第四話 苦痛の過去
ノベナガはそこに行くべきか悩む。その時思い出したのは、小学校生活の日々だった・・・
「行かせたくなかった・・・って、どういうことだよ?」ノベナガは問う。あそこまで追いかけてきたからには、よほどの理由があるに違いない。しかし、ヒベヨシから帰った言葉はそんなものではなかった。「どういうこともこうも、俺はお前を「あそこ」に行かせたくないからだ」拍子抜けだ。あんだけ追いかけ回しておいて、帰ってきた言葉が、これ?しかし、ヒベヨシの言い分もそれだけではなかった。「お前は「あそこ」に行ってはだめなんだ。俺は、お前が、「あいつみたいになるのを避けたいんだ・・・」そういうとヒベヨシは泣いているのか、怒っているのか、どちらかわからないような顔をした後に、床に崩れ落ちた。ヒベヨシがそこまで言うのなら・・・とノベナガは思った。しかし、頭の中で別の声がした。(・・・本当にそれでいいの?)確かに、俺は小学校の平凡な生活に飽き飽きしていたんじゃないか?(・・・中学もそうなりたいの?)ノベナガは悩んだ。小学校は、平凡な場所であったと同時に、苦痛を感じる、嫌な場所でもあった。周りから馬鹿にされる日々でもあった・・・
遡ること六年前。ちょうど、入学式が終わった頃だった。ノベナガの集落から麓の小学校に通う子は、ほとんどいなくて、ちょっと不安だった。でも、その時の小学校は、楽園のように見えた。周りにいる子全員と仲良くなって、楽しい学校生活を送れる。そんな場所のように見えた。その翌日の、最初の登校日。緊張でカチカチになって教室に入った。すると、どうだろうか。周りの子もみーんな緊張していた。その時ノベナガは、不安だったのは自分だけではなかったのだっと、安心した。小学校生活が一ヶ月経った頃には、ノベナガには友達がすでに十数人もいた。授業も、みんなで協力しあって、切磋琢磨した。小学校一年生の日々は、とても楽しく、安らぎのひと時だった。
しかし、四年後の小学校四年生では・・・。三年生から社会が始まり、ノベナガの大好きな科目となった。六年生でやる予定の歴史も、この頃から自分で学び始めた。そうしているうちに、一年生の頃は同じぐらいだったみんなの力に、差がつき始めた。そんな日々の中で、次第に、みんなだらけていくようになった。そんなある日だった。その日は社会があり、ノベナガはわかることだらけだったので、率先して発表した。そんな感じで、発表を3回した後だった。何やら周りのみんなが、自分もほうを見て、こそこそ話している。「真面目くん」とか、「調子乗ってる」などと聞こえた。ノベナガはなんのことかわからず、真面目に先生の話を聞いていると、ノベナガの左の席の子が、紙を引き出しから出して、ノベナガに見えないように何かを描き始めた。ノベナガはきょとんとして手紙の方を見ていた。すると、左の席の子が、紙をその左の子に渡し始めた。その子も何かをかき、また左の子に渡した。それが続いてゆき、とうとうノベナガの前の席の子がノベナガに紙を渡した。ノベナガはサインでも書き合っているのかな、と思い、紙を開けてみたそこにはサインではないが、文字がぎっしり敷き詰められて書いてあった。
そこには「真面目くんじゃん」「授業に集中するとかダッサw」「前からウザいんだよ」「頭良い子ぶんないでくれる?」「お前は黙って座ってれば良いんだよ」といった文が書かれていた。ノベナガはショックを受けた。さっきまで書いていたのは、これだったのか?ノベナガはとても悲しくなった。しかし、自分でもわからないことにヒベヨシにそのことを伝えたいとは思わなかった。その日から、些細ないじめが始まった。水をかけられるわけではないが、トイレ掃除中、二人がかりでドアを押さえつけられて個室に閉じ込められたことがあった。他にも休憩時間前までサッカーを一緒にやっていた男子達と一緒にサッカーをやろうと思ったら、みんなが自分から遠ざかっていった。そして、あの手紙のようなものを社会のたびに渡され続けた。わけもわからず一人で抱え込んだ。寄り添ってくれたのは、親友で、同じ野球チームに入っていたイエヤーズだけだった。そんなことがあってからは、自分を目立たせないようにした。どんな時も、一人ついていって、自分で考えて行動することはほとんどなくなった・・・
そんな日々が中学校でも続くのだろうか?ノベナガがいく中学にはいじめてきた奴らもいる。またおんなじことが続くのか?ノベナガは手紙をみた。武将育成専門学校・・・。聞いたことも見たこともない学校。でも・・・。ノベナガはあの日々を思い出す。その時、ヒベヨシが立ち上がった。しかし、もうさっきのように追いかけては来なかった。ただ、ノベナガに一つ、質問をした。
「お前は、行きたいか・・・?」ノベナガは一度考えた。そしてその後力強くいった。
「俺はそこに行く。絶対に」




