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ギシギシと音のする飴色の立派な木の階段を登ると、ブライスの寝室は二階の奥の様子。
この屋敷は重厚な作りで、掃除さえ行き届いていれば、伯爵家のご夫妻がお住まいになる館として全く遜色のない立派なものだが、全く手入れをしていない様子で油を失っている。
ブライスががちゃりと真っ暗な部屋の一つをあけると、これまた一段とめちゃくちゃな部屋が現れた。
足の踏み場どころか、ベッドルームだというのにベッドが見当たらないほどの本と書類の海だ。
ソフィアは一旦ため息を飲み込むと、言った。
「・・ブライス様、ここは寝室ですよね、どこにベッドがあるのでしょう」
「ああ、えーっと、多分ここらへんだよ」
ブライスがパタパタと足の踏み場もない部屋の一角に積み上げられていた本の山を押しのけると、なんとか高級な布らしきものが見えてきた。
どうやらここがかつて、ベッドだった場所らしい。
おそるおそるソフィアがベッドらしきその場所にそっと腕を預けてみると、腕はベッドにずぶずぶと、非常に深く沈んだ。もともとは最高級のベッドであることは間違いない。
(うわあ、すごくふかふか・・寮の硬いベッドとは全然違うわ・・)
そうしてそっと腕を沈ませてベッドの感触を楽しんでいると、バサバサ!と大きな音をたててベッドの上にちらかっていた本の山が地面に崩れ落ちた。
「ご、ごめんなさいブライス様! えっと!!」
(一度僕が研究所に行っている間に大切な研究を触られて、整理整頓された事があったんだ)
先程のブライスのドスの利いた声を思い出してソフィアは真っ青になる。
「大丈夫だよ、ここの資料はもう使ってないものばかりだから。でも、研究室のものは勝手に触らないでね」
そうブライスは言うと、何事もなかったかのようにサッサとベッドの上の本を床に薙ぎ払って、おもむろに胸をはだけてシャツを脱ぎだした。
「ギャ~~!!! ブライス様!!!ちょっと!!!」
「あ、そっかそっか、君は女の子だった。ごめん。ちょっと向こうむいていて」
(な、名前を認識していなかったまではいいわ。でも・・・君は女の子だったか、だなんて・・あんまりだわ、ブライス様ひどすぎる・・!!)
何も気にせずシャツを本格的に脱ぎだしたブライスにたまりかねて、ソフィアが半泣きになってその場からドタバタ走って逃げようとすると
「きゃあああ!」
ソフィアの左手にかかっている術式が発動して、青い光が暗い部屋にピカ!と発生した。
そして次の瞬間グン、とものすごい力にひっぱられて、なんと、ソフィアはブライスの半分はだけているシャツの胸に自ら飛び込んでしまったのだ。
「おっと危ない」
そう言って、全く動揺する事なくソフィアを抱きとめたブライスは、そのままシャツを脱ぎ捨てると、部屋の隅っこに積まれてあった上質の寝間着にさっさと着替えて、楽しそうに笑って大の字になって、ベッドの上でボンボンと跳ねた。
「ハハハ、この部屋のベッドで寝るのは久しぶりだ!」
軽く本日何度目かの目眩を覚えたソフィアは、疲れ果てて言った。
「・・・ブライス様、今までは一体どうやって寝てたんですか」
ブライスにひっぱられてベッドに腰掛けたソフィアにブライスは言った。
「ん? 大体研究中に寝落ちするから、そのまま机につっぷして寝るかな。椅子を二つ並べて横になる事も多いかな。よくわからないよ 」
(あ、頭が痛くなってきた・・)
そして、ソフィアはようやく重大な問題に気がついた。
(ん? ・・ちょっと待ってよ。ブライス様はここでお休みになるみたいだし、この部屋にはベッドは一つしかないし、私はどこで・・客間?? 無理よね手がつながっている状態で。え? えっと??」
嫌な予感に口の端がピクピクと痙攣しはじめたソフィアの心配をよそに、ふああああ、と大きなあくびで、ブライスは言った。
「あ、僕は寝相は良いみたいだから君を蹴り倒す心配はないよ、ソフィアも疲れただろうから、早く寝るといい。そっちの枕を使っていいよ、貴重なユニコーンの毛でできたいいやつなんだ。君に譲ってあげるから。じゃあお休み~」
そういうと次の瞬間には寝息をたててぐっすり眠ってしまった。
(やっぱりー!!!!)




