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第55話 目標地点

 ヴェロニカを手伝うと腹を決めた俺は、風花様と横須賀を目指していた事を告げ、その探索をいっしょにしてもらう事にした。もうこうなったら北米の力でも何でも使って、風花様の志を遂げてやるんだ。そのためには俺がうまく北米をコントロールしないとならない。


「本国にも旧米軍の資料を当たらせているが、横須賀基地にそうした施設があった記述は発見出来ていない」ヴェロニカが険しい顔で俺にそう言った。

「ですが……あの時、デリバリーカプセルのAIは確かに到着候補として『横須賀米軍基地跡地』って……あーっ。ヴェロニカさん。多分これ、旧米軍の資料見てもダメじゃないですか? 候補地は『跡地』って……」

「そうか。旧米軍基地が機能しなくなった後に設定された候補地と言う事か! だが一体誰がそんな設定を?」

 

 ヴェロニカさんによると、横須賀の米軍基地は、先の大戦のかなり早い段階で叩かれている。旧来から締結されていた日米同盟が破綻し、極東の離れ小島となった基地はそんなに長くは持たなかったのだ。だが、その後北米は一つにまとまって勢力を盛り返し、東京都心や横浜などの主要都市が核攻撃で吹っ飛ぶにおよんで、須坂はあらためて北米と停戦したのが二百年以上前らしい。多分、それでもイブ・メイカーとガーデンの開発研究は秘密裏に進められていたに違いない。


「だが……それだと手掛かりがないな。捜索するにしても範囲が広すぎる」

「そうですね。せめてあの脱出時に使ったカプセルがあれば、中のプログラムから位置座標が判るかも知れませんけど」

「そうか鏡矢。お前と風花が乗って来たものは、伊豆下田と言うところにあるのだろう? 早速皐月に拾いに行かせよう」

「お願いしますヴェロニカさん。あと……横須賀以外だと、第三台場が候補だと考えていたんですが」

「それは……一応須坂の管理下だし、今すぐは難しいな。護衛空母が来てしまえば、力ずくで制圧出来るだろうしせねばならん。だが、それでは遅くなる」

「護衛空母!? かなり物騒ですけど何でまた?」

「ふん。敵は須坂だけではないしな」

 そこまで言ってヴェロニカさんはそれ以上話してはくれなかったが、何となく判る。北米は須坂だけじゃなく、全世界を相手にイブ・メイカーで覇権を唱えるつもりだろう。


 それはそれで確かに風花様が言っていた人類のリセットに繋がるのだろうとは思うのだが……俺はそうはならないかもという、一抹の不安をぬぐえなかった。


 ◇◇◇

 

 カレンダーがもう四月になる頃、足も直ったマイカが進さんといっしょに高崎に到着した。これで憂いなく作戦を進められる。正直、ガーデンが浮上してくるまでそれほど期間はないはずだが、千早の情報では、もう来週には北米船団が相模湾に到着するらしい。そこで須坂の検疫を受けてから東京湾に入る予定だ。だから私達もそれに備えないと。


「風花。どうやら町田やヴェロニカは、横須賀のあたりをウロついているわよ」

「ああ千早。それじゃ連中、やっぱりガーデン潜入を目論んでる? 鏡矢が頑張ってるのかな?」

「そうね。でもそっちは私達ではどうにも出来ない。私達は私達の作戦を遂行するわよ」

「うん。でも……うまくいくかしら」

「この後に及んで弱気な事言わないでくれる? もうサイは投げられちゃってるわ。軽井沢のなっちゃんとも連携済だし。後は……鏡矢君のお父様に頑張って貰わないとね」

「それは大丈夫。あの人とっても頼りになるから。さすがは鏡矢の育ての親だわ」


 ◇◇◇


「ほう。大したものだな鏡矢。お前にそんな特技があったなんて」

「ええ。ガーデンから脱出する為にこいつをかなりいじりましたからね。構造は大体……」

 ヴェロニカさんが皐月に命じて伊豆下田から、俺達が乗って来たカプセルを回収させたのだが、俺はこいつのAIのメモリ内容を読んで、横須賀米軍基地跡地の座標を調べている。幸いな事に、俺が前屋敷に持ち込んでいた機材がそのまま物置に放り込まれていて多いに助かった。そしてほぼ一昼夜かけて解析し、ここだろうと思われる座標を入手した。


