中身さえまともであれば、・・)
婚約者どころか異性とお付き合いした事すら一度もないソフィアは、そのブライスの美貌と見事な魔術に、うっとりとおもわずブライスに見惚れてしまう。
「セバスチャン、タオルありがとう」
シャワーが終わる頃にはすっかりとメンタルがゴリゴリに削られてしまって、ぐったり何も考えられない状態になってしまったソフィアとは対照的に、ブライスは何一つ感じていないらしい。
セバスチャンにお願いして、シャワー上がりの発泡水までもってきてもらってご機嫌だ。
(それにしても、一応は若い女性と2人で一緒にシャワーを浴びている状態なのにブライス様は何も全く気にされてないわね。・・そりゃそうか、私なんてブライス様にとっては居てもいなくても同じ空気のような存在なのかもしれない。そもそもブライス様の方がよほど私より美しいしね・・)
なぞの敗北感に打ちひしがれているソフィアに、気の毒そうにセバスチャンは言った。
「ではマレー子爵令嬢、殿下はご多忙な身でありますので、何かお困りの事あれば私までお知らせくださいますように。・・あの、ご存知だとは思いますが、ブライス様は大変ご立派な魔術師でいらっしゃいますが、えっと・・なにかと個性的、といいますか世間的な部分とは乖離されておられるようなお方ですので・・そういった部分でもお困り事があれば・・御役に立てますかは疑問ですが・・」
「ひどいなセバスチャン、僕は女性を困らせるような事はしないよ!」
ブライスはカラカラと笑うが、セバスチャンの目にはずいぶんと同情的な光が浮かんでいた。
「は、はい・・」
興奮したり落ち込んだり、乙女の忙しい胸の内は全く解する事もなく、ブライスは、そのまま王太子専用の馬車を借りて、高級住宅地の一角にある一件の屋敷の前まで馬車を走らせ今に至る。
「ソニア、ここだよ。ちょっと散らかっているけど僕以外は誰も住んでいない。不便をかけるけれど自分の家だと思ってこれからしばらく自由に過ごしてくれたらいいよハハハ」
「・・ソフィアです・・ハハハ」




