↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
73/132

第73話 最初の光

――光が生まれた。


それは。


あまりにも小さかった。


指先ほどの。


ほんの小さな光。


けれど。


この場所には。


今まで。


何もなかった。


だから。


その光は。


世界そのものよりも。


大きく見えた。


「……」


俺たちは。


誰も。


声を出さなかった。


ただ。


その光を。


見つめていた。


光は。


ゆっくりと。


明るくなる。


白。


青。


金。


そして。


その中心に。


ほんの少し。


赤い色が混ざった。


「……綺麗」


アリアが。


小さく呟く。


ルナも。


頷いた。


「これ」


「私が」


「最初に作った光と」


「似てる」


「……」


俺は。


ルナを見る。


「同じものなのか?」


「分からない」


ルナは。


首を傾げた。


「でも」


「今度の光は」


「少し違う」


「どこが?」


「一人じゃない」


「……?」


ルナは。


光を見つめる。


「この光」


「みんなの光が」


「混ざってる」


俺は。


驚いた。


「みんなの?」


「ああ」


観測者が。


静かに答えた。


「レオンだけではない」


「アリア」


「ユウト」


「ハル」


「ミライ」


「ルナ」


「ここにいる全員の」


「選択が」


「この光を作っている」


「……」


俺は。


光へ。


手を伸ばした。


すると。


光の中から。


声がした。


『おはよう』


「……!」


俺は。


手を止める。


「今」


「誰か」


「喋った?」


ミアが。


目を丸くする。


「私にも聞こえた!」


『おはよう』


もう一度。


声がする。


今度は。


はっきり。


子供の声。


「……」


俺は。


光を見る。


「君は」


「誰?」


『分からない』


「名前は?」


『ない』


ミライが。


一歩。


前へ出る。


「私も」


「最初は」


「名前がなかったよ」


『そうなの?』


「うん」


『じゃあ』


光が。


嬉しそうに。


揺れる。


『私も』


『名前が欲しい』


俺たちは。


顔を見合わせた。


「……」


ユウトが。


俺を見る。


「兄ちゃん」


「ん?」


「また名前を」


「決めるの?」


「みんなで」


俺は。


笑った。


「そうだな」


俺たちは。


光を囲んだ。


「どんな名前がいい?」


アリアが。


考える。


「光だから……ルミ?」


「ルナと似てるね」


セリアが。


笑う。


「じゃあ」


カインが。


口を挟む。


「ホシとか?」


「安直すぎる」


ノアが。


即答する。


「お前にだけは言われたくない!」


カインが。


抗議する。


「じゃあノアが考えろよ!」


「俺?」


「うん」


「……」


ノアは。


真剣に。


光を見る。


「……アサ」


「アサ?」


「ああ」


「夜の終わり」


「そして」


「始まり」


俺は。


光を見る。


『アサ』


光が。


その名前を。


繰り返す。


『アサ……』


そして。


嬉しそうに。


輝いた。


『好き』


「……」


「決まりだな」


俺が。


言う。


「君の名前は」


「アサ」


『うん!』


その瞬間。


最初の光が。


大きく膨らんだ。


――ドクン。


――ドクン。


鼓動のような。


音がする。


「……世界が」


エレナが。


呟いた。


「始まる」


光の周りに。


小さな粒が。


生まれた。


それは。


ゆっくり。


集まっていく。


土になる。


水になる。


空になる。


そして。


その上に。


一本の小さな木が。


生まれた。


「……世界樹?」


ユナが。


尋ねる。


原初が。


首を横に振った。


「まだ違う」


「……?」


「これは」


原初が。


木を見る。


「世界樹になる前の」


「最初の木だ」


「最初の木……」


木は。


まだ。


細い。


枝も。


少ない。


それでも。


その先には。


小さな葉が。


一枚だけ。


ついていた。


アサが。


嬉しそうに。


笑う。


『葉っぱ!』


「うん」


『もっと欲しい!』


「どうする?」


俺が。


尋ねると。


アサは。


少し考えた。


そして。


言った。


『みんなが』


『好きなものを』


『一つずつ』


『置いてくれたら』


『葉っぱが増えるかも』


「……」


不思議な提案だった。


でも。


誰も。


反対しなかった。


最初に。


ルナが。


光を。


一つ。


木へ。


渡した。


「私は」


「友達」


小さな光が。


葉になる。


一枚。


