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「フィフィ先生、僕たちでも未来は魔術師になる事ができるって本当? 大人たちがそういってたんだ、これからは法律が変わって僕たちでも魔法が使えるようになるって」
ある日の授業の最中、生徒のリアムが手を挙げて、ソフィアにそう発言した。
リアムが言っているのはブライスとレイの立法化した平民に魔法の門戸の開かれた、魔法の新法案の事だろう。
ソフィアはこんな小さな海辺の街の子供たちにも、この素晴らしいニュースが大きな話題として伝わっている事に心が熱くなって言った。
「ええ、リアム、それは本当よ。今までは貴族だけの専売特許だった魔法が、平民にも使えるようになる法案ができたのよ。あなた達の中でも魔法の才能がある子供は、とてもがんばれば、いつかは宮廷魔術師様にだってなれるようになったのよ」
「ええー!すごい!僕は竜を従える竜の魔術師になりたい!」
「私は風を起こして空をとびたいわ!」
キャッキャ喜ぶ子どもたちの声に心が温かくなる。
(私の夢を、この子達のうちのだれかが叶えてくれる日がきますように)
夢だった宮廷魔術師になるという夢を、いつかこの子たちの誰かが叶えてくれるだろう。
全ての夢を諦めたソフィアは、目の前の子供たちに夢を託す事で、心が救われる思いがした。
「ええ、きっとあなた達ならなれるわ。でもそのためにまず大切なのは文字の勉強よ、ほら、ここは綴りが逆になっているし、ここの計算は一つゼロが多いわよ、集中集中!」
「はーい!!」
そうして授業を続けていると、教室の外がなにやら騒がしくなってきた。
(おかしいわね、お祭りは来週からのはずなのに・・何事かしら)
どうやら少し遠い所で、誰かが大勢が騒いでいる様子だ。
喧騒の音はどんどん大きくなり、どうやらソフィアの小さな教室に近づいてくる様子だ。
「うわあ、すごい! 皆みてみろ、外にお貴族様がいるぞ!!」
生徒の一人が窓を見て、立ち上がって大騒ぎを始めた。
「本当だ、貴族様だ。すごく綺麗! 人間じゃないみたい!!」
「あれ、近所の大人達みんなついて来てる。どうしたんだろう」
子どもたちは授業などそっちのけで窓に鈴なりになってしまった。
「みんな、静かに!」
(一体何事??)
ソフィアは困ってしまって、窓の外の子ども達の指さす方向を見た。
そこにはここには絶対にいないはずの、海の色の瞳を持つ、月光のように美しい銀髪の男が、抱えきれないほどの大きな花束を抱えて立っていたのだ!
(ブライス様!!!!)
心臓が止まるほど、ソフィアは驚いた。
ソフィアの右側が急に温度を帯びて、息ができない。
会いたくて、会いたくて。、夢まで見たあの銀の彫刻のような男が、いたずらっぽい顔をしてそこに、立っている。
胸がとくとくと早鳴って、指が震える。
ブライスは窓にソフィアの姿を見つけると、にっこりと笑って言った。
「探したぞ、ソフィア!!」
ソフィアは大急ぎで教室から飛び出して、ブライスの前に走った。
「ブライス様!!! 一体・・一体どうしてここが分かったのですか??」
家族にすら居場所を教えてなかった。
唯一ソフィアの居場所を知るセバスチャンには難く口止めをしている。
「レイを脅迫・・げふんげふん、いや、説得して君の居場所のヒントだけを教えてもらった。後はシラミ潰しに君の手がかりを探して、やっとここにたどり着いたのが先週だ。逃げ足の早い君を見つけ出すのに三月もかかってしまったよ」
「王太子様を脅迫って・・そんな事までして私を探して、でも、一体どうして??」
すると、ブライスはニカっと、ソフィアの大好きな満面の笑顔を浮かべて、持ってきていた抱えきれないほどの大きな花束をぐいっと差し出すと、
「君に結婚を申し込みにきた」
とそう宣言した。
「おう、兄ちゃん思い切りがいいぞ!」
「フィフィちゃん!! うんっていっておやりよ!」
「うわあ! ロマンチックね!!」
やんややんやと周りが騒ぎ立っている声がようやくソフィアの耳にも聞こえてきた。
どうやらこの娯楽の少ない小さな街のおそらく半数の人口は、ブライスの後についてこの場にいるらしい。
あまりの事にそこに立ち尽くしてしまっているソフィアを真っ直ぐに見据えると、ブライスは言った。
「君が僕の前を何もいわず去ってから、君が僕にとってどれほど大きな存在だったのか今更気がついたんだ。君は何も言わずに僕の前を去ってしまって、僕は君に嫌われてしまったのかなと、そう思うだけで胸が痛くて涙が溢れてくるんだ」
「き、嫌うだなんて、そんな! 私なんかがブライス様のお側にいたら、ブライス様のお邪魔にしかならない、そう思って・・」
ブライスは小さく微笑むと、ソフィアに優しく言った。
「僕の夢を守る為に、君がどれほどの大きな犠牲を払っていたのか、恥ずかしながらレイに教えてもらうまで僕は気が付かないでいた。そんな朴念仁の僕に、レイもセバスも君の居場所なんて絶対に教えない、と教えてくれなかった。本当にごめん。それから、ありがとうソフィア」
「いえ・・」
ブライスは続けた。
「僕はしぶしぶ責任を取るためにここに君に会いに来たんじゃない、僕は君に会いたくて会いたくて仕方がなくて、八方手をつくして君に会いに来たんだ」
「君とつながっていた僕の左側を見るたびに、君が居ないのが辛くて悲しくて、僕の心は張り裂けそうになる。
ソフィア、 僕はもう、君のいない左側にこれ以上耐えられそうにない。僕は君を愛している。ずっと君に、僕の左側に居てほしい」
そしてブライスはソフィアの前に片足をついて、大きな花束をずい、と差し出した。
「僕と、結婚してくれますか」




