第五話 門出
受験を決めたノベナガ。受験勉強に全集中し、本番への覚悟を決める・・・
入学を決めた日から2日後。ヒベヨシは入学試験に向けてノベナガをビシバシ鍛えていた。
「お前が入りたいと思った学校だ、死ぬ気で勉強しろー!」今やこれが口癖がになったヒベヨシは朝から晩までノベナガに知識を叩き込んだ。「半径六センチの円の四分の一の面積と直径十四センチメートルの円の五分の一の面積、どちら面積が大きい?」「戦国時代に小田原城を拠点にして活躍した大名家の名前は?」「英文であなたは今朝あなたの父親の車を洗いました、はなんと書く?」こんなことを二日間続けただけで、ノベナガは専門学校の過去の模試で合判B判定を取るまでに至った。ノベナガは必死で勉強した。普通の受験生が何年も前から入念に準備(勉強)をして受けるものを、ノベナガはわずか二日間でその領域にたどり着いたのである。ヒベヨシは、ノベナガが行くというと、何も言い返さなかった。ヒベヨシなりに納得したのかもしれない。それによってヒベヨシは鬼教官に変貌した。ヒベヨシは何度も「受験に絶対はない」といった。しかし、模試だけではどれほどのレベルなのかわからなかった。なのでヒベヨシに「東京舎のレベルはどのくらいなのか」と聞いてみた。すると、ヒベヨシは「開成中学校の補欠合格レベル」と言うではないか。ノベナガでも流石に開成のことは知っている。「男子校の御三家」「東大合格者連年全国一位」この肩書きだけで十分だ。しかし、武専の東京舎に受験するこの中には開成の合格をもらった後に挑む人もいるそうだ。それを聞きたくはなかった。こんな話を聞かされては、本気で合格できるか怖くなってきた。しかし、ヒベヨシは「逆転合格がある」と言った。実は武専の入学者選考には「実技」があると言うのだ。しかし、受験生の親も、先生も受験生に実技のないようは絶対に伝えない。兄弟姉妹でさえもだ。頭脳明晰でも実技で落ちる人もいるみたいだ。実技が何かは本番までわからない。しかし、体育系なのは確かだ。そのため、ノベナガは勉強と両立してジムに通い、ランニングマシンにスクワット、その他にもなんとか筋肉を鍛えようと奮闘した。そんな日々は続いて5日後。4月5日の本番前日となった。勢いで始めた中学受験。それでもノベナガは努力し、今日に至る。ここで合格すれば、ノベナガの人生は大きく変わる。会場までは遠いので、早めに起きて行くそうだ。前日は一時間ほど復習をし、早めに寝た。緊張で目がギンギンに開いていたが、三十分もすれば眠気が出始め、眠りについた。
ノベナガは夢を見ていた。ノベナガは真っ白な空間に立っていた。向こうには学校でいじめてきた同級生達がいる。ノベナガと同級生達との間には透明な壁があるようで、同級生達はノベナガに近づきたくても近づけないようだった。同級生達はノベナガに向かって何やらいっているが、ノベナガにはないも聞こえない。そうだ、もう俺は自分を隠さない。俺は、俺の意思で生きる。いつの間にか、同級生達の方は赤黒い空間になっていたが、ノベナガの方は先ほどと同じく、真っ白な空間だった。ただ、向こうに黄色い光が見える。ノベナガは振り向き、そこへと歩き出す。もうノベナガの覚悟は決まっていた。自分は、彼らとは違う場所に行くんだ。そう思った瞬間、夢から覚めた。時計は三時二十五分。ノベナガは着替えと朝食を済ませ、三時四十五分には玄関に座っていた。ノベナガは覚悟を決めていた。仏壇に手をそなえ、車に乗った。もはや、恐れるものは何もない。ノベナガの前にあるのは受験だけだった。この日が、ノベナガの人生を左右する門出となるのだ。