「なんだ。横須賀基地からちょっと離れているな」

「そうですね。座標の偽装とかでしょうか?」

「どうだろう。大戦初期はかなり勢力図が変遷しているから、このあたりも一時は米軍の支配下だったのかも知れん」

「成程。戦前の地図だと……防衛大学校ですか。一応軍事施設っぽいですね」

「うん。もう船団も相模湾の手前まで来ている。時間がない。急いで行ってみようじゃないか」


 こうして俺とヴェロニカさんは、急ぎ横須賀を目指した。そして高台になった海が見える広い空き地の廃墟の下に、地下基地の様なものがあるのを発見した。そして中に入ると間違いなくデリバリーカプセルの管理区域だった。


「どうだ鏡矢。動かせそうか?」ヴェロニカさんが、いくつかあるカプセルの状態を調べている俺に声を掛ける。ここでも、ガーデンで苦労した経験が生きてるな。

「多分、この一つだけはOKです。あとは電源自体入りません。修理は出来ると思いますが、それなりに時間がかかると思います」

「明日には船団が東京湾に入る。もう待ったなしだ。その一つでそのまま行くぞ」

「えっ? これだと精々二人が限度ですよ?」

「構わん鏡矢。君と私の二人でデートとしゃれ込もうじゃないか。それとも私では嫌か?」

「いえ別にそう言う訳では……」

 はははははとヴェロニカさんが高笑いをし、俺の背中をバンバンと叩いた。

「ならばよい。なーに心配するな。町田は我が腹心が皐月を押さえているし、通信も常時切らさぬようにするさ。もっとも、君が私と秘め事をしたいというのであれば、その時は通信を切るがな」

「はあ……」


 こうして俺とヴェロニカさんが移動用の脱出ポッドに乗り込むが、この人見た目通り身体も大きいな。正直並んで座るのも難しい。

「どうした鏡矢。遠慮しなくていいぞ。もっと私に密着しろ。せっかくデートなのだからな」いや、どこまで冗談なのか分からないけど……重量オーバーで服を脱がずに済んだのは何よりだ。


 俺は機器点検を一通り終え、コンソールパネルのスイッチをオンにする。


【デリバリーカプセル射出準備。行先を指定して下さい】

 聞きなれたAIの音声が聞こえた。


「行先はガーデン。但しガーデンは現在、地下潜航中。移動可能か?」

【計算中……現在のガーデン位置は、地下深度十m未満。移動可能です】

「おお。やったな鏡矢!」ヴェロニカさんが嬉しそうにそう言った。

「でも……十mですか。浮上まで結構ギリギリですね」

「なに。制空権と制海権を北米船団が押さえれば、仮に浮上してしまっても安全さ。さあ鏡矢。さっさと行こうじゃないか」


 そうか。もしかしてヴェロニカさんは、ガーデンそのものを護衛する為に、護衛空母まで呼んだのか。そうであれば俺の選択は間違ってなかった事ですよね風花様。


「それじゃAI。ガーデンに行ってくれ!!」

 ガコンと音がして、デリバリーカプセルがリリースされたのが判る。

 そしてお決まりの天地逆転……ほんとこれ何とかしてほしいな。期せずしてヴェロニカさんの大きな胸に顔をつっこんでしまったぞ。やがて水に浮いた様な感覚になり、姿勢が安定する。


「ふう。聞いてはいたが、なかなかスリリングな乗り物だな。それでどのくらいで着くんだ?」

【約二十時間の予定】AIの返答にヴェロニカさんの顔が曇る。

「この姿勢で二十時間だと!? もう少し早くならんのか?」

【地下掘削は時間短縮出来ません】

「……だそうだ鏡矢。まあ、ただじっとしていてもつまらんな。デートらしく少しはイチャイチャしてみるか?」

「え、遠慮しておきます……」



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