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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第48話 最初の願い

――風が吹いた。


懐かしい風だった。


冷たくて。


少しだけ。


寂しい。


そんな風。


俺は。


その感触を知っている。


「……ここ」


足元を見る。


崩れかけた大地。


ひび割れた石畳。


遠くに見える。


半分崩壊した城。


「……帰ってきた」


百七十二番目の世界。


俺が。


全てを失った世界。


そして。


世界を作り直した場所。


「レオン……」


アリアが。


隣に立つ。


「大丈夫?」


「ああ」


「本当に?」


「……たぶん」


俺は。


苦笑した。


「正直」


「少し怖い」


アリアが。


驚いた顔をする。


「レオンが?」


「ああ」


「……意外」


「俺だって怖いものくらいある」


「そうね」


アリアは。


少し笑った。


「でも」


「今は」


「私たちがいる」


「……」


その言葉に。


胸が温かくなった。


「そうだな」


セレナ。


ノア。


エリス。


カイン。


リナ。


ミア。


セリア。


そして。


祖父。


全員が。


この世界へ来ている。


俺は。


周囲を見渡した。


「ここで」


「俺は」


「世界を作り直したんだな」


『そうだ』


祖父が。


答えた。


『正確には』


『お前が』


『最後の力を使った場所だ』


「……」


俺は。


ゆっくり。


歩き始める。


足元に。


小さな石が転がっている。


拾う。


ただの石。


なのに。


触れた瞬間。


頭の中に。


映像が流れた。


――笑っている俺。


――隣にいる父さん。


――母さん。


――セリア。


――ユウト。


――アリア。


みんなで。


食卓を囲んでいる。


「……」


俺は。


石を落とした。


「今のは?」


セリアが。


聞く。


「昔の記憶だ」


「……」


セリアも。


目を伏せる。


「私も」


「見えた」


「何が?」


「家族で」


「食事してた」


「……」


誰も。


言葉を発しなかった。


しばらく歩く。


すると。


街の中心に。


大きな建物が見えてきた。


「……あれ」


俺は。


立ち止まる。


「俺の家だ」


「え?」


アリアが。


驚く。


「こんな場所に?」


「ああ」


「一度目の世界では」


「ここに住んでた」


俺は。


家の前に立つ。


扉は。


半分壊れている。


だけど。


まだ残っている。


「……」


手を伸ばす。


――ギィ。


扉が。


開いた。


中は。


埃だらけ。


家具も。


ほとんど残っていない。


それでも。


俺には。


全部。


分かった。


「ここが」


「俺の部屋」


「ここが」


「母さんの部屋」


「こっちは」


「セリア」


「……」


そして。


一番奥。


小さな部屋。


「……ユウト」


その名前を。


口にした瞬間。


部屋の中から。


声がした。


『レオン』


「……!」


振り返る。


誰もいない。


「今」


「聞こえた?」


ノアが。


頷く。


「うん」


『レオン』


また。


聞こえる。


今度は。


はっきり。


俺自身の声。


『こっちだ』


「……!」


俺は。


部屋の奥へ。


進む。


壁に。


小さな亀裂がある。


そこへ。


手を当てる。


――ゴゴゴゴゴ。


壁が。


動いた。


隠し部屋。


その奥に。


一つの箱が。


置いてあった。


「……」


箱には。


文字が。


刻まれている。


――『レオンへ』


俺は。


息を呑んだ。


「俺が」


「残したのか……?」


祖父が。


頷く。


『そうだ』


『世界を作り直す直前』


『お前は』


『自分自身へ』


『メッセージを残した』


俺は。


箱を。


開ける。


中には。


一枚の紙。


そして。


小さな。


黒い石。


紙を。


手に取る。


文字を。


読む。


そこには。


たった一行。


こう書かれていた。


――『もし、この世界をもう一度やり直せたなら、今度は誰も犠牲にしないでほしい』


「……」


俺は。


黙った。


セリアが。


隣から。


紙を見る。


「……」


「これが」


「最初の願い?」


祖父が。


答える。


『違う』


「……え?」


『これは』


『お前が』


『最後に残した願いだ』


「じゃあ」


「最初の願いは?」


祖父は。


黒い石を。


指差した。


『それだ』


「……」


俺は。


石を。


手に取る。


その瞬間。


――ドクン。


心臓が。


鳴った。


世界が。


揺れる。


そして。


映像が。


流れ込んできた。


---


まだ。


何も。


失っていなかった頃。


俺は。


小さな子供だった。


父さん。


母さん。


ユウト。


セリア。


家族全員が。


一緒にいる。


俺は。


泣いていた。


「……どうして?」


幼い俺が。


言っている。


父さんが。


俺の頭を撫でる。


『どうした?』


「ユウトが」


「病気になった」


「……」


ユウトは。


ベッドに。


寝ていた。


顔色が。


悪い。


母さんが。


泣いている。


セリアも。


泣いている。


俺は。


必死に。


祈った。


「神様」


