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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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84/132

第84話 ルナの世界

星が。


生まれた。


夜空の真ん中。


今まで。


何もなかった場所に。


一つだけ。


小さな星。


白く。


淡く。


輝いている。


俺は。


その星から。


目を離せなかった。


『――レオン』


また。


声がした。


「……ルナ」


『うん』


「そこにいるのか?」


『いるよ』


「今度は」


「どこ?」


『ここ』


「……」


『私が』


『初めて』


『自分で作っている世界』


その言葉を。


聞いた瞬間。


胸の奥が。


熱くなった。


「自分で?」


『うん』


『今まで』


『私は』


『あなたを探すために』


『世界を作った』


『でも』


『今は違う』


「何が違う?」


『私は』


『私自身のために』


『世界を作ってる』


「……」


それは。


とても。


大きな変化だった。


ルナは。


ずっと。


誰かと一緒にいたいと願っていた。


だから。


世界を作った。


俺を探すために。


でも。


今。


ルナは。


自分自身の未来を。


選ぼうとしている。


「……」


アリアが。


俺の隣に立つ。


「嬉しい?」


「うん」


「なら」


アリアは。


笑った。


「行こう」


「え?」


「ルナのところ」


「……」


「会いたいんでしょう?」


「ああ」


「だったら」


アリアは。


俺の背中を。


軽く押した。


「今度は」


「ルナが選んだ世界を」


「見に行こう」


俺は。


頷いた。


「そうだな」


その時。


観測者が。


星を見る。


「問題がある」


「何?」


「この星」


「まだ」


「世界になっていない」


「……?」


「世界の核が」


「ない」


エレナが。


続ける。


「今は」


「ただの」


「可能性です」


「じゃあ」


「どうすれば?」


観測者が。


俺を見る。


「世界の核を」


「誰かが」


「作らなければならない」


「……」


俺は。


星を見る。


「ルナ自身が」


「作るんじゃないの?」


「それが」


「問題なんだ」


観測者は。


静かに。


言った。


「この世界の」


「ルナは」


「世界を作る力を」


「持っている」


「でも」


「世界の核を」


「作るには」


「一つ」


「必要なものがある」


「何?」


「願い」


「……」


俺は。


少し。


嫌な予感がした。


「また」


「願い?」


「ああ」


「じゃあ」


「誰かの願いを」


「使うの?」


「それでは」


「今までと」


「同じです」


エレナが。


首を振る。


「他者の願いを」


「世界の核にするなら」


「その人の未来を」


「世界が縛ってしまいます」


「……」


つまり。


ルナが。


自分の世界を作るなら。


ルナ自身の願いが。


必要になる。


「……ルナ」


俺は。


星に向かって。


呼びかけた。


『なに?』


「お前は」


「何を願ってる?」


長い沈黙。


『……』


『まだ』


『分からない』


「……」


『今までの私は』


『あなたと』


『一緒にいたい』


『それだけだった』


「うん」


『でも』


『今の私は』


『それだけじゃない』


「何?」


『私が』


『私として』


『何をしたいのか』


『まだ』


『分からない』


俺は。


笑った。


「それでいい」


『……』


「分からないなら」


「探せばいい」


『うん』


「俺たちも」


「一緒に探す」


『……』


ルナが。


小さく。


笑った。


『でも』


「ん?」


『今度は』


『私の世界だから』


『あなたたちに』


『決めてほしくない』


「……」


『私の世界が』


『どんな世界になるのか』


『私も』


『自分で』


『選びたい』


「分かった」


俺は。


頷いた。


「じゃあ」


「俺たちは」


「見守る」


『うん』


「必要なら」


「助ける」


『うん』


「でも」


「決めるのは」


『私』


「そう」


その瞬間。


星が。


大きく。


輝いた。


――パァァッ。


夜空に。


一本の道が。


生まれる。


白い光の道。


こちらから。


星へ。


伸びている。


「……道」


ソアが。


呟く。


「ルナが」


