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(ええっと、まず王宮の総務に寄って、それから魔術研究所の郵便物を持ってかえるでしょう、それから王立図書室への返却期限の図書の返却、ブライス様の本の延滞届け二週間目と、これまたブライス様の今日ぎりぎり速達で出さないと期限にまにあわない郵送書類の提出・・そろそろ叱られるわね)
ここの魔術研究室の魔術師達は非常に優秀な魔術師達だ。
だが、魔術師という生き物は実におおらか・・というか、世間一般で言う所の常識というものにとらわれない種類の人間が多い。
こと、期限を守る・きちんと部屋を掃除する・夜は寝る、食事をする、などという人間としての生活規範に即する事が苦手な連中が多いため、ソフィアの仕事である事務補佐の仕事は多岐に渡るのだ。
そしてその世間的な常識にとらわれない魔術師最たるケースは、非常に頭の痛い事に、ここの所長であるブライスだ。なんでも人体編成の魔術を研究しているという噂があるらしい。
ぎりぎりで提出した郵便物の宛名をチラリと見た王宮郵便課のおばさんが言った。
「ソフィアちゃんおはよう。ああ、またブライス様の速達? 危なかったわ、本当は受付を締め切っているけれど、今日は馬車の到着が遅れているの。なんとか最後の便に紛れ込ませてあげるから、早く出しなさい。 ほら、ついでにこっちに魔法研究所の郵便の束が二束あるからもっていきなさい」
「よかった、助かったわ! おばさんいつもありがとう。あ、そうだこれ、よかったら外国出張にいっていた魔術師様からおみやげでいただきたの。一つどうぞ」
しっかりもののソフィアは事務能力の非常に低い魔術師達からずいぶんと頼りにされており、こうして出張があるたびに時々めずらしいお菓子やらをもらって、それをいつも迷惑をかけている郵便課や司書など、あちこちにおすそ分けをしている。
その日のうちにださないといけない郵便の速達や、返却期限ぎりぎりの本の返却ばかりで各所に迷惑をかけがちな魔術師の事務補助として、こうした小さな交流と根回しはかかせない。
珍しいお菓子に相好をくずした王宮郵便課のおばさんは言った。
「いつも悪いわね、ありがとう。そうそう、ソフィアちゃん郵便物にはしばらく気をつけるんだよ。ここ数日宮殿ではいろんな魔術学校の先生やら、治療魔法師やら、宮廷魔術師様の元に、悪質な魔法の入った手紙が来ているんだとか。うちの郵便課にも今朝、警戒のおふれがでてたのよ」
「へえ。魔術師様達が何か恨みでも買っているのかしら」
おばさんは秘密の話しをするように、少し声を潜めて言った。
「それがどうもね、今度魔法に関する大きな法案が立法化に向けて動いているだろう? それへの嫌がらせらしいんだよ。立法化に反対する連中がやっているらしくてね。あんたの所の所長のブライス様なんて法律の草案を出している中心人物だろう、そろそろ宮殿以外にも被害がでるかもしれないよ。気をつけなさい」
「ありがとうおばさん、気をつけるわ」




