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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第81話 最初の約束

『――やっと』


『帰ってきたね』


その声を聞いた瞬間。


俺の足は。


自然と。


前へ進んでいた。


「レオン!」


アリアの声。


「兄ちゃん!」


ユウトの声。


「お兄ちゃん!」


ノアの声。


後ろから。


みんなの声が聞こえる。


けれど。


俺は。


振り返らなかった。


なぜか。


分かっていた。


この先にあるものを。


俺は。


ずっと。


探していた。


「……ルナ」


隣を見る。


白い髪の少女。


ルナは。


俺の手を。


握っていた。


「怖い?」


「……うん」


ルナが。


正直に。


頷く。


「私」


「怖い」


「どうして?」


「思い出したら」


ルナは。


目を伏せる。


「何かが」


「変わってしまいそうだから」


俺は。


その手を。


握り返した。


「なら」


「一緒に思い出そう」


「……」


「一人で思い出す必要なんて」


「ないだろ?」


ルナは。


しばらく。


俺を見た。


そして。


小さく。


笑った。


「うん」


二人で。


扉をくぐる。


――その瞬間。


世界の音が。


全部。


消えた。


風も。


鳥の声も。


仲間たちの声も。


何も。


聞こえない。


ただ。


白い。


空間。


何もない。


床も。


天井も。


空もない。


それなのに。


俺たちは。


立っていた。


「……ここ」


ルナが。


呟く。


「知ってる」


俺は。


周囲を見る。


「俺も」


「知ってるの?」


「分からない」


「でも」


「知ってる気がする」


その時。


目の前に。


小さな光が。


現れた。


一つ。


二つ。


三つ。


無数の光。


そして。


その光の中から。


声がした。


『ここには』


『まだ』


『名前がない』


俺は。


息を呑んだ。


『世界も』


『時間も』


『命も』


『終わりも』


『始まりも』


『存在しない』


「……」


『だから』


『ここにいる者は』


『自分を』


『何と呼べばいいのか』


『分からない』


ルナが。


一歩。


前へ出る。


「……あなたは?」


『私は』


少し。


間があった。


『まだ』


『私ではない』


「……」


その言葉に。


俺は。


胸が痛くなった。


まだ。


自分ですらない。


何者でもない。


それでも。


そこにいる。


まるで。


今の世界そのものだった。


「……」


すると。


光の一つが。


俺の前に。


近づいてきた。


『あなた』


『名前は?』


「俺?」


『そう』


「……レオン」


『どうして』


『レオンなの?』


「……」


答えられない。


母さんに。


そう呼ばれた。


父さんも。


そう呼んだ。


ユウトも。


そう呼んだ。


でも。


そのさらに前。


俺が。


自分で。


その名前を選ぶ前。


「……分からない」


『そう』


光は。


嬉しそうに。


揺れた。


『分からない』


『それは』


『いい答え』


「……?」


『名前は』


『知らないところから』


『始まるものだから』


その言葉を聞いた瞬間。


俺の胸に。


痛みが走った。


――ドクン。


「……っ」


ルナが。


俺を見る。


「レオン?」


「大丈夫」


胸を押さえる。


すると。


そこから。


光が。


一つ。


浮かび上がった。


今まで。


見たことのない光。


白でも。


黒でもない。


透明な光。


まるで。


何も決まっていない。


そんな色。


『それが』


『あなた』


光が。


言う。


『まだ』


『名前を持たない』


『最初の存在』


「……」


「俺が?」


『そう』


「じゃあ」


「レオンって名前は」


『後から』


『生まれた』


「誰が?」


光は。


ルナを見る。


「……」


ルナの顔が。


固まった。


『彼女』


「……」


「ルナが?」


『まだ』


『ルナではない』


「……」


その瞬間。


ルナの周囲に。


無数の光が。


集まり始めた。


白い髪が。


風もないのに。


揺れる。


「……私」


「どうした?」


「思い出してる」


ルナが。


頭を押さえる。


「あなたは」


「ずっと」


「ここにいた」


「……」


「私が」


「初めて」


「見つけた存在」


「……」


「だから」


「名前を」


「つけた」


「レオン」


俺は。


息を呑む。


「俺が」


「レオンになる前に」


「お前が」


「俺を」


