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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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40/132

第40話 守れなかった弟

「――魂の鍵」


その言葉が。


暗闇の中に響いた。


俺は。


目の前にいる少年を見つめた。


黒い髪。


少し長めの前髪。


年齢は。


十歳くらいだろうか。


その顔には。


どこか見覚えがあった。


初めて会ったはずなのに。


ずっと昔から知っているような。


そんな感覚。


「……兄さん」


少年が。


もう一度。


俺を呼んだ。


「その呼び方……」


胸の奥が。


痛んだ。


「お前は」


「誰なんだ?」


少年は。


少しだけ。


悲しそうに笑った。


「僕の名前は――」


「ユウト」


「……ユウト?」


「うん」


少年は。


頷く。


「あなたの弟だよ」


「……」


頭が。


真っ白になる。


「弟……?」


俺には。


弟なんて。


いない。


少なくとも。


俺が知っている家族には。


アリア。


ノア。


そして。


俺。


それだけだった。


「違う」


アリアが。


震える声で言った。


「そんなはずない」


「……」


「私たちに」


「弟なんて」


ユウトは。


アリアを見る。


「お姉ちゃん」


「……!」


「久しぶり」


アリアの瞳が。


大きく開く。


「……その呼び方」


「どうして……」


「覚えてるよ」


「昔」


「僕が泣いたとき」


「お姉ちゃんが」


「いつも」


「抱っこしてくれた」


「……」


アリアの顔から。


血の気が引いていく。


「嘘……」


「嘘じゃないよ」


「私は」


「あなたを」


「知らない……」


「そうだね」


ユウトは。


微笑んだ。


「この世界の」


「お姉ちゃんは」


「僕を知らない」


「……」


「でも」


「一度目の世界では」


「知ってた」


俺の心臓が。


大きく跳ねた。


「一度目……」


さっき。


偽物の俺が。


言っていた。


――お前は二度目の人生を生きている。


「ユウト」


俺は。


ゆっくり。


少年へ近づく。


「一度目の世界って」


「何なんだ?」


「……」


ユウトは。


答えなかった。


その代わり。


俺の目を見る。


「兄さん」


「何?」


「覚えてないんだね」


「……ああ」


「全部」


「何も」


「そっか」


ユウトが。


目を伏せる。


「それなら」


「僕が話すよ」


「……」


「一度目の世界で」


「何が起きたのか」


---


世界が。


変わった。


気づけば。


俺たちは。


巨大な城の中にいた。


いや。


正確には。


城のように見える。


記憶の世界。


そこには。


まだ幼い俺たちがいた。


「……俺?」


少年の俺。


その隣に。


幼いアリア。


さらに。


小さなノア。


そして。


一人の少年。


――ユウト。


「……」


俺は。


言葉を失った。


「これが」


「一度目の世界」


ユウトが。


説明する。


「僕たちは」


「七人兄弟だった」


「父さんも」


「母さんも」


「まだ生きていた」


「……」


その光景は。


あまりにも。


幸せそうだった。


父さんが。


笑っている。


母さんが。


料理をしている。


アリアが。


俺と喧嘩している。


ノアが。


その間で笑っている。


ユウトが。


俺の服を引っ張っている。


「兄さん!」


『ん?』


『遊ぼう!』


『今は無理』


『なんで?』


『剣の練習があるから』


『じゃあ僕も!』


『お前にはまだ早い』


『えー!』


『大きくなったらな』


『約束?』


『約束』


――その光景を。


俺は。


黙って見ていた。


「……」


胸が。


苦しい。


「これが」


「俺の記憶……?」


「うん」


ユウトが。


頷く。


「兄さんは」


「僕に優しかった」


「……」


「でも」


「世界は」


「そんな幸せを」


「許さなかった」


映像が。


切り替わる。


空が。


真っ赤に染まった。


「――終焉王」


巨大な黒い影。


世界樹が。


燃えている。


帝都が。


崩れている。


父さんが。


戦っている。


母さんが。


子供たちを守っている。


「逃げろ!」


父さんが。


叫ぶ。


『アルベルト!』


母さんが。


叫び返す。


『あなたはどうするの!?』


『俺は』


父さんが。


剣を握る。


『あいつを止める』


『一人では無理よ!』


『分かってる』


父さんが。


笑った。


『だから』


『子供たちを頼む』


「……」


映像が。


さらに変わる。


俺が。


剣を握っている。


幼い俺。


その身体から。


巨大な魔力が。


溢れている。


『レオン!』


父さんが。


叫ぶ。


『使うな!』


『でも!』


『それを使えば』


『お前は――』


爆発。


白い光。


そして。


世界が。


一瞬で。


消えた。


「……」


俺は。


動けなかった。


「これが」


「一度目の世界」


ユウトが。


静かに言う。


「兄さんは」


「世界を救おうとした」


「……」


「でも」


「力が」


「大きすぎた」


「……俺が」


「うん」


「世界を」


「壊した?」


ユウトは。


首を横に振った。


「違う」


「……」


「兄さん一人のせいじゃない」


「終焉王が」


「世界樹の力を暴走させた」


「その結果」


「兄さんの可能性の力と」


「ぶつかった」


「そして」


「世界が」


「一度」


「終わった」


俺は。


拳を握る。


「……」


「でも」


ユウトが。


俺を見る。


「兄さんは」


「最後まで」


