第一話 闇夜の中の再会
真夏の夜に一つの家に届けられた赤ん坊ノベナガ。平凡な毎日を送っていたが、十二年後のある日、ある一通の手紙が届く。その内容は・・・
ある真夏の夜、都心から離れた岐阜県の山奥にある集落では、最後の家があかりを消したところだった。この暑い夜にわざわざ外に出ようとするものなどただの一人もいなかった。蝉の鳴き声は集落全体に響いていた。光に群がってくる蛾は群がるものが何もなく、ただ空中を静かに飛び回るだけだった。時計のはりが十二時に止まった時、集落にはついさっきまでありもしなかった霧が立ち込めていた。辺りは真っ暗でさらに霧が出たことで何も見えなくなっていた。まさか集落の一本の道路に男二人が音もなく現れたことなど、誰も知らない。一人は片目に十字の傷がついており、もう一方の男は喉元や頭に、古い傷があった。一人が手に丸い物体を持った後、それを地面に投げた。するとたちまち霧は晴れていき、それと同じ瞬間、一軒の家の明かりがついた。男達は確信したような、勝ち誇ったような顔になり、一つの荷物を持って、その家に向かって行った。
その家につき、男一人がドアをノックしようとした、まさに、その時だった。ノックする前に家のドアは開いた。いや、相手いたという方がいいかもしれない。何せ先ほども、その前も、ドアはずっと開いていたようだったからだ。そのドアの隙間から、一人の男が顔を覗かせた。その男はやってきた二人を見て、ひどく驚いたようだ。男は怒ったように話始めた。「なんでここに来た。俺はもう「あれ」には関わりたくはないんだ」そう言って男はドアを閉めようとしたが、顔に傷のついた男がドアを掴み、それを阻止した。「ヒベヨシ、「あれ」のことなら、安心してくれ、「あれ」にはもう怯えなくてよくなる。」ヒベヨシはそれを聞いて衝撃を受けたようだ。「怯えなく良くなるとはなんだ?「あれ」は?どうなったんだ?イエヤーク?」喉元の傷に手を当てながら、イエヤークは言った。「結果的にいうと、死んだ」それを聞いた瞬間、ヒベヨシは目を見張った。あまりに驚くあまり、目が飛び出すのではないかと思う。「死んだ、だって?「あれ」が?「あいつ」が?まさか!」「そのまさかさ」もう片方の男、サナガは言った。一瞬、三人は沈黙した。しかし、その一秒後にはまた話し始めた。「だが、悲しい出来事が起こってな・・・」そういうとイエヤークは落ち込み始めた。ヒベヨシは疑問に思ったが、サナガの発言がその疑問に答えてくれた。「ノベナグが、死んだ・・・」ヒベヨシは固まってしまった。しかし、サナガは話し続ける。「そこで、ある問題が起こってな・・・ノベナグは奥さんが去年病気で亡くなったろ?それでノベナグが死んだらその子の世話をするものがいなくなってしまったんだ。」ヒベヨシは「なんだかまずい方向に話が向かって行ってるぞ。」という顔で二人を見つめていた。サナガが口を開く。「それでなんだが、ノベナグの息子を・・・引き取ってくれないか?」ヒベヨシに衝撃が走る。「引き取る?俺がか?」「そうだ、俺は学園が忙しくなるし、イエヤークはすでに息子がいて・・・」「理由を聞いてるんじゃねえ!」ヒベヨシが怒鳴る。「いいか?俺はどんな理由があろうとノベナグの息子を引き取ろうとは思わないし、ノベナグと同じ道を歩んでほしいとも思わねえ、だから俺は・・」「行き先がなくなって死ぬかもいしれない親友の一人息子を引き取りたくはない。ということか?」サナガにすっかり話を持っていかれ、ヒベヨシは口をパクパクさせていた。二人はヒベヨシが決断するまで帰らないつもりだ。
「わかった!その子は俺が引き取る!」とうとうヒベヨシは覚悟を決めた。「でも!」サナガが「よかった」という顔をして口を開くのを阻止してヒベヨシが話し始める。「その子は俺が育ってきって、学園には絶対に入れさせない!これでいいか!?」サナガはヒエヤークと目を合わせくるりと背中を向けて人気のなく、霧がかかり始めた道路を歩き始めた。「いいか!絶対だぞ!」ヒベヨシが念を押すと、二人が振り返り、同時に話した。「できればな」そして二人の男はゆっくりと霧の中へと消えていった。後に残されたのは、玄関先で立ち尽くしているヒベヨシと、ヒベヨシが抱えている赤子だけだった。




