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そんなこんなで、当初はどうなるかと思われていた二人の暮らしは以外な事に、割と順調に続いていた。
(ともかく、いつまでもこんな嵐の後のような部屋にずっと住むわけにはいかないわ・・でも手がつながっている状態で、一体この偏屈な方のお部屋をどうやって整理すればいいのかしら)
当初は一体どうなるかと心配していた二人の暮らしだが、ブライスは大変な変人だが、親切な人間のようだ。
両手の使えなくて髪を結ぶのに苦労しているソフィアの髪を、
「じゃあ僕が結ってあげるよ」
と魔術を展開してわざわざ結ってくれたり、気温が寒くなってきたらすぐに気がついて、羽織ものをソフィアの肩にかけてくれる。
この気遣いを御不浄の時や着替えの時に発揮してくれたらと思うのだが、そういう部分の意識については完全に落魄しているらしい。
階段を歩く時は淑女にそうするように、必ず手を取ってくれる。
手がつながっているという以外は特に暮らしに不満はないし、むしろこんなに丁寧に扱ってもらえて感謝をしている。
(だけど、やっぱりこの嵐の後のような部屋に住むのはいただけないわ)
大嵐の後のようなこの家の中は、本やら書類やらであふれかえって床も見えない、壁も見えない。
種類を問わずにいろんな本や書類やポーションがあちこちに山積みの中、うっかり紙を踏んづけたら大変貴重な資料だった、などという事もしょっちゅうだ。
紙ならまだしも、この間などポーションを作る時に必要だとかいう昆虫の死骸のぎっしり入っている瓶をひっくり返してしまって、ソフィアの心臓が止まる所だったのだ。
「なんだソフィア、ちっとも怖くないよ。ただの虫の死骸だよ、君を襲ったりしないよ」
(それが怖いのですが・・)
どうやら親切なのだが、人の機微にはこの男、実に疎い。
おそらくブライスの過去のメイド達は、しびれを切らせて掃除と整理整頓を強行して、ブライスの怒りを買ったのだろう。
困ったソフィアは目の前の嵐の後のような研究所の部屋を前に、徹底的に観察をはじめた。
なにせ時間だけはあるし、どうせブライスが研究所にこもっている間、その隣で座っているしかない。
メイド達とちがってブライスの研究に尊敬のあるソフィアではあるが、ブライスの研究の邪魔はしたくないが、こんな竜巻が襲った後のような家に住むのもゴメンだ。
そうしてじっとブライスの隣で部屋を睨みつづけて数日後。非常に分かりづらいが、どうやら見えにくい秩序にもとづいてこの部屋はちらかっている事に気がついた。
それが証拠にブライスは嵐のような状態の部屋でも、ひょいひょいと自分の必要な書類や書籍は探し出せる。
どうやら法則があるらしい。
そうブライスの部屋を観察をはじめて3日目。
ソフィアは、ついにブライスの部屋の嵐には一定の法則がある事に気がついたのだ!!!
「なるほど・・!!! だから、このセクションには本は素数の巻数しか起きたくないのですね。あちらは過去三年の資料で、まだ手付かずのものの上に最新のものを重ねたから、動かせない。違いますか」
ずっと静かに座っていたのに、急に発したソフィアの言葉に、ブライスはまるで雷が落ちたように目を丸くして驚いた。
「すごい・・うわあすごいよソフィア、君は僕の頭の中が理解出来るの?? まさにその通りだ。気がついたの、君がはじめてだ」
嬉しくなったソフィアは続けた。
「でしたらこちらにはみ出ている紙は全部ただの反故紙ですから処分してもいいですね? あの山はただの未分類で、こちらは時間がないから時系列に順においているだけ、でもここからここまではあの論文にでていた参考文献の山ですね。そのままにしておきましょうか」
ソフィアは畳み掛けた。
なにせぎっしり昆虫の死骸のつまった瓶をひっくり返すのなんて、虫が嫌いなソフィア、生涯二度とごめんなのだ。
「構わないよソフィア。君が何をしているのか分かって整理してくれるなら、僕には何も言う事はない」
そんなわけでともかくソフィアは己の心臓のためにこの汚部屋を整理したかっただけなのだが、ブライスはソフィアが自分の頭脳の一部でも、見事解読してみせた事を、飛び上がらんがばかりに喜んでくれたのだ。




