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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第44話 祖父が知る世界の真実

『ようやく来たか』


その声が。


光の扉の向こうから。


静かに響いた。


「……」


俺は。


動けなかった。


扉の向こう。


そこには。


一人の老人が立っている。


白い髪。


長い髭。


杖を持った。


小柄な老人。


けれど。


その瞳だけは。


異様なほど鋭かった。


そして。


その隣には。


「父さん……」


「母さん……」


「ユウト……」


一度目の世界で。


失ったはずの家族が。


そこにいた。


「……どうして」


声が。


震える。


「どうして」


「みんなが……」


アリアも。


ノアも。


言葉を失っていた。


セリアだけが。


静かに。


その老人を見ている。


「……おじいちゃん」


老人は。


ゆっくり。


頷いた。


『久しいな』


「……」


『セリア』


「うん」


『そして』


老人の視線が。


俺へ向く。


『レオン』


「……」


『お前に会うのは』


『初めてだな』


「……俺は」


「あなたを」


「知らない」


『そうだろう』


老人は。


少しだけ。


笑った。


『だが』


『私は』


『お前を知っている』


「……どうして?」


『お前が』


『この世界を』


『二度目にしたからだ』


「……!」


原初が。


静かに。


言った。


『彼は』


『世界の記憶を』


『管理する者』


「管理……?」


『正確には』


『世界が生まれる前の記憶を』


『守る者だ』


俺は。


老人を見る。


「あなたは」


「何者なんだ?」


老人は。


杖を。


軽く地面へ突いた。


――コツン。


すると。


周囲の景色が。


一瞬で。


変わった。


白い空間。


その中央に。


巨大な球体が。


浮かび上がる。


「……世界?」


『そうだ』


老人が。


答える。


『これは』


『最初の世界』


「……」


球体の中には。


何もない。


ただ。


真っ暗な。


空間だけ。


『まだ』


『生命も』


『時間も』


『空間すらも』


『存在しなかった』


『そこへ』


老人が。


手を伸ばす。


一粒の光が。


生まれた。


『最初の光が生まれた』


光が。


広がる。


星になる。


空になる。


大地になる。


そして。


生命が。


生まれる。


『それが』


『世界の始まり』


俺は。


黙って。


見ていた。


「……原初は?」


『あれは』


老人が。


原初を見る。


『最初の世界を』


『観測するために』


『生まれた存在だ』


「……観測?」


『そう』


『原初自身には』


『最初』


『善も悪も』


『なかった』


『ただ』


『世界を見ていた』


原初が。


答える。


『私は』


『世界を知りたかった』


『なぜ生命が』


『生まれるのか』


『なぜ笑うのか』


『なぜ泣くのか』


『なぜ愛するのか』


『理解できなかった』


「……」


老人が。


続ける。


『だから』


『原初は』


『世界を』


『何度も』


『作り直した』


「……!」


『一つ目の世界』


『二つ目の世界』


『三つ目』


『四つ目』


『数え切れないほど』


「待って」


俺は。


思わず。


声を上げた。


「この世界は」


「二度目じゃないのか?」


老人は。


首を横に振った。


『違う』


「……?」


『お前たちが』


『二度目だと思っているだけだ』


「……!」


胸の奥が。


冷たくなる。


『実際には』


『この世界は』


『百七十三番目だ』


「……」


誰も。


声を出せなかった。


「百……七十三……?」


ノアが。


震える声で。


呟く。


『そうだ』


『百七十二回』


『世界は』


『終わった』


「……」


俺の手が。


震える。


「じゃあ」


「俺が経験した」


「一度目の世界は?」


『百七十二番目』


「……!」


『そして』


『今のお前たちがいる世界が』


『百七十三番目』


セリアが。


静かに。


頷いた。


「私も」


「最初は」


「二度目だと思ってた」


「でも」


「違った」


「……」


「私たちは」


「何度も」


「何度も」


「同じことを」


「繰り返していた」


俺は。


拳を握る。


「……だったら」


「どうして」


「誰も」


「覚えてないんだ?」


老人が。


答える。


『世界が再構築されるたび』


『記憶は』


『消去される』


『だが』


『例外がある』


「例外?」


老人が。


俺を見る。


『魂の鍵』


『可能性の鍵』


『世界選択の鍵』


『そして』


『記憶の鍵』


「……!」


「記憶の鍵?」


老人は。


頷いた。


『お前たちが』


『八つの鍵だと思っているものは』


『本来』


『九つある』


「……九つ?」


セリアが。


驚く。


「そんな話」


「聞いてない」


『当然だ』


老人が。


笑う。


『九つ目は』


『存在そのものを』


『隠されていた』


俺は。


ゆっくり。


聞く。


「それは」


「何なんだ?」


老人は。


俺の胸を指差した。


『すでに』


『お前の中にある』


「……俺の中?」


『そう』


