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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第45話 反転した可能性

「――レオン」


その声を聞いた瞬間。


身体が。


勝手に反応した。


剣を構える。


目の前にいるのは。


俺と同じ顔。


俺と同じ声。


そして。


俺と同じ力を持っている。


ただ一つ違うのは。


その瞳だった。


冷たい。


何も映していない。


まるで。


感情そのものを。


捨ててしまったような目。


「お前は……」


黒い剣を握った少年が。


笑う。


「そう警戒するなよ」


「……」


「俺は」


「お前なんだから」


「だからこそ」


俺は。


剣先を向けた。


「信用できない」


「ははっ」


黒いレオンが。


楽しそうに笑った。


「そうだよな」


「俺だって」


「お前を信用してない」


「……」


「だって」


黒いレオンは。


ゆっくりと。


剣を構えた。


「俺たちは」


「同じ結末を」


「何度も繰り返してきたんだから」


「……!」


老人が。


口を開く。


『反転した可能性』


『それは』


『お前が選ばなかった未来の集合体だ』


「選ばなかった未来……?」


『そう』


『お前が』


『一つの未来を選ぶたび』


『選ばれなかった未来は』


『消える』


『だが』


『完全に消えるわけではない』


「……」


『世界の外側へ』


『蓄積されていく』


『それが』


『反転した可能性だ』


俺は。


黒いレオンを見る。


「じゃあ」


「こいつは」


「俺が選ばなかった未来……?」


『その通り』


黒いレオンが。


笑う。


「正確には」


「お前が捨ててきた」


「百七十二回分の」


「可能性だ」


「……!」


「俺は」


「その全部を」


「知っている」


黒い剣が。


黒い炎を纏う。


「お前が」


「家族を守れなかった未来も」


「仲間を裏切った未来も」


「世界を救えなかった未来も」


「全部」


「俺の中にある」


「……」


「だから」


黒いレオンは。


一歩。


踏み込んだ。


「俺は」


「お前より」


「ずっと」


「お前を知ってる」


――ドンッ!!


速い。


「――っ!」


俺は。


ギリギリで。


剣を合わせた。


――キィィィン!!


「ぐっ……!」


力も。


同じ。


速度も。


同じ。


技も。


同じ。


なら。


どうやって。


勝つ?


「遅い」


「……!」


黒いレオンが。


剣を返す。


――ガキィン!!


「くっ!」


俺の剣が。


弾かれる。


そのまま。


黒い剣が。


俺の肩を掠めた。


「レオン!」


セレナが。


叫ぶ。


「大丈夫!」


俺は。


後ろへ跳ぶ。


傷は。


浅い。


「……なるほど」


俺は。


剣を握り直した。


「お前」


「俺の技を」


「全部知ってるんだな」


「そういうこと」


「なら」


俺は。


剣を。


構える。


「俺も」


「お前の技を」


「知ってる」


「……!」


――踏み込む。


「――《流星斬》!」


黒いレオンも。


同じ技を使う。


――ズバァァァン!!


二つの斬撃が。


正面から。


ぶつかる。


「――っ!」


爆風。


光。


黒い炎。


俺たちは。


同時に。


後ろへ飛んだ。


「……」


「……」


互いに。


無傷。


黒いレオンが。


笑った。


「やっぱり」


「こうなるか」


「……」


「なら」


黒いレオンが。


剣を。


逆手に持ち替える。


「次は」


「これだ」


「……!」


見覚えがある。


あの構え。


一度目の世界で。


俺が。


最も強かった頃。


「――《終焉剣》」


空気が。


凍った。


「その技……」


「知ってるだろ?」


黒いレオンが。


笑う。


「お前が」


「世界を壊した技だ」


「……!」


黒い炎が。


膨れ上がる。


――ゴォォォォォ!!


