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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第38話 父の幻影と二人の来訪者

「――さあ」


「最後の戦いを始めよう」


空に浮かぶ。


父さんの姿。


その声。


その表情。


何もかもが。


俺の記憶にある父さんと同じだった。


「……父さん」


思わず。


一歩前へ出る。


「本当に……?」


「レオン」


父さんが。


笑った。


「大きくなったな」


「……!」


その言葉を聞いた瞬間。


胸が締め付けられた。


子供の頃。


何度も聞いた言葉。


剣の稽古をして。


転んだ俺を起こして。


父さんはいつも。


同じことを言っていた。


――大きくなったな。


「父さん……!」


俺は。


走り出そうとした。


その瞬間。


「待って!」


セレナが。


俺の腕を掴んだ。


「……!」


「レオンさん」


セレナの顔は。


険しかった。


「近づいてはいけません」


「でも」


「違います」


「……」


セレナが。


空の父さんを見る。


「これは」


「生きている人間の気配じゃありません」


「……」


俺は。


もう一度。


父さんを見る。


確かに。


そこには。


父さんがいる。


なのに。


何かがおかしい。


「……足元」


エリスが。


呟いた。


「影がない」


「……!」


見る。


父さんには。


影がなかった。


そして。


隣にいる二人にも。


影がない。


「幻影……?」


カインが。


拳を構える。


「じゃあ」


「あれは何なんだ?」


父さんが。


笑った。


「レオン」


「こちらへ来い」


「……」


俺は。


動かなかった。


「父さん」


「一つだけ聞きたい」


「何だ?」


「父さんは」


「死んだんじゃないの?」


一瞬。


父さんの笑顔が。


止まった。


「……」


「答えて」


「俺は」


「父さんが死んだところを見た」


「だから」


「その姿で」


「俺を呼ばないでくれ」


空に。


静寂が落ちた。


そして。


父さんの姿が。


少しずつ。


崩れていく。


「……やはり」


セレナが。


呟く。


「幻影です」


「……」


父さんの顔が。


黒い霧へ変わる。


身体も。


腕も。


足も。


すべて。


崩れていく。


そして。


最後に残ったのは。


一つの声だった。


『――よく見破ったな』


「……!」


父さんの声ではない。


低く。


冷たい声。


終焉王だった。


『アルベルトの記憶を利用した』


『お前を誘い出すためにな』


「……ふざけるな」


俺は。


剣を握った。


『怒ったか?』


「当たり前だ」


『ならば』


『怒りを力に変えろ』


『それこそが』


『終焉の糧となる』


「……」


「俺は」


「お前みたいにはならない」


『……』


「怒りも」


「悲しみも」


「全部」


「俺自身のものだ」


「お前には」


「渡さない」


終焉王が。


沈黙する。


そのとき。


空にいた。


二人の人影が。


ゆっくりと。


前へ出た。


「……」


一人は。


長い黒髪の女性。


もう一人は。


銀色の髪をした青年だった。


女性が。


口を開く。


「なるほど」


「これが」


「アルベルトの息子」


青年も。


俺を見る。


「……似てるな」


「誰だ?」


俺が。


尋ねる。


女性は。


微笑んだ。


「私は」


「リゼ」


「そして」


青年が。


自分を指す。


「俺は」


「カイル」


「……」


「二人とも」


「お前の兄と姉だ」


「……は?」


一瞬。


何を言われたのか。


分からなかった。


「兄……?」


「姉……?」


ノアが。


小さく。


呟く。


「……やっぱり」


「知ってたのか?」


ノアは。


首を振る。


「知らなかった」


「でも」


「感じてた」


「何を?」


「私たち以外にも」


「家族がいるって」


アリアが。


二人を見つめる。


「……嘘」


「私たちの家族は」


