↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/132

第85話 最初のユウト

「――ユウト」


その名前が。


静かな世界に。


落ちた。


俺は。


目の前の少年を見る。


少年は。


何も言わない。


ただ。


海の向こうにいる。


今のユウトを。


見ていた。


「……俺?」


ユウトが。


自分を指差す。


「俺が」


「最初のユウト?」


少年は。


首を横に振った。


「違う」


「……」


「君は」


「君だよ」


「じゃあ」


「最初のユウトって」


「誰なんだ?」


少年は。


答えない。


その代わり。


俺の胸を。


指差した。


「君の中に」


「いる」


「……俺の中?」


「そう」


俺は。


胸に手を当てる。


いくつもの光。


可能性。


記憶。


過去。


選ばなかった未来。


全部が。


ここにある。


「でも」


俺は。


言った。


「ユウトは」


「ここにいる」


隣を見る。


確かに。


いる。


俺の弟。


俺が。


最初に救いたいと願った人。


俺が。


何度も。


何度も。


やり直した理由。


「俺は」


ユウトが。


静かに言う。


「ずっと」


「レオンの隣にいた」


「ああ」


「だから」


「俺じゃないユウトが」


「いるって言われても」


「よく分からない」


少年が。


笑う。


「そうだね」


「……」


「君は」


「世界が始まった後のユウト」


「俺?」


「うん」


「じゃあ」


少年は。


自分の胸を。


指差した。


「僕が」


「世界が始まる前の」


「ユウト」


「……」


空気が。


止まったように。


感じた。


俺は。


少年を見る。


「世界が」


「始まる前?」


「うん」


「まだ」


「ルナも」


「レオンも」


「ユウトも」


「名前を持たなかった頃」


「……」


ルナの声が。


震える。


『……私』


「……」


『覚えてない』


少年は。


頷いた。


「だから」


「僕が」


「覚えている」


「何を?」


少年は。


少しだけ。


寂しそうに笑った。


「最初の朝を」


俺は。


息を呑んだ。


「朝?」


「世界が」


「初めて」


「明るくなった日」


「……」


「まだ」


「太陽も」


「空も」


「時間も」


「なかった」


「でも」


「光が」


「一つだけ」


「あった」


その光。


俺は。


知っている。


世界が。


生まれる前。


何もなかった場所。


そこに。


小さな光が。


あった。


ルナと。


俺。


そして。


もう一つ。


「……三つ?」


少年は。


頷く。


「そう」


「最初に」


「三つの光が」


「あった」


俺は。


混乱する。


「待って」


「俺が」


「二人?」


「そうじゃない」


「じゃあ」


「ルナと」


「俺と」


「誰?」


少年は。


答えた。


「僕」


「……」


「でも」


「僕は」


「生まれなかった」


「なぜ?」


「世界が」


「最初の願いを」


「選んだから」


その言葉を。


聞いた瞬間。


胸の奥が。


痛んだ。


「……最初の願い」


少年は。


頷く。


「レオンが」


「ユウトと」


「一緒にいたいと」


願った。


「……」


「その願いは」


「一つの形に」


「なった」


「それが」


「俺?」


「そう」


「じゃあ」


「君は?」


少年は。


少しだけ。


目を伏せた。


「僕は」


「選ばれなかった」


「……」


「でも」


「消えたわけじゃない」


「じゃあ」


「どこに?」


「ずっと」


「ルナの中に」


『……!』


ルナの声が。


響いた。


『私の中に?』


「うん」


「あなたが」


「世界を作る前に」


「捨てた未来」


「……」


ルナは。


何も。


言わない。


俺も。


何も。


言えなかった。


少年は。


続ける。


「ルナは」


「一人になるのが」


「怖かった」


「だから」


「世界を作った」


「俺たちと」


「一緒にいるために?」


「そう」


「でも」


「その時」


「一つだけ」


「置いてきた」


「何を?」


少年は。


俺を見る。


「自分が」


「一人でも」


「生きていける未来」


「……」


俺は。


目を閉じる。


分かった。


ような。


分からない。


ような。


そんな感覚。


ルナは。


誰かと一緒にいるために。


世界を作った。


でも。


その願いが。


強すぎた。


「だから」


「俺たちは」


「何度も」


「やり直したのか?」


少年は。


頷く。


「誰かと」


「一緒にいたい」


「でも」


「失いたくない」


「だから」


「世界を」


「一つにしようとした」


「……」


「でも」


「それは」


「一緒にいることじゃない」


「……」


「相手の未来を」


「奪うことになる」


俺は。


第六原則を。


思い出した。


――他者選択の禁止。


そして。


第一の約束。


――共に選ぶ。


「……」


俺は。


ルナを見る。


姿は。


見えない。