「作ったのかな?」


「たぶん」


俺は。


光の道を見る。


その先に。


新しい世界が。


ある。


「行こう」


俺たちは。


光の道を。


歩き始めた。


一歩。


また一歩。


世界から。


世界へ。


境界を。


越える。


すると。


突然。


周囲の景色が。


変わった。


「……!」


目の前に。


海が。


広がっていた。


空は。


薄紫色。


二つの月。


巨大な山。


そして。


何もない大地。


「ここが」


「ルナの世界?」


俺が。


聞く。


すると。


空から。


声が。


した。


『まだ』


『世界じゃないよ』


「……」


『世界に』


『なりかけてる』


俺たちは。


周囲を見渡す。


確かに。


何もない。


生命も。


植物も。


街も。


ない。


ただ。


海と。


空と。


大地。


「……綺麗」


アリアが。


呟いた。


「でも」


「寂しいな」


ユウトが。


言う。


ルナの声が。


響く。


『うん』


『私も』


『そう思った』


「だから」


「人を作る?」


『……』


『まだ』


『分からない』


「じゃあ」


「何を作る?」


『……』


ルナは。


答えなかった。


その代わり。


海が。


揺れた。


――ザァァァ……。


波が。


砂浜へ。


寄せて。


返す。


そして。


波打ち際に。


小さな貝殻が。


一つ。


現れた。


ノアが。


走っていく。


『お兄ちゃん!』


「待て!」


ノアは。


貝殻を。


拾う。


『これ』


「どうした?」


『生きてる?』


「……」


俺は。


貝殻を見る。


ただの。


貝殻。


まだ。


生命はない。


でも。


ノアが。


両手で。


包む。


『寒そう』


「……」


『お家』


『作ってあげる』


ノアは。


砂を。


集め始めた。


小さな。


砂の家。


それを見て。


ルナが。


笑った。


『……そうか』


「どうした?」


『最初に』


『作りたいもの』


『分かった』


「何?」


『家』


「家?」


『うん』


『誰かが』


『帰れる場所』


俺は。


黙った。


それは。


俺が。


ずっと。


求めていたものだった。


帰る場所。


普通の朝。


誰かと。


一緒に。


ご飯を食べる場所。


「……」


ルナが。


続ける。


『私』


『世界を』


『大きくすることばかり』


『考えてた』


『でも』


『最初に必要なのは』


『小さな場所』


『帰れる場所』


俺は。


笑った。


「いいと思う」


『本当に?』


「ああ」


「この世界の」


「最初の場所は」


「家にしよう」


『うん』


すると。


地面が。


震えた。


――ゴゴゴゴゴ。


砂浜の奥から。


木が。


一本。


生えてくる。


柱。


壁。


屋根。


窓。


そして。


玄関。


小さな家。


その家の前に。


表札が。


浮かんだ。


そこには。


まだ。


名前がない。


「……」


ルナが。


言う。


『名前』


「どうする?」


『……』


『これは』


『みんなの家』


「なら」


「みんなで」


「名前を決めよう」


ルナが。


笑った。


『うん』


全員が。


考える。


「絆の家」


セリアが。


言う。


「帰還の家」


ハル。


「始まりの家」


ミライ。


「明日の家」


ソア。


「空の家」


ノア。


「……」


リクが。


考える。


「帰る場所」


カナも。


言った。


「また会える家」


ユラが。


少し。


考えて。


「終わりから」


「戻れる家」


「……」


みんな。


それぞれ。


違う。


どれも。


正しい。


だから。


俺は。


言った。


「名前」


「一つにしなくても」


「いいんじゃないか?」


「……」


「この家は」


「呼ぶ人によって」


「名前が違っても」


「いい」


ルナが。


笑った。


『それ』


『好き』


その瞬間。


表札の文字が。


変わった。


一つの名前ではなく。


無数の文字が。


重なった。


そして。


最後に。


一つだけ。


残る。


『帰る場所』


俺は。


その文字を見る。


「……」


胸が。


温かくなった。


その時。


家の中から。


音がした。


――トン。


「……?」


――トン。


誰かが。


壁を。


叩いている。


「誰?」


俺たちは。


顔を見合わせる。


もう一度。


――トン。


――トン。


アリアが。


剣に手をかける。


