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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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66/132

第66話 願いが生まれた場所

白い。


どこまでも。


白い。


空もない。


地面もない。


遠くもない。


近くもない。


上下すら。


存在していない。


そんな場所だった。


俺たちは。


ただ。


白い空間の中に。


立っていた。


「……」


誰も。


何も言わない。


言葉そのものが。


この場所では。


意味を持たないような。


そんな感覚だった。


俺は。


自分の手を見る。


ちゃんとある。


足もある。


アリアもいる。


ユウトも。


セリアも。


みんな。


確かに存在している。


なのに。


どこか。


現実ではない。


そんな場所。


そして。


その中央に。


巨大な目がある。


黒い瞳。


白い瞳孔。


いや。


正確には。


白い空間の中に。


黒い円が一つ。


浮かんでいる。


それだけだった。


『――レオン』


声が。


直接。


頭の中へ響く。


俺は。


剣を抜いた。


「お前は」


『……』


「誰だ?」


しばらく。


返事がなかった。


そして。


巨大な目が。


ゆっくり。


閉じる。


『私は』


『名前を持たない』


「……」


『名前というものが』


『生まれる前から』


『ここにいた』


原初が。


息を呑んだ。


「……」


俺は。


原初を見る。


「知ってるのか?」


原初は。


首を横に振った。


「知らない」


「……」


「だが」


原初が。


目を細める。


「私が生まれる前から」


「存在していた」


「……」


観測者が。


静かに呟く。


「世界の外側より」


「さらに外……」


エレナも。


黙ったままだ。


そして。


ユナが。


俺の服を掴む。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「怖い」


「……」


俺は。


ユナの頭に手を置いた。


「大丈夫」


「本当に?」


「ああ」


俺は。


前を見る。


「みんな一緒だから」


その言葉に。


巨大な目が。


わずかに揺れた。


『……そうか』


『お前は』


『そこまで来ても』


『一人ではないのか』


「当たり前だ」


『……』


「俺一人で」


「全部を背負うのは」


「もうやめた」


『そうか』


声が。


少しだけ。


寂しそうに聞こえた。


「お前は」


「俺の願いが生まれた場所だと言ったな」


『そう』


「どういう意味だ?」


『お前の願いは』


『お前から生まれた』


「……?」


『だが』


『最初から』


『お前だけのものではなかった』


俺は。


眉を寄せる。


『願いとは』


『一人の心から生まれるものではない』


『誰かを想う心』


『失いたくないという心』


『一緒にいたいという心』


『そういうものが』


『重なった時』


『初めて』


『願いになる』


「……」


俺は。


胸の光に触れた。


『お前が』


『ユウトを助けたいと願った』


『その瞬間』


『ユウトも』


『お前と生きたいと願っていた』


「……!」


ユウトが。


目を見開く。


『その二つが』


『重なった』


『だから』


『願いが生まれた』


「じゃあ……」


俺は。


拳を握る。


「俺の最初の願いは」


『お前だけのものではない』


『ユウトとの』


『二人の願いだった』


ユウトが。


俺を見る。


そして。


小さく笑った。


「……そうだったんだ」


「ユウト」


「俺」


「ずっと」


「兄ちゃんに助けてもらったって思ってた」


「……」


「でも」


ユウトは。


自分の胸に手を当てる。


「俺も」


「兄ちゃんと一緒にいたいって」


「願ってたんだね」


「ああ」


俺は。


頷いた。


「だから」


「二人の願いだった」


『違う』


巨大な目が。


突然。


否定した。


「……え?」


『二人だけではない』


空間が。


揺れた。


白い世界に。


一つ。


小さな光が現れる。


それは。


俺たちが。


今まで出会った人々だった。


セリア。


アリア。


カイン。


ノア。


リナ。


セレナ。


ミア。


ユナ。


エレナ。


観測者。


原初。


そして。


これまでの。


百七十二の世界にいた。


無数の人々。


『願いは』


『一人から』