「私とレオンとノア」


「それだけのはず」


リゼが。


首を横に振る。


「違うよ」


「あなたたちは」


「知らされていなかっただけ」


「何を?」


「本当の家族構成」


「……」


リゼが。


空中から。


ゆっくり降りてくる。


「アルベルトには」


「子供が七人いた」


「――七人?」


俺は。


息を呑む。


「そう」


「長女」


「私」


「次男」


「カイル」


「三番目が」


「アリア」


「四番目が」


「レオン」


「五番目が」


「ノア」


「そして」


「残り二人は」


「……?」


リゼの表情が。


曇る。


「まだ」


「生まれていない」


「……生まれていない?」


「正確には」


「存在している」


「でも」


「この時間軸では」


「まだ生まれていない」


「……」


頭が。


混乱する。


「時間軸?」


ミアが。


驚いた顔をする。


「まさか……」


リゼが。


ミアを見る。


「世界樹の子」


「久しぶり」


「……!」


ミアが。


一歩。


後ろへ下がった。


「私を」


「知ってる?」


「もちろん」


「あなたが生まれた時」


「私は」


「まだ」


「人間だったけどね」


「……」


俺は。


二人を見る。


「待ってくれ」


「何で」


「兄や姉が」


「こんなにいるんだ?」


カイルが。


答える。


「それは」


「お前たちが」


「普通の人間じゃないからだ」


「……」


「アルベルトは」


「世界を救うために」


「俺たちを」


「作った」


「作った……?」


嫌な言葉だった。


「俺たちは」


「子供じゃない」


カイルが。


静かに言う。


「鍵だ」


「……鍵?」


「終焉王を」


「倒すための」


「生きた鍵」


「……」


リゼが。


続ける。


「創造の鍵」


「終焉の鍵」


「可能性の鍵」


「世界樹の鍵」


「虚無の鍵」


「王家の鍵」


「そして」


「魂の鍵」


「……!」


俺は。


背筋に。


寒気を感じた。


「じゃあ」


「俺は?」


リゼが。


俺を見る。


「あなたは」


「可能性の鍵」


「それは知ってる」


「でも」


リゼは。


首を横に振る。


「それだけじゃない」


「……?」


「あなたは」


「七つの鍵を」


「繋ぐための」


「中心」


「中心……」


「だから」


「終焉王は」


「あなたを欲しがっている」


俺は。


終焉王を見る。


『……』


その瞳が。


静かに。


俺を見つめている。


「じゃあ」


俺は。


剣を握る。


「どうすれば」


「お前を倒せる?」


カイルが。


笑う。


「簡単だ」


「七人で」


「戦う」


「……」


「だが」


カイルの表情が。


変わる。


「一つ問題がある」


「何だ?」


「七人目が」


「まだ」


「こちら側にいない」


「……?」


「誰?」


カイルは。


空を見上げる。


「最後の一人」


「魂の鍵を持つ者」


「そいつは」


「終焉王の中にいる」


「……!」


俺は。


息を呑んだ。


「終焉王の中?」


「そう」


リゼが。


頷く。


「つまり」


「終焉王を倒すためには」


「終焉王の中にいる」


「最後の一人を」


「助け出さなければならない」


「……」


俺は。


終焉王を見る。


巨大な赤い瞳。


黒い身体。


その奥に。


誰かがいる。


「誰なんだ?」


カイルが。


答える。


「あなたが」


「一番よく知っている人」


「……?」


「レオン」


リゼが。


俺を見つめる。


「最後の鍵は」


「――母親だ」


「……!」


アリアが。


顔を上げた。


「母さん……?」


「そう」


「レオンたちの母親」


「エレナ」


「……」


俺は。


何も言えなかった。


母さん。


確かに。


母さんは。


王城にいた。


でも。


今。


どこにも姿がない。


「母さんは」


「終焉王に」


「取り込まれた?」


「正確には」


「自分から入った」


「……どうして?」


「あなたたちを」


「守るため」


アリアが。