「僕たちを」


「守ろうとした」


「……」


映像が。


再び変わる。


瓦礫の中。


俺が。


倒れている。


その隣に。


ユウトがいる。


血だらけだった。


『兄さん』


『……ユウト』


『僕』


『もう』


『駄目みたい』


『喋るな!』


『ねえ』


『兄さん』


『……』


『僕のこと』


『忘れないで』


『絶対忘れない!』


『……約束』


『ああ!』


『じゃあ』


ユウトが。


笑う。


『二度目の世界で』


『また会おうね』


「……!」


映像が。


消えた。


俺の頬を。


涙が伝っていた。


「……俺」


「忘れてた」


ユウトは。


微笑んだ。


「うん」


「どうして」


「世界を作り直すとき」


「兄さんの記憶から」


「一度目の世界を」


「全部消したから」


「……」


「そうしないと」


「兄さんは」


「また同じ未来を」


「選んでしまうから」


「……」


俺は。


ユウトを見る。


「じゃあ」


「お前は」


「どうして覚えてる?」


「魂の鍵だから」


「……」


「魂だけは」


「世界が作り直されても」


「記憶を失わない」


ユウトが。


胸に手を当てる。


「僕は」


「ずっと」


「ここで」


「待ってた」


「……母さんも?」


「うん」


「ずっと」


ユウトが。


後ろを見る。


そこに。


母さんが立っていた。


「レオン」


「……母さん」


母さんが。


ゆっくり。


俺へ近づいてくる。


「よく」


「ここまで来たわね」


「母さん……」


俺は。


その場で。


膝をついた。


「ごめん」


「……」


「俺」


「何も覚えてなかった」


母さんは。


俺の頭に。


手を置いた。


「それでいいのよ」


「……」


「忘れることは」


「罪じゃない」


「でも」


「思い出したなら」


「今度は」


「自分で選びなさい」


「……」


母さんが。


俺の胸に。


手を当てる。


「レオン」


「あなたは」


「一度目の世界で」


「世界を救えなかった」


「……」


「でも」


「二度目の世界では」


「もう」


「一人じゃない」


その瞬間。


俺の胸の奥から。


七色の光が。


溢れた。


「……!」


ユウトの身体も。


光に包まれる。


「兄さん」


「何?」


「僕の力を」


「受け取って」


「……!」


「魂の鍵は」


「人を繋ぐ力」


「だから」


「僕は」


「兄さんたちを」


「繋ぐ」


「……」


ユウトの胸から。


赤い光が。


俺の剣へ。


流れ込む。


――ドクン。


剣が。


大きく震えた。


白。


黒。


金。


緑。


青。


そして。


赤。


六つだった光に。


新しい光が。


加わる。


七つ。


「……これで」


ユウトが。


笑う。


「七つの鍵が」


「揃った」


その瞬間。


世界が。


大きく揺れた。


『――馬鹿な』


終焉王の声。


『魂の鍵を』


『取り戻しただと……!?』


俺は。


立ち上がった。


剣を。


強く握る。


「そうだ」


『……』


「もう」


「お前の中に」


「母さんも」


「ユウトも」


「置いていかない」


終焉王が。


咆哮する。


『ならば』


『全員まとめて』


『消してやる!!』


暗闇が。


崩れ始める。


「レオン!」


セレナが。


叫ぶ。


「戻らないと!」


「ああ!」


俺は。


母さんを見る。


「母さん」


「ええ」


「絶対」


「迎えに来る」


母さんは。


微笑んだ。


「待ってる」


ユウトも。


笑う。


「僕も」


「兄さん」


「今度は」


「守ってね」


「……ああ」


俺は。


頷く。


「絶対に」


「今度こそ」


「誰も失わない」


その瞬間。


俺たちは。


終焉王の内部から。


一気に。


外へ弾き出された。


――ドォォォォン!!


帝都上空。


七人の光が。


一つになって。


爆発する。


「レオン!」


アリアが。


駆け寄ってくる。


「大丈夫!?」


「ああ」


俺は。


頷く。


「母さんは?」


ノアが。


尋ねる。


「まだ」


「でも」


俺は。


剣を見る。


そこには。


七つの光が。


確かに。


宿っていた。


「必ず」


「助ける」


その瞬間。


終焉王の胸に。


巨大な亀裂が。


走った。


『――ぐ……』


「……!」


終焉王が。


苦しんでいる。


カイルが。


目を見開く。


「魂の鍵が」


「戻ったことで」


「終焉王の中核が」


「露出した」


リゼが。


剣を構える。


「今なら」


「倒せる」


「……」


俺は。


終焉王を見る。


だが。


その胸の奥。


そこに。


母さんの姿が。


一瞬だけ見えた。


そして。


母さんが。


叫んだ。


『――レオン!』


「……!」


『逃げて!』


「何で!?」


『この中に』


『まだ』


『何かいる!』


「……何か?」


母さんの表情が。


恐怖に。


変わる。


『終焉王じゃない』


『もっと古い』


『何かが――』


その瞬間。


終焉王の胸の奥から。


巨大な目が。


開いた。


赤でも。


黒でもない。


完全な。


「白い目」。


それが。


俺たちを。


見つめる。


そして。


声が響いた。


『――ようやく』


『目覚める時が来た』


「……誰だ」


『私は』


『この世界が』


『生まれる前から』


『存在していたもの』


『名は――』


世界が。


震える。


『原初』


『すべての終わりを』


『生み出した者』


俺は。


剣を構えた。


そして。


初めて思った。


――終焉王は。


本当の敵ではなかったのかもしれない。


本当の敵は。


そのさらに奥に。


いたのだ。

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