でも。


確かに。


この世界のどこかにいる。


「ルナ」


『うん』


「お前」


「寂しい?」


長い沈黙。


『……少し』


「そうか」


『でも』


『今は』


『前より』


『怖くない』


「どうして?」


『あなたが』


『教えてくれたから』


『離れても』


『終わりじゃないって』


「……」


『また会えるって』


「うん」


『だから』


『今度は』


『一人でも』


『歩いてみたい』


俺は。


笑った。


「それでいい」


ユウトが。


隣で。


笑う。


「うん」


俺は。


ユウトを見る。


「どうした?」


「なんか」


ユウトは。


少し。


照れたように。


言った。


「嬉しいんだ」


「何が?」


「レオンが」


「今度は」


「誰かを」


「自分のために」


「生かそうとしてないから」


「……」


「俺も」


「自分で」


「生きていいんだって」


「思える」


俺は。


何も。


言えなかった。


ただ。


ユウトの頭を。


撫でた。


「当たり前だろ」


「……子供扱いするなよ」


「昔は」


「もっと小さかったじゃん」


「今は違う!」


ユウトが。


怒る。


みんなが。


笑う。


こんな。


何気ない会話。


それが。


俺にとって。


何より。


大切だった。


その時。


少年が。


小さく笑った。


「……良かった」


俺は。


少年を見る。


「何が?」


「これで」


「僕も」


「安心できる」


「……」


「僕が」


「ずっと」


「見たかった未来だから」


少年の身体が。


少し。


透ける。


「おい」


「大丈夫」


「消えるのか?」


「違う」


少年は。


笑った。


「僕は」


「消えない」


「ただ」


「ここに」


「留まる理由が」


「なくなっただけ」


「……」


「僕は」


「まだ」


「名前を持ってない」


「だから」


「まだ」


「決めない」


「……」


俺は。


頷いた。


「それでいい」


「うん」


「名前は」


「自分で」


「選びたい」


「その時は」


「教えてくれ」


「もちろん」


少年は。


海の方へ。


歩いていく。


「待って」


俺は。


呼び止めた。


「一つだけ」


「何?」


「お前は」


「俺の」


「何なんだ?」


少年は。


振り返る。


「……」


そして。


笑った。


「君の」


「最初の」


「弟」


「……!」


その言葉に。


胸が。


強く。


鳴った。


少年は。


海へ。


歩いていく。


その姿が。


光に。


溶ける。


そして。


最後に。


声だけが。


残った。


『また』


『会おう』


俺は。


小さく。


笑った。


「ああ」


「またな」


光が。


消えた。


その瞬間。


白い世界樹が。


大きく。


揺れた。


――ドクン。


――ドクン。


まるで。


心臓のように。


二度。


脈打つ。


そして。


世界樹の根元から。


小さな。


芽が。


出た。


ハネが。


近づく。


「……芽?」


ソアが。


見る。


「新しいもの」


カナも。


しゃがむ。


「何になるんだろう」


ミライが。


首を傾げる。


「まだ」


「決まってないんじゃないかな」


ユラが。


静かに。


言った。


「なら」


「待てばいい」


ノアが。


笑う。


「大きくなったら」


「分かるよ!」


俺も。


頷いた。


「そうだな」


その時。


芽の中から。


声が。


聞こえた。


『……』


「……?」


みんなが。


黙る。


『ここは』


『どこ?』


「……!」


新しい。


命。


世界が。


また。


一つ。


生まれようとしている。


俺は。


芽に。


手を伸ばす。


「ここは」


「お前が」


「決める場所だ」


『……』


「名前も」


「生き方も」


「どこにいるかも」


「誰といるかも」


「全部」


「自分で決めていい」


しばらく。


沈黙。


そして。


小さな声。


『……じゃあ』


『一つ』


『聞いていい?』


「もちろん」


『私は』


『誰かを』


『好きになっても』


『いい?』


「……」


思わず。


全員が。


顔を見合わせる。


アリアが。


吹き出した。


「ずいぶん」


「最初から」


「難しい質問ね」


カイが。


首を傾げる。


「好きって」


「何?」


リクが。


答える。


「たぶん」


「一緒にいたいって」


「思うこと」


カナが。


言う。


「でも」


「離れていても」


「大切に思うことも」


「好き」


ソアが。


考える。


「じゃあ」


「決まった形は」


「ない?」


ミライが。


頷く。


「未来と同じ」


「まだ」


「決まってない」


俺は。


芽を見る。


「好きになるのも」


「自由だ」


「でも」


「相手も」


「自分と同じように」


「選ぶ権利がある」


『……』


「だから」


「好きになることは」


「誰かを」


「自分のものにすることじゃない」


「一緒にいたいと」


「思うこと」


「そして」