『二人へ』


『二人から』


『十人へ』


『十人から』


『世界へ』


『世界から』


『無数の未来へ』


光が。


広がっていく。


「……」


俺は。


言葉を失った。


『お前が』


『何度も』


『世界を繰り返した理由』


『それは』


『願いが』


『お前一人に』


『集まりすぎたからだ』


「……!」


原初が。


目を伏せる。


「だから」


「私が」


「管理する必要があった」


『違う』


巨大な目が。


原初を見る。


『お前も』


『同じ間違いをした』


原初が。


黙る。


『願いを』


『一人に集めてはいけない』


『管理するものでもない』


『支配するものでもない』


『ましてや』


『犠牲で叶えるものでもない』


「……」


俺は。


静かに。


息を吐いた。


「じゃあ」


俺は。


巨大な目を見る。


「お前は」


「何のために」


「願いを生み出した?」


『……』


「何を望んだ?」


長い。


沈黙。


巨大な目が。


ゆっくり。


閉じる。


そして。


初めて。


その声に。


感情が混じった。


『――寂しかった』


「……」


誰も。


動かなかった。


『私は』


『何もない場所に』


『最初から』


『存在していた』


『世界もない』


『時間もない』


『命もない』


『誰もいない』


『ただ』


『存在していた』


「……」


『だから』


『私は』


『誰かと』


『一緒にいたいと思った』


「……」


『だが』


『私には』


『誰かがいなかった』


『そこで』


『最初の光を』


『作った』


巨大な目の前に。


小さな光が。


生まれる。


それは。


人の形をしていた。


『それが』


『最初の命』


「……」


さらに。


一つ。


また一つ。


光が増えていく。


世界。


大地。


空。


海。


星。


命。


『私は』


『一つずつ』


『作った』


『そして』


『最後に』


『願いを作った』


「どうして?」


『命に』


『私と同じものを』


『持たせたかった』


「同じもの?」


『誰かと』


『一緒にいたいという心』


「……」


『私は』


『それを』


『願いと呼んだ』


俺は。


しばらく。


何も言えなかった。


つまり。


この世界の。


すべての始まりは。


孤独だった。


誰かと。


一緒にいたい。


ただ。


それだけ。


それが。


世界を生み。


命を生み。


願いを生んだ。


でも。


その願いは。


長い年月の中で。


いつの間にか。


仕組みに変わった。


管理され。


制御され。


選択を強いられ。


犠牲を要求するものに。


「……なあ」


俺は。


聞いた。


『何だ?』


「じゃあ」


「お前は」


「今」


「寂しくないのか?」


巨大な目が。


止まった。


『……』


「俺たちが」


「ここにいる」


「原初も」


「観測者も」


「エレナも」


「みんな」


「ここにいる」


「だったら」


俺は。


笑った。


「もう」


「一人じゃないだろ」


『……』


巨大な目が。


震えた。


そして。


その中心から。


一滴。


光が落ちた。


涙だった。


『……なぜ』


「え?」


『なぜ』


『お前は』


『私を』


『救おうとする?』


「……」


俺は。


少し考えた。


そして。


答えた。


「分からない」


『……』


「でも」


俺は。


ユウトを見る。


アリアを見る。


みんなを見る。


「一人で苦しんでるなら」


「放っておけない」


「……」


「それだけだ」


巨大な目が。


ゆっくり。


小さくなる。


そして。


その中央から。


一人の少女が。


姿を現した。


白い髪。


白い服。


裸足。


年齢は。


十歳くらい。


エレナと。


ユナと。


同じくらい。


少女は。


俺の前へ。


ゆっくり。


歩いてくる。


「……」


そして。


俺の前で。


立ち止まった。


「あなたが」


「ずっと」


「一人だったの?」


少女は。


頷いた。


「うん」


「名前は?」


少女は。


首を横に振る。


「ない」


「じゃあ」


俺は。


少し考える。


「名前」


「欲しい?」


少女は。


驚いた顔をした。


そして。


小さく。


頷いた。


「……欲しい」


俺は。


エレナを見る。


エレナも。


頷いている。


ユナも。


笑っている。


「だったら」


俺は。


少女に言った。


「自分で決めていい」


「……え?」


「俺が決めるんじゃない」


