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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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53/132

第53話 七十二時間の世界

残り時間――71:58:31


空に浮かんだ数字は。


一秒ごとに。


確実に減っていた。


「……七十二時間」


アリアが。


空を見上げる。


「たった三日で」


「この世界を救わないといけないってこと?」


「そういうことになる」


俺は答えた。


目の前には。


もう一人の俺。


世界樹と融合した。


百七十三番目の世界のレオン。


そして。


俺たちの後ろには。


アリア。


セリア。


セレナ。


ノア。


エリス。


カイン。


リナ。


ミア。


そして。


ユナ。


全員がいる。


「まず」


俺は。


世界樹の中心を見る。


「世界核っていうのが」


「何なのか調べよう」


「賛成」


セレナが頷いた。


「原初が残した情報なら」


「何か手がかりがあるはずです」


「でも」


カインが。


眉をひそめる。


「この世界には」


「原初の気配がない」


「ああ」


俺も。


感じていた。


この世界には。


原初がいない。


いや。


正確には。


もう。


必要とされていないのかもしれない。


この世界は。


別の仕組みで。


動いている。


「……」


ユナが。


世界樹を見上げる。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「世界樹の中に」


「町があるよ」


「町?」


「うん」


ユナは。


目を閉じる。


「前に」


「みんなが住んでいた場所」


「今は」


「世界樹の中に」


「閉じ込められてる」


「……」


俺は。


もう一人の俺を見る。


「本当か?」


「ああ」


「俺が」


「そうした」


「なぜ?」


「世界を」


「守るためだ」


「……」


もう一人の俺は。


静かに。


語り始めた。


「この世界は」


「何度も」


「壊れかけた」


「魔力が暴走し」


「土地が腐り」


「海が消え」


「空が割れた」


「そのたびに」


「俺は」


「世界樹の中へ」


「人々を避難させた」


「そして」


「世界樹を」


「自分自身と」


「繋げた」


「……」


「最初は」


「少しだけだった」


「でも」


「一人を守るたびに」


「俺の中に」


「その人の願いが」


「増えていった」


「やがて」


「世界中の願いが」


「俺の中に」


「集まった」


「だから」


「俺が」


「世界そのものになった」


俺は。


拳を握る。


「……まただ」


「何が?」


アリアが聞く。


「願いだ」


「一人の願いを」


「誰かが叶えるんじゃない」


「みんなの願いを」


「一人が背負ってる」


セリアが。


静かに頷く。


「百七十二の世界と」


「同じ構造……」


「そう」


俺は。


世界樹を見る。


「だから」


「こいつを」


「切り離すだけじゃ」


「意味がない」


「世界そのものが」


「また誰か一人を」


「必要とする」


もう一人の俺が。


苦笑した。


「だから」


「俺は」


「世界そのものになった」


「……」


「他の方法が」


「思いつかなかったからな」


俺は。


しばらく。


黙っていた。