「レオンと呼んだ?」


「うん」


ルナは。


涙を流していた。


「だって」


「あなたは」


「ずっと」


「一人だったから」


「……」


「私も」


「一人だった」


「だから」


ルナが。


笑う。


「二人なら」


「一人じゃない」


その言葉を聞いた瞬間。


世界が。


揺れた。


――ドクン。


――ドクン。


白い空間に。


初めて。


音が生まれた。


心臓の音。


それは。


俺のものではない。


ルナのものでもない。


二人の間に。


生まれた音だった。


『それが』


声が。


響く。


『最初の願い』


「……」


『一人では』


『寂しい』


『誰かと』


『一緒にいたい』


『それだけの願い』


「……」


俺は。


目を閉じる。


それが。


すべての始まり。


ユウトを救うための願い。


世界を救うための願い。


誰も犠牲にしない願い。


全部。


もっと。


もっと前に。


一つの願いから。


始まっていた。


――一人では嫌だ。


――誰かと一緒にいたい。


「……」


俺は。


ルナを見る。


「それが」


「最初の約束?」


ルナは。


頷く。


「うん」


「何て言った?」


「……」


ルナは。


考える。


そして。


昔の自分の声で。


言った。


「一緒に」


「いよう」


「……」


「ずっと」


「……」


「一緒に」


「いよう」


その言葉。


胸に。


響いた。


俺は。


何度も。


その約束を。


繰り返してきた。


ユウトに。


アリアに。


みんなに。


そして。


世界に。


「……」


でも。


俺は。


気づいていなかった。


「ずっと」


「一緒にいる」


それは。


誰かを。


永遠に。


縛ることじゃない。


誰かの未来を。


固定することでもない。


「一緒にいる」


ということは。


相手が。


自分の未来を。


選んでも。


それを。


受け入れること。


離れることを。


選んでも。


その選択を。


尊重すること。


そして。


必要な時に。


また。


出会うこと。


「……」


俺は。


笑った。


「やっと」


「分かった」


ルナが。


俺を見る。


「何が?」


「俺たちの」


「最初の約束」


「……」


「一緒にいるって」


「ずっと隣にいることじゃない」


「……」


「お互いが」


「自分の未来を」


「選び続けられるように」


「そばにいることなんだ」


ルナの目から。


涙が。


落ちた。


「……うん」


「それなら」


「私」


「ずっと」


「あなたのそばにいる」


「でも」


ルナは。


笑った。


「あなたが」


「どこかへ行くなら」


「行っていいよ」


「……」


「私も」


「私の未来を」


「選ぶから」


俺は。


頷いた。


「それでいい」


その瞬間。


白い空間に。


一つの文字が。


生まれた。


第一の約束――共に選ぶ


「……」


世界樹に刻まれた。


六つの原則。


七つ。


八つ。


そして。


そのさらに上。


この世界の。


もっと深い場所に。


最初の約束が。


刻まれた。


すると。


白い空間の奥から。


別の光が。


近づいてきた。


小さな。


黒い光。


俺は。


その光を見た瞬間。


息を呑んだ。


「……これ」


ルナも。


驚く。


「……知ってる」


黒い光が。


二人の前で。


止まった。


そして。


声がした。


『私は』


『最初の約束が』


『破られた時に』


『生まれた』


「……?」


『あなたたちは』


『一緒にいたいと願った』


『けれど』


『あなたは』


『誰かを救うために』


『自分を捨てようとした』


「……」


『ルナは』


『あなたを失いたくなかった』


『だから』


『世界を作った』


『あなたは』


『誰かを失いたくなかった』


『だから』


『世界を何度も』


『やり直した』


俺は。


言葉を失う。


「……じゃあ」


『そう』


「俺が」


「何度も」


「世界を繰り返した理由は」


『最初の約束を』


『守ろうとしたから』


「……」


『でも』


『守り方を』


『間違えた』


胸に。


痛みが走る。


その通りだった。


俺は。


「一緒に生きる」という願いを。


「誰も失わない」という形に。


変えてしまった。


だから。


誰かが犠牲になれば。


やり直した。


誰かが死ねば。


やり直した。


未来が壊れれば。


やり直した。


その結果。


世界そのものを。


何度も。


傷つけた。


「……」


黒い光が。


俺を見る。


『だから』


『私は』


『生まれた』


「お前は」


『私は』


少し。


間を置いて。


言った。


