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「きゃああああ!!!」
「大丈夫? 一体何が起こったんだ?」
強い強制力でふっ飛ばされた先にいたブライスの左手と、ソフィアと右手がぴったりとくっついている。
「ええ?? 一体なに??」
怖くなったソフィアがまた小走りで部屋から退出しようと試みるが、
「ぎゃー!!!」
再び何かの強い強制力が働いて、またブライスの元にふっとばされてしまい、ブライスと手がぴったりと引っ付いて離れないのだ。
困惑するソフィアをよそに、ブライスが足元に転がっていた紙を拾うと興奮したように言った。
「ああ、なるほどこれだ! 僕が偶然踏んづけたこの魔法陣が発動している、今度解読しようと整理しておいた泉の奥の古代遺跡から発見された呪術の魔法陣だ!」
興奮気味のブライスの手にした紙に刻まれていた魔法陣が青く光を帯びている。
魔術が発動しているのだ。
「そ、それは歴史的な発見では・・おめでとうございます!」
魔法学校を首席で卒業していたソフィアも、一瞬でその意味を理解できた。
古代魔術の復活は困難を極める。解読までは研究できても、実際の発動となると成功は数十年に一度という成功率だ。
「ああ、その通りだ。古代遺跡に残されていた呪術の発動が確認されたなど、前代未聞だ。おそらく呪術の魔法陣を踏んだ時に、僕の防御魔法の魔力に反応して、その上に降ってきたポーションのどれかが反応して偶然発動したのだろう。学会に発表したら大騒ぎになるぞ、すごい発見だ・・!」
興奮して頬を紅潮させているブライスとは逆に、現実主義のソフィアはふと気になって聞いた。
「ブライス様、・・所でこれなんの呪術なんですか? 解呪・・できるんですか??」
「・・えっと・・まだわからない、まだ研究が始まったばかりなんだ。だけど大丈夫だ。多分」
「多分って・・!!! 今すぐ解呪してもらわないと、このままで外にはでられません、私困ります! そもそもこの状態はブライス様の方がお困りになるはずです!」
(事故とはいえこんな高位貴族の独身の男性と私なんかが手を取り合って歩いていたら・・どんな噂になるか分かったものではないわ)
ソフィアは一応未婚の、末端も末端とはいえ貴族女性。そしてブライスに至っては高位貴族の独身男性。
手を取り合って歩いている所などが誰かに目撃されてしまったら、スキャンダルになって立場上困るのはブライスだ。
それに結婚願望の強いソフィアに、高位貴族と噂になった過去などあれば、ただでさえ持参金の用意すらできないソフィアと結婚したいなど思ってくれる物好きに出会う確率は、限りなくゼロから完全なゼロになる。
ブライスの左手とぴったりとひっついて離れない右手を見せて、必死で事の重要さを訴えるソフィアの顔を見て、ようやくブライスは少しマズイ事になった事に気がついたらしい。
「確かに、草案の立案者が呪われたなど、意気地のない貴族議員の連中は何を思うか・・それに会議では草案の立案者の発表が必須だというのに、この子とひっついている状態で出席は無理・・ブツブツ・・」
どうやらソフィアとは明後日の方向でこの状況のマズさを理解したらしいブライスは、
「よし! アイツには一応報告はしておこう。ちょっとついてきて」
それだけいうとブライスは右手で魔法陣を展開して、急にその場で転移魔法を発動した。
「きゃー!!!」
(もう、一体どうなっているの・・)