そして。


ふと。


気づいた。


「なあ」


「何だ?」


「お前」


「世界樹に」


「全部の願いを」


「集めたんだよな?」


「ああ」


「だったら」


「逆に」


「すればいい」


「……?」


俺は。


世界樹へ。


手を伸ばした。


「一人に」


「集めるんじゃなくて」


「全部」


「返す」


「……!」


セレナが。


目を見開く。


「願いを」


「世界中に」


「分散させる……?」


「そう」


「でも」


カインが。


言う。


「この世界には」


「もう人が」


「ほとんど残ってない」


「だから」


俺は。


ユナを見る。


「ユナ」


「はい」


「この世界には」


「まだ人がいるんだよな?」


「……うん」


「どれくらい?」


ユナは。


少し考える。


「分からない」


「でも」


「世界樹の中に」


「たくさんいる」


「みんな」


「眠ってる」


「眠ってる?」


「お兄ちゃんが」


「世界を守るために」


「眠らせたの」


もう一人の俺が。


目を伏せる。


「起こせば」


「この世界は」


「再び壊れるかもしれない」


「でも」


俺は言った。


「起こさなきゃ」


「この世界は」


「ずっと」


「お前一人の夢の中だ」


「……」


「それは」


「世界を守ったことには」


「ならない」


もう一人の俺は。


長い間。


黙っていた。


そして。


小さく笑った。


「……そうだな」


「やってみるか」


「……ああ」


その瞬間。


世界樹の根元から。


眩い光が。


走った。


――ズズズズズ……。


大地が。


震える。


世界樹の枝が。


大きく揺れた。


そして。


遠くから。


鐘のような音が。


響いた。


――ゴォォォン。


一度。


二度。


三度。


世界中に。


響いていく。


「何?」


ミアが。


耳を塞ぐ。


「これは……」


セリアが。


目を閉じる。


「人の気配……!」


「どこ?」


「世界樹の中です!」


「……!」


俺は。


世界樹へ。


駆け寄る。


巨大な幹に。


無数の光が。


浮かび上がっていた。


一つ。


二つ。


十。


百。


千。


数え切れない。


光。


それぞれが。


一つの命。


一つの願い。


一つの人生。


「……こんなに」


アリアが。


呟く。


「まだ」


「残ってたんだ」


「うん」


ユナが。


涙を流す。


「ずっと」


「眠ってた」


「みんな」


「ずっと」


「お兄ちゃんが」


「守ってくれてたから」


もう一人の俺が。


目を閉じる。


「……俺は」


「みんなを」


「失いたくなかった」


「だから」


「閉じ込めた」


「でも」


「その結果」


「みんなから」


「未来を奪った」


俺は。


首を横に振った。


「違う」


「……?」


「お前は」


「未来を奪ったんじゃない」


「未来を」


「守ろうとした」


「ただ」


「一人で」


「やりすぎたんだ」


もう一人の俺は。


少しだけ。


笑った。


「……お前」


「本当に」


「昔の俺とは」


「違うな」


「そうか?」


「ああ」


「昔の俺なら」


「絶対」


「そんなこと」


「言えなかった」


「……」


俺は。


手を差し出した。


「じゃあ」


「一緒に」


「やろう」


「……ああ」


二人の手が。


重なる。


その瞬間。


十個の鍵が。


一斉に。


輝いた。


――パァァァァァッ!!