二枚。


次に。


ユウト。


「俺は」


「家族」


葉が。


増える。


アリア。


「私は」


「約束」


また。


増える。


セリア。


「私は」


「笑顔」


カイン。


「俺は」


「冒険!」


ノア。


「俺は」


「知ること」


リナ。


「私は」


「明日」


セレナ。


「私は」


「帰れる場所」


ミア。


「私は」


「安心」


ユナ。


「私は」


「一緒にいること」


エレナ。


「私は」


「選ぶこと」


観測者は。


しばらく。


黙っていた。


そして。


自分の胸から。


小さな光を。


取り出す。


「私は」


「見ること」


「……」


光が。


木へ。


入る。


さらに。


原初が。


一つ。


光を渡した。


「私は」


「始まり」


最後に。


ハル。


「俺は」


「再出発」


そして。


ミライが。


木を見る。


「私は」


「まだ決まってない未来」


最後に。


俺。


俺は。


しばらく。


考えた。


みんなが。


俺を見る。


「レオン」


アリアが。


笑う。


「何を選ぶの?」


「……」


俺は。


木を見る。


たくさんの葉。


それぞれが。


違う願い。


違う人生。


違う未来。


俺は。


その全部を。


見つめた。


そして。


一つ。


言葉を選んだ。


「俺は」


「……」


「一緒に生きること」


その瞬間。


木が。


大きく輝いた。


――ドンッ。


無数の枝が。


一気に。


空へ伸びていく。


葉が。


増える。


さらに。


増える。


木は。


どんどん。


大きくなる。


「……!」


気づけば。


俺たちの頭上を。


覆うほどの。


大きな木になっていた。


その幹には。


無数の光が。


流れている。


「これは……」


エレナが。


驚く。


「世界樹……?」


原初が。


頷いた。


「違う」


「……?」


「今までの世界樹とは」


「根本的に違う」


「何が?」


原初は。


木を見上げた。


「これは」


「一人の意思を」


「支える木ではない」


「……」


「みんなの意思を」


「繋ぐ木だ」


俺は。


木に触れた。


温かい。


そして。


聞こえた。


無数の声。


『私は』


『ここにいる』


『僕も』


『ここにいる』


『私も』


『一緒にいたい』


『僕は』


『明日が見たい』


『私は』


『帰りたい』


無数の願い。


でも。


今までとは違う。


誰か一人に。


集まっていない。


全部。


それぞれが。


それぞれのまま。


存在している。


「……」


俺は。


笑った。


「これなら」


「誰か一人が」


「全部背負わなくていい」


「うん」


アリアが。


頷く。


「みんなで」


ユウトも。


笑う。


「一緒に」


ハルが。


木を見上げる。


「これが」


「新しい世界?」


ルナが。


頷く。


「ううん」


「まだ」


「始まったばかり」


その言葉と同時に。


木の根元から。


大地が。


さらに広がっていく。


山が。


生まれた。


川が。


生まれた。


海が。


生まれた。


空が。


どんどん。


高くなる。


そして。


最後に。


太陽が。


生まれた。


「……」


俺は。


空を見る。


初めて。


この世界に。


朝が来る。


アサが。


嬉しそうに。


叫んだ。


『朝!』


太陽が。


世界を照らす。


その光の中。


俺たちは。


新しい世界を。


見つめていた。


けれど。


その時。


俺は。


一つ。


おかしなことに。


気づいた。


「……待って」


「どうした?」


アリアが。


俺を見る。


「人が」


「……」


「まだ」


「一人も」


「いない」


静寂。


そう。


世界は。


できた。


空も。


海も。


山も。


森も。


ある。


けれど。


命がない。


「……」


アサが。


不安そうに。


揺れる。


『誰も』


『いない』


ミライが。


木の幹に。


手を当てる。


「まだ」


「人間を」


「作ってないんだ」


「……」


俺は。


ルナを見る。


「ルナ」


「うん」


「昔」


「どうやって」


「命を作った?」


ルナは。


少し。


困った顔をする。


「……分からない」


「え?」


「私」


「最初の頃のこと」


「全部は」


「覚えてない」


「……」


「ただ」


ルナは。


木を見る。


「命は」


「私が」


「一人で作るものじゃない」


「じゃあ」


「みんなの」


「願いから」


「生まれた」


「……」


その時。


木の葉が。


一枚。


地面へ落ちた。


――ふわり。


