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ブライスの言葉に、レイは軽く頷くと、空間に緑の魔法陣を指先から紡いで、小さく呪文をとなえて二人に魔術を施した。
二人の体は緑色の炎に包まれて、なにか灰色の光のようなものが二人の周りから焼き切れてゆく。
ぷす、ぷす、ぷす。
「成功・・のようだな。僕の体にまとわりついていた不愉快な魔力は解除されている」
ブライスは隣で腰を抜かしそうになっているソフィアを抱き起こしながら、己の体の周りの灰色の光をパンパン、と叩いた。
満足そうなレイは、ソフィアに声をかけた。
「マーレ子爵令嬢、どうだ? 一度ブライスから離れてみてくれ」
「は、はい」
そっとブライスに背中を向けて、ブライスから離れてみた。
強制力は発生していない。
(やった!!! これでやっとお屋敷の外に出られるし、お友達とも会えるわ、ああそれに御不浄もお風呂も入りたい放題よ! 寝室だって一人で・・)
ソフィアはそう心で思うと、ソフィアの即席サンドイッチを美味そうに食べる屈託のない銀の笑顔がちらっと思い出された。
そして少し、チクリと胸に痛みが走った。
(なにかしら、今の痛み・・あれ・・?)
そう思うまもなく、ソフィアの体は部屋を横切って、ビューン!!と猛スピードでブライスの元に呼び寄せられた。
「ぎゃー!!!」
「おっと」
ブライスは、何事もなかったかのように飛んできたソフィアをガッチリと胸に抱きとめた。
「怪我はなかったかソフィア? レイ、第二層までの解呪は成功しているが、やはりまだ三層に別の呪いが奥に巧妙にかくれている。あと第三層を固定しているのはおそらく僕たちが被ったポーションだ。ポーションの固定を外せばおそらく解呪が可能になる。レイ、これを解析できたら、魔法医学と魔術のマリアージュとして素晴らしい発見だ。早速論文にして、応用活用すべきだ」
「なるほど見事な隠蔽術。一筋縄ではいかないな。さすがだ。古代の呪術は実に興味深い。ポーションの複合摂取によって魔術の固定化は一度論文で理論上は成立されていたはずだ。 魔法塔の御老体にすぐ連絡を取ろう!」
二人は難しい話しを続けるが、ソフィアは今度こそ完全に腰が抜けてしまってそれどころではない。
ブライスはおそらく新発見に熱中してソフィアの存在など忘れているが、事故とはいえソフィアはブライスの胸にしぎゅっと抱きしめられたまま、ブライスは新しい発見に興奮してソフィアを抱きしめる力が強くなってきている。
(やだ、もう本当に恥ずかしい・・なんだかブライス様の体からユリみたいないい匂いがする・・ちょっと体温が高いのね、ブライス様・・・)
ブライスの体温の高さと香りに、異性耐性のないソフィアの心臓はもうバクバクと異常な音をたてて限界だ。
もう乙女としてのメンタルがほとんど限界のソフィアの耳に、だがとんでもない言葉がきこえてきた。
「非常に興味深いな、第三層の解呪にはとりあえず呪いに掛かっているお前の肉の一部をマーレ子爵令嬢に食わせる方法が手っ取り早いと思うが、どうだろう? 小指一本くらいで足りると思うが」
硬直している状態のソフィアを胸にしっかりとまだ抱いたままで、ブライスはレイに真剣な声で答えた。
「ふーん。レイ、それは今の所最善の方法だ。だが右手の指の肉を食わせた場合と、左手の肉を食わせた場合の解呪の効果について、まず検証する必要がある。一昨年の他国の魔術学会の見解では、生肉の場合と調理加工された肉の場合では・・」
(体温が・・体が密着して熱い・・ああ本当に素敵、ブライス様の横顔・・ ? 何? 人肉を食え? ええ??)
ほとんど夜といって過言ではない時間から、さんざ振り回されたソフィアの精神はもう限界だ。
色々と己の頭上で繰り広げられる理解不能な会話に、乙女心の限界を迎えていたソフィアは、おもわず叫んだ。
「お前ら・・いい加減にしろーー!!!」




