第二話 学園からの誘い
平凡な日々を過ごすノベナガ、しかし、何やらヒベヨシの様子がおかしい。そんな中、ノベナガに、一通の手紙が届き・・・
十二年後の春休み、十二年前この家に預けられた少年ノベナガは春の陽気に身を任せようと自分の部屋を出て、玄関へ向かった。しかし、足は玄関先まで歩かせておいて、いざドアを開け、外へ出ようとするとくるりと向きを変え、部屋へと戻ってしまうのだった。部屋の隅に投げていた布団を手に持って、ノベナガは床に倒れ込んだ。特別眠いわけではない。しかし、外に出る気も、下に降りて朝食を食べるつもりもさらさらなかった。小学校生活はマイペースだった。大好きだった野球の練習は春休みに入ったことによってなくなった。机の上を見ると、地元の公立中からでた春休みの宿題が乱雑に置かれている。中学校生活も特段やりたいことはなかった。小学校では成績は社会と体育以外平均的な成績だったし、修学旅行でも特別思い出は作れなかった。
下のキッチンから叫び声が上がった。こんなの、もう慣れっこだ。いつもヒベヨシは魚を焦がす、しかもそれにあわててあたふたしているうちに魚を弾いてしまい、火傷する、というのが毎朝のルーティーンだ。ヒベヨシとはノベナガがこの家に来てからの付き合いだ。十二年前の夏にこの家に預けられたらしい。両親の顔をはっきりと覚えているわけでもない。ヒベヨシは父親と親友だったらしい。しかし、どれもこれもヒベヨシから聞かされた話ばかりで、ノベナガがそれを確実だと思える証拠はない。ただ、これだけはわかることがある。それはヒベヨシは中学校に心配があるということだ。ノベナガがいつも中学校について話す時、「まだ気づいていない」という安堵の表情が浮かんでいるからだ。ヒベヨシにそのことについて聞いてみても、「何も知らない」の一点張り。結局、何がそんないに心配なのか、わかったことは一度もない。
「ノベナガ〜!朝ごはんできたぞ〜!」ヒベヨシの声がする。「わかった〜」と返事をするが、おそらくこの返事をしている人の中で本当にわかっている人は、きっとごくわずかだろう。そうはいうが、お腹が空いているのは紛れもない事実。結局ノベナガは下へと降りていくのだった。下に降りると、ヒベヨシが椅子に座って新聞を読んでいた。ヒベヨシは「冷めないうちに食うんだぞ」と言い、また新聞に目を戻した。ノベナガは椅子についてご飯を食べ始めた。思った通り、魚は黒焦げだったが、いつものことなので気にせず食べた。しかし、今日は何やらヒベヨシの様子がおかしい。不自然にソワソワしてる。ずっと玄関の方に目を走らせている。ノベナガは気にせずご飯を食べようとしたが、その時、玄関から軽いものが落ちたような音がした。ノベナガは、ヒベヨシの顔が一気に青くなるのを見逃さなかった。ヒベヨシはものすごい速度で立ち上がり、玄関に走って行ったが、好奇心が出てきたノベナガは野球部で鍛えた持ち目の足の速さで、玄関に落ちていた一通の手紙を手に取った。ヒベヨシが固まっているのをよそに、ノベナガは手紙を開いたその手紙には、「ジャパン武将育成専門学校から」と書かれていた。