カイも。


構える。


「敵?」


「分からない」


俺は。


玄関へ。


近づく。


ドアに。


手をかける。


開ける。


「……」


誰もいない。


ただ。


床に。


小さな箱が。


置いてあった。


黒い箱。


蓋には。


文字。


『ルナへ』


「……」


俺は。


箱を拾う。


「ルナ」


『私?』


「これ」


『……』


ルナの声が。


震えた。


『知らない』


「開ける?」


『……』


少し。


沈黙。


『うん』


箱を。


開ける。


中に。


入っていたのは。


一枚の紙。


そこには。


たった一行。


書かれていた。


『世界を作る前に、あなたは一人ではなかった』


「……」


ルナが。


黙る。


「どういうこと?」


『……』


「ルナ?」


『分からない』


「……」


『でも』


『怖い』


「なぜ?」


『この世界を』


『私が』


『一人で』


『作っていると』


『思ってた』


『でも』


『違うなら』


『誰が』


『この世界を』


『作り始めたの?』


その瞬間。


家の外。


海の向こうで。


何かが。


動いた。


――ザァァァァ……。


海面が。


割れる。


巨大な影が。


海の中から。


浮かび上がる。


「……!」


カイが。


叫ぶ。


「何だ、あれ!」


海の中央。


巨大な。


白い柱。


いや。


違う。


それは。


木だった。


世界樹。


この世界にも。


世界樹が。


存在している。


でも。


俺たちが知っている世界樹とは。


明らかに。


違った。


幹は。


真っ白。


葉は。


一枚もない。


そして。


その根元に。


一人の少年が。


立っている。


黒い髪。


白い服。


赤い瞳。


「……」


俺は。


息を呑んだ。


見覚えがある。


でも。


カナでも。


リクでも。


ユウトでもない。


その少年が。


海を渡って。


こちらへ。


歩いてくる。


水の上を。


普通に。


歩いている。


そして。


俺の前で。


止まった。


「……レオン」


「お前」


「誰だ?」


少年は。


笑った。


「僕?」


「うん」


「僕は」


少し。


考えて。


答えた。


「ルナが」


「忘れたもの」


「……!」


ルナが。


叫ぶ。


『……!』


少年は。


空を見上げる。


「君は」


「世界を作った」


「でも」


「世界を作る前に」


「一つ」


「忘れた」


「何を?」


少年は。


俺を見る。


「――自分自身」


「……」


ルナの声が。


震える。


『……私自身?』


「そう」


少年は。


笑う。


「だから」


「僕が」


「代わりに」


「ここにいる」


「……」


俺は。


少年を。


見つめる。


「名前は?」


少年は。


答えなかった。


ただ。


自分の胸に。


手を当てる。


そこには。


黒い光が。


宿っていた。


「……」


そして。


少年は。


一言。


こう言った。


「名前を」


「決めるのは」


「まだ」


「早い」


その瞬間。


海が。


大きく。


うねった。


白い世界樹の枝が。


空へ。


伸びる。


そして。


空に。


文字が。


浮かび上がった。


『第零世界――自己の始まり』


俺は。


その文字を見上げる。


新しい世界。


ルナの世界。


その中心に。


まだ。


名前を持たない少年。


そして。


彼が。


ルナ自身の「忘れたもの」だという。


「……」


俺は。


拳を握る。


また。


謎が増えた。


けれど。


不思議と。


怖くなかった。


なぜなら。


今度は。


一人で。


答えを出す必要がないから。


俺たちは。


みんなで。


この世界を。


歩いていく。


その時。


少年が。


俺にだけ。


聞こえる声で。


囁いた。


「レオン」


「……?」


「この世界には」


「まだ」


「もう一人」


「いる」


「誰だ?」


少年は。


海の向こうを。


指差した。


「君が」


「まだ」


「一度も」


「会ったことのない」


「――ユウト」


「……!」


俺は。


振り返る。


そこには。


確かに。


ユウトが。


いる。


「……俺?」


ユウト自身が。


驚いている。


少年は。


静かに。


笑った。


「本当の意味での」


「最初の」


「ユウト」


「……」


世界が。


再び。


揺れ始めた。

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