震える。


「また……」


「私たちを」


「守るために……」


リゼが。


目を閉じる。


「エレナは」


「終焉王の中に」


「自分の魂を封じた」


「それによって」


「終焉王の完全な覚醒を」


「長い間」


「抑えていた」


「……」


「でも」


「今日」


「第四の封印が開いたことで」


「もう」


「限界」


終焉王が。


笑った。


『――その通り』


巨大な声が。


帝都へ響く。


『エレナの魂は』


『もうすぐ』


『消える』


「……!」


「やめろ!」


俺は。


叫んだ。


『ならば』


『どうする?』


『レオン』


『母を救えば』


『世界が終わる』


『世界を救えば』


『母が消える』


「……」


また。


同じ選択。


世界か。


家族か。


どちらか一つ。


俺は。


歯を食いしばる。


「……ふざけるな」


終焉王が。


笑う。


『また』


『選べないか?』


「違う」


俺は。


剣を構えた。


「俺は」


「もう知ってる」


『何を?』


「世界と家族」


「どっちか一つなんて」


「選ばなくていい」


「……!」


俺は。


仲間を見る。


セレナ。


エリス。


カイン。


リナ。


ミア。


アリア。


ノア。


そして。


空にいる。


リゼとカイル。


「全員で」


「全部」


「救う」


終焉王の瞳が。


大きく見開かれた。


『……不可能だ』


「可能にする」


俺は。


剣を掲げる。


「それが」


「俺の力だから」


その瞬間。


剣が。


今までにないほど。


強く輝いた。


七つの光が。


集まっていく。


「……!」


ミアが。


驚く。


「七つ目の光……」


「何だ?」


「魂」


「まだ」


「ここにいないはずなのに」


剣の中心に。


赤い光が。


宿る。


そして。


終焉王の身体の中から。


小さな声が。


聞こえた。


『……レオン』


「……!」


聞き覚えのある声。


俺は。


目を見開いた。


「母さん……?」


『……逃げて』


『私のことは』


『いいから』


「嫌だ」


『レオン』


「嫌だ!」


俺は。


剣を握る。


「俺は」


「母さんも」


「みんなも」


「絶対に」


「諦めない!」


『……』


「だから」


「待ってて」


「必ず」


「迎えに行く」


しばらく。


沈黙が続いた。


そして。


母さんの声が。


震えた。


『……分かった』


『待ってる』


その瞬間。


終焉王が。


咆哮した。


『――ならば』


『来るがいい!!』


空が。


真っ黒に染まる。


世界樹が。


大きく揺れる。


そして。


終焉王の胸に。


巨大な亀裂が。


開いた。


その奥には。


真っ暗な世界。


「……」


俺は。


そこを見つめる。


「行くぞ」


アリアが。


隣に立つ。


「うん」


セレナも。


頷く。


「はい」


エリスが。


剣を構える。


「参りましょう」


カインが。


笑う。


「敵の腹の中ってか」


リナが。


杖を握る。


「怖いけど」


「行く」


ミアが。


微笑む。


「世界樹が」


「道を作る」


ノアが。


白い結晶を掲げる。


「私も」


「一緒に行く」


そして。


空にいる二人。


リゼとカイルも。


こちらへ。


降りてくる。


「七人で」


カイルが。


言う。


「いや」


リゼが。


微笑む。


「今は」


「もっと多い」


俺は。


みんなを見る。


「そうだな」


「俺たちは」


「もう」


「家族だけじゃない」


「仲間だ」


そして。


俺たちは。


終焉王の胸に開いた。


巨大な亀裂へ。


一歩。


踏み込んだ。


その瞬間。


世界の音が。


すべて。


消えた。


――静寂。


そして。


暗闇の中。


誰かが。


笑った。


『……ようこそ』


『私の中へ』


――終焉王の内部。


そこには。


俺たちが知らない。


もう一つの世界が。


広がっていた。

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