「どこに?」


老人が。


一言。


告げた。


『心臓だ』


――ドクン。


俺の心臓が。


大きく鳴った。


「……!」


「まさか」


セリアが。


目を見開く。


「レオンの中に」


「記憶の鍵が……?」


『違う』


老人は。


首を横に振る。


『鍵そのものではない』


「じゃあ」


『鍵を』


『生み出すための』


『器だ』


「……」


『お前の心臓には』


『百七十三回分の』


『世界の記憶が』


『眠っている』


「……!」


頭の中で。


突然。


知らない光景が。


爆発した。


――知らない街。


――知らない人。


――知らない家族。


――知らない俺。


次々と。


頭の中へ。


流れ込んでくる。


「ぐっ……!」


「レオン!」


アリアが。


俺の身体を支える。


「大丈夫!?」


「分からない……!」


頭が。


割れそうだった。


『見るな』


老人が。


言う。


『今はまだ』


『全部を見るな』


「だったら!」


俺は。


老人を睨む。


「どうして」


「こんなものを」


「俺の中に入れた!」


『私ではない』


「……え?」


『お前自身だ』


「俺……?」


『百七十二番目の世界で』


『お前は』


『世界を再構築する直前』


『自分自身に』


『すべての記憶を』


『残した』


「……」


『ただし』


『一度に』


『すべてを思い出せば』


『お前の精神が』


『耐えられない』


『だから』


『鍵を分けた』


「……」


『魂』


『可能性』


『世界選択』


『そして』


『最後の記憶』


「……」


俺は。


自分の胸に。


手を当てた。


「じゃあ」


「俺は」


「ずっと」


「自分で」


「自分を」


「探してたのか」


『そうだ』


老人が。


微笑む。


『そして』


『ようやく』


『ここまで来た』


そのとき。


――ドンッ!!


空間全体が。


大きく揺れた。


「……!」


セリアが。


空を見る。


「原初が」


『……』


原初の巨大な目が。


こちらを。


見つめている。


『もう』


『十分だ』


「……?」


『話しすぎた』


老人が。


杖を構える。


『来るぞ』


次の瞬間。


光の扉の向こうから。


巨大な白い腕が。


突き出してきた。


――ズガァァァァン!!


「うわっ!」


俺たちが。


吹き飛ばされる。


「レオン!」


「アリア!」


「セレナ!」


「全員!」


カイルが。


叫ぶ。


「戦闘態勢!」


俺は。


立ち上がる。


「原初!」


『レオン』


白い目が。


俺を捉える。


『お前は』


『まだ』


『理解していない』


「何を?」


『なぜ』


『百七十二回も』


『世界が』


『失敗したのか』


「……」


『原因は』


『世界ではない』


『生命でもない』


『まして』


『私でもない』


「じゃあ」


「何なんだ?」


原初が。


静かに。


答える。


『――お前だ』


「……!」


『毎回』


『最後に』


『世界を終わらせるのは』


『お前だ』


「……嘘だ」


『本当だ』


「俺が……?」


『そう』


『お前は』


『世界を救おうとする』


『そして』


『最後には』


『必ず』


『世界を壊す』


「……」


『百七十二回』


『すべて』


『同じだった』


俺は。


動けなかった。


「……じゃあ」


「一度目の俺も」


「二度目の俺も」


「全部」


「俺が原因……?」


『そうだ』


「……」


原初の目が。


笑う。


『だから』


『今回も』


『同じ結末になる』


「違う……」


俺は。


剣を握る。


『違わない』


「違う!」


「俺は!」


「もう」


「一人じゃない!」


アリアが。


俺の隣に立つ。


「そうよ」


セレナも。


立つ。


「私たちがいます」


ノアが。


杖を構える。


「お兄ちゃんだけじゃない」


セリアも。


俺の手を握った。


「百七十三回目は」


「今までとは違う」


原初が。


沈黙する。


そして。


老人が。


静かに。


笑った。


『そうだ』


「……?」


『それこそが』


『百七十三番目の』


『唯一の違いだ』


「何が?」


老人は。


俺たち全員を見る。


『今までの世界には』


『存在しなかった』


『もう一人がいる』


「……?」


老人の視線が。


俺たちの後ろへ。


向いた。


そこに。


誰かが。


立っていた。


黒い髪。


黒い瞳。


見覚えのある顔。


「……ユウト?」


違う。


ユウトじゃない。


もっと。


大人。


そして。


その手には。


黒い剣が。


握られている。


「……俺?」


そいつが。


ゆっくり。


顔を上げる。


「初めまして」


そして。


笑った。


「百七十三人目の」


「レオン」


「……!」


『これが』


原初が。


告げる。


『お前が』


『今まで一度も』


『出会わなかった存在だ』


「……」


『――反転した可能性』


黒いレオンが。


剣を構える。


「さあ」


「今度こそ」


「どっちが」


「本物の未来を」


「選ぶのか」


俺も。


剣を構えた。


そして。


世界の命運を賭けた。


もう一人の自分との。


最後の戦いが。


始まった。

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