「お前が」


「自分で選ぶ」


少女は。


長い間。


考えていた。


そして。


空を見上げる。


「……ルナ」


「ルナ?」


「うん」


少女は。


胸に手を当てる。


「この名前」


「好き」


「じゃあ」


俺は。


笑う。


「今日から」


「ルナだな」


「……うん」


ルナが。


笑った。


その瞬間。


白い世界に。


光が。


一気に広がった。


『名前』


『願い』


『選択』


『未来』


それらが。


一つの光になっていく。


原初が。


呟く。


「……新しい世界が」


「生まれる」


「え?」


世界の外側が。


大きく。


揺れた。


何もなかった白い空間に。


線が一本。


引かれる。


そこから。


大地が生まれる。


空が生まれる。


星が生まれる。


そして。


世界樹が。


生まれる。


「……」


俺は。


息を呑んだ。


目の前で。


一つの世界が。


生まれていく。


ルナが。


俺の手を握った。


「レオン」


「ん?」


「この世界」


「どうする?」


「……」


俺は。


周りを見る。


みんなが。


こちらを見ている。


俺は。


笑った。


「俺たちだけの世界には」


「しない」


「……?」


「この世界も」


「誰かが」


「自由に」


「未来を選べる世界にする」


アリアが。


笑う。


「レオンらしいね」


「そうかな?」


「うん」


ユウトも。


頷く。


「兄ちゃんは」


「もう」


「一人で世界を作らなくていい」


「ああ」


俺は。


頷く。


「みんなで作ろう」


その時。


生まれたばかりの世界に。


一つの鐘の音が。


響いた。


――カァン。


「……?」


空を見る。


そこに。


文字が浮かんだ。


『新世界――誕生』


その下に。


もう一行。


『世界名を入力してください』


「……」


全員が。


俺を見る。


「え?」


リナが。


笑う。


「レオンが決めれば?」


「いやいや」


「こういうのは」


「みんなで決めるだろ」


カインが。


腕を組む。


「俺は何でもいい」


ノアが。


「静かな世界がいい」


セリアが。


「温かい世界がいいな」


セレナが。


「未来を選べる世界」


ミアが。


「笑える世界」


ユナが。


「一緒にいられる世界」


エレナが。


「可能性がある世界」


観測者が。


少し考えて。


「観測する必要のない世界」


原初が。


「願いを管理しない世界」


ルナが。


小さく。


呟いた。


「……みんな」


「……」


「みんなが」


「一緒にいられる」


「そんな世界」


俺は。


その言葉を聞いて。


笑った。


「それなら」


みんなで。


同じ名前を。


言った。


「――絆の世界」


文字が。


光る。


『世界名――絆』


その瞬間。


新しい世界に。


太陽が昇った。


暖かな光が。


俺たちを照らす。


俺は。


その光を。


手で遮りながら。


空を見上げた。


「……綺麗だな」


ユウトが。


隣に立つ。


「うん」


アリアも。


反対側に立つ。


「ここから」


「また始まるね」


「ああ」


俺は。


頷いた。


長い旅だった。


何度も。


世界を壊した。


何度も。


間違えた。


何度も。


選び直した。


そして。


今。


俺たちは。


新しい世界に。


立っている。


でも。


俺は。


分かっていた。


これで。


すべてが終わったわけじゃない。


むしろ。


ここからが。


本当の始まりなのだと。


その時。


空の彼方に。


小さな亀裂が。


一つ。


生まれた。


「……?」


俺は。


それを見る。


亀裂の向こうから。


何かが。


こちらを見ていた。


ルナが。


小さく。


呟く。


「……あれ」


「何?」


「知らない」


「……」


「でも」


ルナの顔から。


笑顔が消える。


「私が」


「まだ」


「願いを作る前に」


「見たことがある」


「……何を?」


ルナは。


震える声で。


答えた。


「――誰かが」


「この世界を」


「待ってる」


俺の胸の。


二つの光が。


同時に。


強く輝いた。


そして。


亀裂の向こうから。


聞こえた。


『――やっと』


『世界が』


『完成した』


俺は。


剣を抜いた。


「……」


新しい世界。


新しい未来。


そして。


まだ見ぬ存在。


俺たちの旅は。


まだ。


終わっていなかった。

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