「相手が選んだ未来も」


「尊重すること」


『……分かった』


芽が。


小さく。


揺れた。


そして。


白い花が。


一輪。


咲いた。


「綺麗……」


アリアが。


呟く。


その花びらに。


文字が。


浮かび上がる。


第十原則――他者の自由


誰かを想うことと。


誰かを所有することは。


同じではない。


愛することと。


選ぶことも。


同じではない。


相手には。


相手の未来がある。


俺は。


その言葉を。


じっと見る。


これまで。


俺たちは。


何度も。


「一緒にいること」を。


求めてきた。


でも。


本当の意味で。


一緒にいるというのは。


相手を。


自分の隣に。


縛ることじゃない。


相手が。


自分とは違う道を。


選んでも。


その選択を。


受け止めること。


それでも。


また。


会いたいと。


思えること。


「……」


俺は。


空を見る。


そこには。


二つの月。


そして。


小さな星。


ルナの世界。


「ルナ」


『うん』


「この世界」


「好き?」


『……』


『うん』


『少しずつ』


『好きになってる』


「そっか」


『レオン』


「ん?」


『あなたは?』


「俺?」


『この世界』


『好き?』


俺は。


周囲を見る。


まだ。


何もない。


海と。


空と。


小さな家。


一本の世界樹。


仲間たち。


そして。


まだ。


名前のない命。


「好きだよ」


『……』


「完成してないから」


「好きなんだと思う」


『どうして?』


「これから」


「変わるから」


「俺たちが」


「選ぶたびに」


「世界も」


「変わる」


『……』


「だから」


「この世界は」


「まだ」


「誰のものでもない」


「みんなのものだ」


ルナが。


小さく。


笑った。


『じゃあ』


『私も』


『この世界の』


『一人でいられるね』


「ああ」


『……嬉しい』


その瞬間。


星空が。


輝いた。


二つの月の間に。


新しい。


扉が。


現れる。


白い扉。


そこには。


文字が。


書かれていた。


『最初の家――その地下』


「……地下?」


エレナが。


驚く。


「家に」


「地下なんて」


「ありませんでした」


「……」


俺は。


家を見る。


確かに。


普通の家だ。


でも。


今。


その下に。


何かが。


ある。


「行ってみる?」


アリアが。


尋ねる。


俺は。


頷いた。


「うん」


扉を。


開ける。


階段が。


地下へ。


続いている。


一段。


また。


一段。


降りていく。


そして。


地下室の奥。


そこに。


一つの部屋が。


あった。


壁一面に。


絵が。


描かれている。


三つの光。


白い光。


黒い光。


そして。


赤い光。


「……」


俺は。


立ち止まる。


その中央には。


一人の少女。


白い髪。


赤い瞳。


ルナ。


その隣に。


二人の少年。


一人は。


俺。


もう一人は。


――あの少年。


「……」


そして。


その下に。


文字が。


あった。


俺は。


読み上げる。


「『世界が生まれる前』」


「『三人は』」


「『一つの約束をした』」


「……」


続きが。


ある。


俺は。


息を呑む。


「『いつか』」


「『三人で』」


「『同じ世界に』」


「『生きよう』」


「……!」


三人。


俺。


ルナ。


そして。


最初のユウト。


その約束は。


果たされなかった。


最初の世界で。


一つの願いが。


選ばれた。


そして。


世界は。


何度も。


やり直された。


けれど。


今。


目の前に。


新しい世界が。


ある。


「……」


俺は。


壁に。


手を置く。


すると。


最後の文字が。


光った。


『この約束を、今度は誰が選ぶ?』


その瞬間。


地下室の奥から。


声がした。


「――僕だよ」


「……!」


振り返る。


そこには。


さっきの少年が。


立っていた。


けれど。


さっきとは。


違う。


その手には。


小さな。


赤い光が。


握られている。


少年は。


俺を見る。


「今度は」


「僕が」


「選ぶ」


「何を?」


少年は。


静かに。


笑った。


「――この世界で」


「僕が」


「誰になるのかを」


その瞬間。


地下室の壁が。


大きく。


開いた。


その向こうには。


まだ。


誰も見たことのない。


「第零世界」の。


さらに奥が。


広がっていた。


そして。


そこには。


巨大な。


赤い扉が。


一つ。


立っていた。


扉には。


たった一文字。


『始』


俺は。


その文字を。


見つめる。


世界の始まり。


願いの始まり。


俺たちの始まり。


そして。


まだ。


語られていない。


もう一つの始まり。


少年が。


言った。


「レオン」


「うん」


「この扉の向こうで」


「全部」


「始まったんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。