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魔術師様の失敗 〜呪いに掛かって美形の魔術師様と離れなくなっちゃいました??〜  作者: Moonshine
それぞれの事情

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それ以来、ソフィアがわかりにくい秩序に基づいて部屋の整理を申し出れば、ブライスは異議を申し立てる事はなかったし、むしろ、「床が見えるようになった」と笑ってソフィアの整理を手伝うようにすらなった。


ブライスは自分の中のルールを無視されて整理整頓されるのは嫌だったらしいが、家が綺麗になる事自体は不満はないらしい。


「本当にいいんですか? 私が好きに整理しても」


手がつながっている状態なので、棚を整理している最中はどうしてもブライスにも協力をしてもらう必要がある。


 ソフィアにとってブライスの仕事の邪魔をするのは本意ではないので、最初はブライスの手間が最小ですむようにと、計画書を用意して、一つ一つブライスに整理の計画を説明して、棚までブライスに来てもらって整理していたが、最終的にはブライスから勝手に整理してもよいとお墨付きをもらうまでになったのだ。


「ああ、君は僕の頭脳を理解してくれる稀有な存在だ。そして僕の頭の中を何よりも大切にしてくれるから、僕の研究の邪魔にならないよ。実家のわからずやのメイドみたいに押し付けがましい見栄えだけの整理はしないからね。・・それに、君は僕から離れられないから、僕の研究を盗むこともしないだろうしね」


そこでソフィアは本棚の整理の手を止めて、やっと思い至る。


「・・まさか、あの研究所の嵐の後みたいな状況ってひょっとして」


ブライスはパチン、と片目をつぶると言った。


「ソフィアは本当に賢いね。そうだよ。泥棒対策が一つ。片付けがめんどくさいのが二つ。それから、僕に寄ってくる虫みたいな連中の虫除けが三つ。まあ、片付けが面倒くさいのが一番の理由だけどね。君にはそれで事故が起きて迷惑をかけちゃったけど」


「ははは・・虫除け・・そうですね、第三王女様がいきなり前触れもなしにブライス様の研究室に突撃してきた事もありましたもんね・・あの研究所の部屋を見たら流石の王女様も退散するしかなかった様子でしたが」


ソフィアは遠い目をした。


一度夜会で出会ったブライスに一目惚れをした第三王女が、権力を盾に勝手に関係者以外立ち入り禁止であるブライスの研究所の部屋に勝手に入って、留守のブライスを待ちたいと突撃したきた事があったのだ。


だが突撃したはいいが、王家の箱入りのお嬢様にとってブライスの嵐の後のような研究室の酷さは耐えられなかったらしく、ブライスの到着を待つことなくそのまますごすご退散した事件だ。


国家機密クラスの魔術の研究がゴロゴロとしているブライスの研究室。

有象無象の様々な連中がその成果物をなんとか横取りしようと画策してくる上に、宝石のような輝く美貌のブライスに惹かれて、なんとかお近づきになりたいとグイグイやってくるご令嬢達。


(なるほど・・ただ研究に没頭したいブライス様にとっては、邪魔ばかりで結構たまったものじゃないわね)


ソフィアはうげえ、という表情をしていたのだろう。ブライスは笑って、


「そうなんだよ。魔術師達や女性達は僕の顔を見ると、まるで肉を前にした犬のような顔をして、僕の後を追っかけてくる。僕はただ研究に没頭したいのに、やれ僕に恋したと、手紙だのお茶会だのと僕の時間を奪う事ばかりしてくる。僕より身分の高い女性からの手紙は返さないと失礼になって実家に迷惑がかかるから、返事を自動で書いてくれるオートマタを開発した事もあるんだ、あの人形がそうだ」


そうやってブライスが指差した先には、子供ほどの大きさの、執事の人形が埃をかぶって鎮座していた。


「僕が研究している人体編成の魔術の研究の応用だ。人体編成の方はまだ夢のまた夢だけど、こっちの方は魔力を入れたらまだ多分使えると思う。でもそうこうしているうちに僕の毒殺未遂事件が起きたりして忙しくなってきちゃってね、そうおもちゃに構ってられなくなったんだ。そういう訳で、ソフィアは僕に恋なんて絶対にしないでね!」


ヘラヘラと笑うブライスの言葉に、なぜか、ずきり、とソフィアはひどく心が傷んだ気がした。


(なんだろういまの気持ち)


「ハハハ、私みたいな貧乏子爵の娘が、ブライス様に恋だなんてとんでもない!! それにしてもお食事をいつも転移魔法で用意されているのも・・面倒くさいとかそういう理由よりも、もしかして、それが関係していますか」


ブライスの毒殺未遂は相当大きな事件として報道された。食事の中に、魔力を吸い尽くす毒が仕込まれており、ブライスは2週間も生死の境をさまよったのだ。


ブライスはソフィアのそれには応えず、ただ肩をすくめた。


(こんなに無駄にお美しいブライス様が、こんな暮らしをしているのにも、メイドも誰も人を側に置かないのも・・色々理由がある様子ね)


黙々と部屋の整理を続けながら、ソフィアは少し同情しながらそんな事を考えていた。



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