「レオン!」


セリアが。


俺の前へ。


出ようとする。


「下がって!」


「でも!」


「これは」


「俺の戦いだ」


俺は。


一歩。


前へ出た。


「……」


そして。


剣を。


ゆっくり。


下げる。


「何?」


黒いレオンが。


首を傾げる。


「戦わないの?」


「ああ」


「……」


「俺は」


「その技を」


「もう使わない」


「怖い?」


「違う」


俺は。


首を振る。


「必要ないからだ」


「……何?」


「一度目の俺は」


「一人で戦った」


「だから」


「この技が必要だった」


「……」


「でも」


俺の後ろを見る。


アリア。


ノア。


セレナ。


エリス。


カイン。


リナ。


ミア。


そして。


セリア。


「今の俺には」


「仲間がいる」


黒いレオンが。


顔をしかめる。


「仲間……」


「ああ」


「そんなもの」


「いずれ失う」


「……」


「だから」


黒いレオンが。


叫ぶ。


「お前はまた!」


「一人になる!!」


――ズドォォォォン!!


終焉剣が。


振り下ろされる。


巨大な黒い斬撃。


世界樹の頂上そのものを。


切り裂くほどの威力。


俺は。


避けなかった。


「レオン!」


アリアが。


叫ぶ。


「大丈夫」


俺は。


剣を。


地面へ突き立てる。


「――《可能性共有》」


八つの光が。


広がる。


俺だけじゃない。


仲間たちへ。


一人ずつ。


光が繋がっていく。


「……!」


セレナの魔力。


アリアの剣技。


ノアの治癒。


エリスの魔法剣。


カインの力。


リナの魔法。


ミアの世界樹の力。


セリアの世界選択。


そして。


俺自身の可能性。


全部が。


一つに。


「――これが」


俺は。


剣を。


握る。


「今の俺の力だ!」


――ドォォォォォン!!


黒い斬撃が。


俺たちへ。


直撃する。


だが。


八つの力が。


受け止めた。


「な……」


黒いレオンの。


表情が。


初めて。


崩れた。


「俺の攻撃を……」


「一人なら」


俺は。


前へ。


踏み込む。


「止められなかった」


「……!」


「でも」


一歩。


また一歩。


進む。


「俺たちは」


「一人じゃない!」


「――うおおおおおおおっ!!」


剣を。


振り上げる。


「――《八重連星》!!」


八つの光が。


一本の斬撃になる。


黒いレオンが。


黒い剣で。


受け止める。


――ギィィィィィン!!


「ぐっ……!」


「まだだ!」


さらに。


力を込める。


「俺は」


「お前を」


「倒すために」


「戦ってるんじゃない!」


「……!」


「お前も」


「俺だからだ!」


――バキィィィン!!


黒い剣に。


亀裂が入る。


「……!」


「終わらせるんじゃない!」


「受け入れる!」


――パァァァァン!!


