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「今日はなんだか変な天気ですね」
「ああ、こういう薄曇りの日にはロクな事がおこらない気がするよ」
研究室から窓の外を眺めていた2人は、不穏な空を眺めながらそういった。
いつものように研究室でブライスが書類に向かい、そしてソフィアがその書類をチェックしながら高級チョコレートの箱をつまみ食いをしていた。
構ってやれない上に、どこにも連れて行ってやれないソフィアに、せめてもとブライスがわざわざ取り寄せてくれるようになったのだ。気の利かないブライスのこの最大限の気遣いに、ソフィアの心は温まる。
(ブライス様って本当にお優しいわよね。ご自分ではチョコレートなんて食べないのに、私が退屈していて申し訳ないだろうからってこんなものまで私の為だけに用意してくださるなんて。
私としてはブライス様の研究室で飽きるほど研究書が読み漁れるし、学生時代の憧れだったブライス様の書類のチェックまでできるから、ちっとも退屈ではないのに)
ソフィアは家庭の事情で、魔術からはもう遠ざかってしまっているが、学生時代は宮廷魔術を目指していたほどには、魔術はいわばソフィアの情熱だ。
ブライスが用意してくれた高級なお菓子をいただきながら、他の雑用をする必要もなく、ひがなこの王国最高の魔術師ともいえるソフィア憧れのブライスの自宅の研究室に入り浸って貴重な魔術書が読めるなど、考えようによっては正直ソフィアにとっては最高の環境である。
しかも隣には、宝石のごとき美貌のブライスが、真剣に魔術と向き合っている。
時々難しい式にあたると、少し右の眉が動いたり、突破口がみつかると指先の動きが軽くなったり。
「できた」
小さなな声でつぶやいた時の美しい輝くごとき微笑み。
(本当に・・ブライス様は尊いわ)
ソフィアは、もぐもぐチョコレートを食べながら、この静かな部屋で、ブライスの頭脳の中で行われているであろう壮大な物語のたった一人の観客になっている気分だ。
だが研究室にソフィアを閉じ込めておくしかないブライスはそれを申し訳なく思ってせめて出来ることをと思ってくれているのだろう。
ソフィアの為に高級な菓子類を用意するだけでなく、花が好きなソフィアの為に、忙しいであろうセバスチャンにお願いして、転移魔法では届けるのが難しい花束などを館まで届けるようにまで、手配してくれるようになったのだ。
大きな花をかかえて館を訪ねてくれたセバスチャンにブライスが礼を言うと、
「問題ありませんよこれしきの事。ブライス様に人間の女性を気遣う心があった事が知れて、本当に安心しております」
「どういう意味だセバス!」
研究所にこもりっぱなしの事なんかよりも、ソフィア的にはブライスと寝室や着替えにお風呂、それに御不浄までも一緒であるという事の問題の方が、未だに大問題で、慣れたとはいえ未だに辛うじて残っている乙女心をゴリゴリと削っていくのであるが、どうやらそこの部分はどうやら何も感じていないらしいのがブライスらしいといえばブライスらしい所だ。
(ブライス様は、はちゃめちゃだけど本当に優しいのよね)
ブライスの破壊的に美しい横顔をチラチラと見ながら、ソフィアが遠慮なく3つ目のチョコレートを口にほうりこんでいたその時だ。