葉は。


土の上で。


光になる。


そして。


光の中から。


小さな影が。


生まれた。


「……!」


小さな生き物。


四本足。


耳が長い。


俺たちを見ると。


首を傾げた。


『……?』


ミアが。


しゃがみ込む。


「かわいい……!」


その生き物は。


ミアの手を。


ぺろりと舐めた。


「ふふっ」


ミアが。


笑う。


その瞬間。


世界に。


初めて。


「笑い声」が。


生まれた。


すると。


木に。


新しい葉が。


一枚。


増えた。


「……!」


アサが。


喜ぶ。


『増えた!』


「なるほど」


俺は。


理解した。


「命は」


「願いから」


「生まれるんだ」


でも。


その時。


選択者が。


口を開いた。


「違う」


俺たちは。


振り返る。


選択者が。


木を見ている。


「命は」


「願いから生まれる」


「だが」


「それだけではない」


「……?」


男は。


空を見る。


「命は」


「自分自身で」


「願いを生む」


「……」


「最初の命が」


「最初の願いを」


「生む」


俺は。


その意味を。


考えた。


「つまり」


「命が」


「先なのか」


「願いが」


「先なのか」


選択者が。


頷く。


「そこに」


「答えはない」


「……」


「卵と鶏のようなものだ」


「始まりは」


「どちらか一つではない」


「じゃあ」


俺は。


木を見る。


「この世界も」


「もう」


「始まってる?」


選択者は。


答えない。


代わりに。


初めて。


俺たちへ。


背を向けた。


「私は」


「ここまでだ」


「……え?」


「この先は」


「私の役目ではない」


「待って」


俺は。


呼び止める。


選択者が。


振り返る。


「お前は」


「何者なんだ?」


長い沈黙。


そして。


男は。


答えた。


「私は」


「お前たちが」


「何度も」


「捨てようとしたもの」


「……」


「選択そのものだ」


「選択?」


「ああ」


男の身体が。


少しずつ。


光へ変わっていく。


「私は」


「選ぶことの」


「痛み」


「迷い」


「後悔」


「そして」


「喜び」


「そのすべて」


「……」


「だから」


男は。


最後に。


俺を見る。


「選ぶことを」


「恐れるな」


「……」


「間違えても」


「選び直せ」


そして。


消えた。


あとには。


一つの小さな鍵だけが。


残った。


俺は。


それを拾う。


「……鍵」


鍵には。


文字が刻まれている。


『選び直す』


俺は。


その鍵を。


胸元へ近づけた。


だが。


鍵は。


胸に入らなかった。


代わりに。


手の中で。


光へ変わった。


そして。


その光が。


世界樹へ。


吸い込まれていく。


――ドクン。


世界樹が。


大きく鳴った。


その瞬間。


遠くの海に。


一つの島が。


生まれた。


そして。


島の中央に。


一軒の家が。


建った。


「……家?」


俺は。


目を細める。


誰も。


建てていない。


なのに。


そこに。


家がある。


しかも。


妙に。


懐かしい。


「行ってみよう」


俺たちは。


島へ向かった。


家の前に。


立つ。


扉には。


小さな札。


そこに。


文字が刻まれている。


『最初の家』


「……」


俺は。


息を呑んだ。


さっき見た。


母さんの家。


けれど。


今度は。


少し違う。


その家には。


俺たち全員の。


名前が刻まれている。


レオン。


アリア。


ユウト。


セリア。


カイン。


ノア。


リナ。


セレナ。


ミア。


ユナ。


エレナ。


ルナ。


ハル。


ミライ。


そして。


最後に。


まだ。


名前のない。


小さな空白。


「……?」


俺は。


その空白を見る。


「これ」


「誰の?」


誰も。


答えない。


すると。


家の中から。


――コンコン。


扉を。


誰かが。


叩いた。


「……」


俺たちは。


顔を見合わせる。


コンコン。


もう一度。


今度は。


少し強く。


「誰?」


俺が。


尋ねる。


返事はない。


けれど。


扉の下から。


小さな紙が。


滑り出てきた。


俺は。


拾う。


そこには。


たった一行。


『まだ生まれていない、最後の一人より』


「……!」


俺は。


息を止めた。


そして。


扉の向こうから。


小さな声がした。


『レオン』


「……」


『今度は』


『私を』


『忘れないでね』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。