『失うことへの恐怖』


「……」


『名前を』


『つけるなら』


『そうなる』


俺は。


その黒い光を。


見つめる。


それは。


悪ではなかった。


ただ。


怖かった。


失うことが。


怖くて。


だから。


何かを。


縛ろうとしていた。


「……お前も」


「一緒だったんだな」


『……』


「俺と」


『……』


黒い光が。


少し。


揺れる。


『そう』


「じゃあ」


俺は。


手を伸ばす。


「一緒に」


『……?』


「ここから」


「やり直そう」


『……』


「今度は」


「失わないことを」


「目標にしない」


「……」


「失っても」


「終わりじゃない」


「離れても」


「終わりじゃない」


「選び直せる」


「また会える」


「それを」


「信じよう」


黒い光が。


初めて。


俺の手に。


触れた。


――温かい。


「……」


ルナも。


その光に。


手を伸ばす。


三つの存在が。


初めて。


触れ合った。


俺。


ルナ。


そして。


恐怖から生まれた。


黒い光。


その瞬間。


白い空間が。


大きく。


揺れた。


――ドォン!!


「なっ……!」


空間が。


崩れ始める。


「ルナ!」


「レオン!」


無数の亀裂。


白い世界が。


砕けていく。


『時間が』


『始まる』


声が。


響いた。


『世界が』


『生まれる』


『そして』


『あなたたちは』


『もう一度』


『別々の存在になる』


「……!」


ルナが。


俺の手を。


強く握る。


「レオン!」


「ルナ!」


『忘れる』


「……」


『あなたたちは』


『一度』


『すべてを』


『忘れる』


「……!」


『それでも』


『また』


『出会える』


「……」


『約束を』


『覚えていなくても』


『選択は』


『残る』


俺は。


ルナを見る。


「……」


「……」


二人とも。


泣いていた。


「忘れても」


俺が。


言う。


「また」


「会おう」


ルナが。


頷く。


「うん」


「何度でも」


「うん」


「何度」


「生まれ変わっても」


「うん」


「世界が」


「何度」


「壊れても」


「……うん」


「また」


「見つける」


ルナが。


笑った。


「約束」


その言葉と。


同時に。


世界が。


光に包まれた。


――――。


――――。


俺は。


目を開ける。


そこは。


見慣れた。


新しい世界。


世界樹。


家。


畑。


青い空。


みんながいる。


「……」


俺は。


胸に。


手を当てる。


そこには。


新しい光が。


一つ。


増えていた。


けれど。


黒い光は。


なかった。


「……?」


周囲を見る。


ルナが。


いない。


「……ルナ?」


返事が。


ない。


「ルナ!」


俺は。


走り出す。


アリアが。


驚く。


「レオン?」


「ルナは!?」


「え?」


「ルナだ!」


「どこに……」


誰も。


知らない。


ユウトも。


首を振る。


「兄ちゃん」


「ルナは?」


「……」


誰も。


覚えていない。


「そんな……」


俺は。


立ち尽くす。


そして。


気づいた。


世界樹。


その根元。


小さな白い花が。


一輪。


咲いている。


その花の前に。


小さな文字。


『また会おう』


「……」


俺は。


涙を拭った。


「……ああ」


誰も。


覚えていない。


それでも。


俺は。


覚えている。


胸の奥に。


残っている。


一つの約束。


――また会おう。


その瞬間。


遠くから。


小さな声がした。


「レオン?」


振り返る。


誰もいない。


けれど。


空から。


白い羽根が。


一枚。


落ちてきた。


俺は。


それを。


受け止める。


羽根の裏には。


小さな文字。


『私は、ここにいる』


「……」


俺は。


笑った。


「分かった」


そして。


その日の夜。


世界樹の下で。


新しい家を。


建て始めた。


まだ。


ルナはいない。


けれど。


俺は。


信じていた。


約束は。


忘れられても。


消えない。


そして。


世界のどこかで。


小さな女の子が。


目を覚ました。


白い髪。


赤い瞳。


自分の名前すら。


まだ。


知らない。


少女は。


空を見上げる。


「……」


胸の奥に。


なぜか。


一つの名前が。


浮かんだ。


「……レオン」


少女は。


その名前を。


口にした。


そして。


理由も分からないまま。


笑った。

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