黒い剣が。


砕け散った。


黒いレオンの身体が。


光に包まれる。


「……俺を」


「消すのか?」


「違う」


俺は。


手を差し出した。


「戻ってこい」


「……」


「俺の中へ」


黒いレオンが。


目を見開く。


「俺を」


「許すのか?」


「許すとかじゃない」


俺は。


笑った。


「最初から」


「お前は」


「俺だから」


「……」


黒いレオンの目から。


初めて。


涙が。


落ちた。


「……馬鹿だな」


「ああ」


「本当に」


「馬鹿だ」


黒いレオンは。


笑った。


「でも」


「嫌いじゃない」


身体が。


光へ変わっていく。


そして。


最後に。


黒いレオンは。


俺へ。


手を伸ばした。


――触れた瞬間。


大量の記憶が。


流れ込んできた。


「――っ!」


百七十二。


それどころじゃない。


数え切れない。


無数の未来。


俺が選ばなかった世界。


そこで生きた。


俺。


家族。


仲間。


誰もが。


それぞれの人生を。


生きていた。


そして。


最後に。


一つの未来が。


見えた。


「……」


俺は。


息を呑む。


そこには。


今の世界が。


映っていた。


だが。


違う。


俺たちが。


暮らしている世界ではない。


世界樹が。


存在しない。


帝都もない。


そして。


俺も。


いない。


その世界で。


アリアが。


一人。


泣いていた。


「……」


俺の胸が。


締め付けられる。


「これは……」


黒いレオンの声が。


聞こえた。


『それは』


『お前が』


『最後に』


『選ばなかった未来』


「……」


『そこでは』


『お前は』


『生まれなかった』


「……!」


『でも』


『みんなは』


『生きている』


『幸せに』


『暮らしている』


「……」


『お前が』


『存在しないことで』


『救われた世界だ』


俺は。


何も言えなかった。


もし。


俺が。


生まれなければ。


みんなが。


幸せだった?


そんな可能性が。


本当に。


存在していた。


『どうする?』


黒いレオンが。


聞く。


『その世界を』


『選ぶか?』


俺は。


長い間。


その世界を。


見つめた。


そして。


首を横に振った。


「……選ばない」


『なぜ?』


「俺がいなくても」


「みんなが幸せなら」


「それは」


「きっと」


「素敵な世界だ」


「……」


「でも」


俺は。


今いる仲間たちを見る。


「俺は」


「この世界で」


「みんなと生きたい」


『……』


「幸せは」


「誰か一人が」


「消えることで」


「作るものじゃない」


「みんなで」


「作るものだ」


黒いレオンが。


笑った。


『……やっぱり』


『お前は』


『俺より』


『強いな』


「違う」


『……?』


「俺たちが」


「強いんだ」


その瞬間。


黒いレオンの光が。


俺の胸へ。


完全に。


溶け込んだ。


――ドクン。


心臓が。


鳴る。


一度。


二度。


そして。


三度。


世界そのものが。


震えた。


「……!」


老人が。


目を見開く。


『まさか』


「どうした?」


『九つ目の鍵が』


『目覚め始めた』


セリアが。


驚く。


「九つ目……」


『そう』


老人が。


俺を見る。


『記憶の鍵』


『それが』


『今』


『お前の中で』


『完成した』


俺の胸から。


光が。


溢れる。


八つの光。


そこへ。


新しい光が。


加わる。


九つ。


それぞれ違う輝きを持ちながら。


一つの輪になる。


「これが……」


老人が。


静かに。


告げる。


『九つの鍵が揃った』


『これで』


『ようやく』


『原初を』


『倒せる』


「……!」


俺は。


剣を握る。


だが。


その瞬間。


――パキッ。


何かが。


割れる音がした。


「……?」


空を見る。


そこに。


原初の巨大な目が。


浮かんでいる。


しかし。


その目は。


もう。


俺たちを見ていなかった。


もっと。


遠く。


世界の外側を。


見ている。


『――違う』


原初が。


呟く。


『九つでは』


『足りない』


「……何?」


『最後の鍵は』


『まだ』


『ここにはない』


老人の顔から。


笑みが消える。


「……そんな」


セリアが。


振り返る。


「おじいちゃん?」


老人は。


震える声で。


言った。


『十個目の鍵……』


「十個目?」


『存在するはずがない』


『いや』


『存在してはいけない』


俺は。


空を見上げる。


すると。


世界の裂け目の向こうから。


何かが。


こちらへ。


近づいてくる。


人影。


一人。


二人。


三人。


そして。


その中に。


見覚えのある姿が。


「……父さん?」


母さん。


ユウト。


そして。


――もう一人。


その人物が。


こちらを向いた。


俺と。


全く同じ顔。


けれど。


その瞳だけは。


金色だった。


そして。


その男は。


ゆっくり。


笑った。


『――やあ』


『久しぶりだね』


『僕は』


『お前が』


『生まれる前の』


『レオンだ』


「……!」


世界が。


再び。


大きく揺れた。

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