世界樹の内部に。


巨大な魔法陣が。


現れる。


しかし。


その中心には。


一つの文字が。


浮かんだ。


『条件不足』


「……?」


俺は。


眉をひそめる。


「何が足りない?」


文字が。


変化する。


『共有された願いが必要』


「共有された願い……」


セリアが。


呟く。


「みんなが」


「同じ未来を」


「願う必要があるってこと?」


「たぶん」


「でも」


アリアが。


言う。


「そんなの」


「無理じゃない?」


「……」


俺も。


そう思った。


人間は。


一人一人。


違う。


願いも違う。


未来も違う。


だからこそ。


俺たちは。


百七十二の世界を。


失った。


「……」


俺は。


目を閉じた。


そして。


思い出す。


ユウトの言葉。


――俺は、兄ちゃんに救ってほしかったんじゃない。


――一緒に生きたかったんだ。


「……違う」


俺は。


呟いた。


「願いを」


「同じにする必要なんて」


「ない」


「え?」


アリアが。


俺を見る。


「願いの形は」


「違っていい」


「でも」


「その先に」


「同じものがある」


俺は。


世界樹に。


手を当てる。


「生きたい」


一つの光が。


輝く。


「誰かと」


「一緒にいたい」


また。


一つ。


「大切な人を」


「守りたい」


また。


一つ。


「明日を」


「見たい」


光が。


増えていく。


「笑いたい」


「帰りたい」


「家族に会いたい」


「友達と話したい」


「好きな人といたい」


「もう一度」


「やり直したい」


違う。


全部。


違う。


なのに。


その願いの先には。


一つだけ。


共通しているものがあった。


「――生きたい」


世界樹が。


震えた。


「……!」


光が。


一斉に。


輝き始める。


そして。


世界中から。


声が。


聞こえた。


『生きたい』


『生きたい』


『生きたい』


無数の声。


重なって。


世界を揺らす。


『明日がほしい』


『もう一度』


『誰かと』


『笑いたい』


『生きたい』


もう一人の俺が。


目を見開く。


「……これが」


「共有された願い……」


「ああ」


俺は。


笑った。


「願いは」


「同じじゃなくていい」


「同じ未来を」


「見なくてもいい」


「ただ」


「生きたいという気持ちだけは」


「きっと」


「誰もが持ってる」


その瞬間。


魔法陣が。


完成した。


『条件――成立』


だが。


次の文字が。


浮かび上がる。


俺は。


それを見て。


息を呑んだ。


『世界核を形成します』


『必要な核――二つ』


『第一核――世界』


『第二核――レオン』


「……」


俺は。


もう一人の俺を見る。


そして。


次の文字を読む。


『二つの核を接続します』


『接続後、二つの核は分離不能となります』


『世界核とレオンは、永遠に一体化します』


「……」


空気が。


凍った。


「それって」


アリアが。


震える声で。


言う。


「結局」


「レオンが」


「この世界から」


「離れられなくなるってこと?」


セレナが。


答えを失う。


俺は。


もう一人の俺を見る。


「……」


彼は。


静かに。


頷いた。


「そういうことだ」


「……」


「俺は」


「ここに残る」


「違う」


「レオン」


アリアが。


俺を見る。


「やめて」


「……」


「また」


「同じことを」


「しないで」


「……」


俺は。


空を見上げる。


残り時間。


61:43:18


まだ。


六十一時間。


けれど。


もう。


分かってしまった。


この世界は。


また。


俺に。


犠牲を。


求めている。


いや。


正確には。


世界が求めているわけじゃない。


仕組みそのものが。


そうなっている。


「……」


俺は。


拳を握った。


「絶対に」


「この条件は」


「受けない」


もう一人の俺が。


笑う。


「そう言うと思った」


「……」


「だから」


「俺から」


「一つ」


「提案がある」


「何だ?」


もう一人の俺は。


胸の中にある。


世界樹の核へ。


手を伸ばした。


そして。


自分の胸から。


小さな光を。


取り出した。


「これを」


「二つに分ける」


「……?」


「俺と」


「お前で」


「半分ずつ」


「それなら」


「どちらも」


「完全な世界核には」


「ならない」


「……」


「だから」


「もう一つ必要になる」


「誰かの願いが」


「……まさか」


俺が。


ユナを見る。


ユナは。


驚いた顔で。


俺たちを見ていた。


そして。


彼女の胸元にある。


黒い石が。


輝き始める。


――キィィィン。


ユナが。


石を握る。


「……これ」


「俺が」


「昔」


「お前に渡したっていう」


「石か?」


「うん」


その黒い石の中に。


銀色の光が。


浮かび上がる。


すると。


どこからか。


声が聞こえた。


『第三核を確認』


「……!」


全員が。


振り向く。


ユナの周囲に。


無数の光が。


集まっていく。


そして。


新しい文字が。


空に浮かぶ。


『第三核――願い』


俺は。


息を呑んだ。


「第三核……?」


すると。


ユナが。


俺を見る。


「お兄ちゃん」


「ん?」


「私」


「願いがある」


「……」


ユナは。


涙を浮かべながら。


笑った。


「みんなで」


「一緒に」


「生きたい」


その瞬間。


世界中の光が。


一斉に。


輝いた。


『第三核――成立』


そして。


空に。


新たな数字が。


浮かび上がる。


60:00:00


世界核形成まで。


残り六十時間。


俺たちの戦いは。


まだ。


始まったばかりだった。


だが。


そのとき。


世界樹の遥か上空で。


何かが。


ゆっくりと。


目を開いた。


――赤い瞳。


世界樹よりも。


さらに巨大な。


何か。


そして。


世界全体を見下ろしながら。


そいつは。


静かに。


笑った。


『……ようやく』


『見つけた』


『私の世界を』

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