「お願い」


「ユウトを」


「助けて」


「俺の命を」


「あげてもいいから」


「ユウトを」


「助けて」


――。


俺は。


息を呑んだ。


「……」


これが。


最初の願い。


世界を救いたい。


でも。


その前。


もっと。


もっと。


小さな頃。


俺は。


たった一人を。


救いたかった。


ユウトを。


そして。


映像が。


変わる。


ユウトが。


元気になる。


家族が。


笑う。


俺も。


笑う。


だが。


その直後。


空が。


黒く染まった。


世界樹が。


暴走する。


魔物が。


溢れ出す。


世界が。


壊れていく。


そして。


幼い俺が。


叫んでいる。


「なんで!」


「ユウトを助けたのに!」


「どうして!」


『――願いには』


誰かの声。


『必ず』


『代償がある』


「……!」


俺は。


その映像を。


見ながら。


理解した。


ユウトが。


助かった代わりに。


世界のどこかで。


何かが。


失われた。


その連鎖が。


始まった。


ユウトを救う。


↓


世界が歪む。


↓


世界を救う。


↓


誰かが犠牲になる。


↓


犠牲をなくす。


↓


世界そのものを作り直す。


そして。


百七十二回。


繰り返した。


「……」


俺は。


石を握る。


「全部」


「ここから」


「始まったんだ」


セリアが。


泣いていた。


「……ごめん」


「なんで?」


「私」


「何も知らなかった」


「あなたが」


「ずっと」


「こんなことを」


「一人で……」


「セリア」


俺は。


首を振る。


「違う」


「……」


「最初から」


「一人じゃなかった」


「家族がいた」


「ユウトがいた」


「そして」


俺は。


仲間を見る。


「今も」


「みんながいる」


そのとき。


――ドン。


地面が。


揺れた。


「……!」


全員が。


武器を構える。


壁が。


崩れる。


そして。


家の外から。


黒い霧が。


入ってくる。


「何だ!?」


カインが。


叫ぶ。


黒い霧が。


人の形へ。


変わっていく。


一人。


二人。


十人。


百人。


そして。


その全員が。


俺と同じ顔だった。


「……!」


アリアが。


絶句する。


「レオン……?」


違う。


全員。


レオン。


それぞれ。


違う服。


違う武器。


違う傷。


違う表情。


だが。


全部。


俺だった。


祖父が。


震える。


『……来たか』


「何が?」


『百七十二回分の』


『失敗したお前だ』


「……!」


黒いレオンたちが。


一斉に。


剣を構える。


そして。


中央の一人が。


口を開いた。


『俺たちは』


『お前が』


『捨てた未来』


『お前が』


『見なかったことにした人生』


『そして』


『最後まで』


『救えなかった』


『可能性だ』


俺は。


剣を握る。


「……」


数え切れない。


自分。


それぞれが。


違う人生を。


生きた俺。


その全てが。


今。


俺の前にいる。


中央のレオンが。


笑う。


『さあ』


『最後の願いを』


『叶えてみろ』


『百七十二人の』


『お前を』


『救えるか?』


俺は。


黙って。


その光景を見る。


そして。


剣を。


下ろした。


「……戦わない」


『何?』


「俺は」


「お前たちを」


「倒さない」


『……』


「救う」


『……どうやって?』


「決まってる」


俺は。


一歩。


前へ出た。


「全員」


「俺だから」


「だから」


「全部」


「連れていく」


その瞬間。


俺の胸の中で。


十個の光が。


輝いた。


そして。


世界そのものが。


大きく。


揺れ始めた。


祖父が。


叫ぶ。


『レオン!』


「何!?」


『それをやれば』


『世界が――』


その言葉を。


最後まで。


聞くことはできなかった。


――世界が。


真っ白になった。


そして。


俺の耳元で。


誰かが。


囁いた。


『――最後の扉を』


『開ける資格を』


『お前に与える』


俺は。


目を開く。


目の前に。


巨大な扉。


その扉には。


今まで見たことのない。


文字が。


刻まれていた。


――『願い』


俺は。


扉の前に立つ。


そして。


ゆっくり。


手を伸ばした。


「……今度こそ」


「誰も」


「犠牲にしない」


扉に。


触れる。


――カチッ。


鍵が。


回った。


その瞬間。


百七十二人の俺が。


一斉に。


こちらを見る。


そして。


全員が。


同じ言葉を口にした。


『――俺たちの未来を』


『お前に託す』


光が。


世界を。


包み込んだ。


そして。


扉の向こうから。


最後の存在が。


姿を現す。


それは。


人間だった。


俺でもない。


原初でもない。


終焉王でもない。


けれど。


俺は。


その顔を。


知っていた。


「……ユウト?」


違う。


ユウトより。


さらに。


古い。


その人物は。


静かに。


笑った。


『ようやく』


『ここまで来たか』


『我が願いを継ぐ者よ』


そして。


俺たちの前に。


最後の敵――


いや。


最後の「願い」が。


姿を現した。

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