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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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32/132

第32話 銀髪の少女と世界樹の内部

光が。


すべてを包み込んでいた。


何も見えない。


何も聞こえない。


ただ。


身体だけが。


どこかへ落ちていくような感覚があった。


「……」


俺は。


手を伸ばした。


誰かの手を探す。


「セレナ……?」


返事がない。


「エリス!」


「……」


「カイン!」


「……」


「リナ!」


「お兄ちゃん!」


「!」


聞こえた。


リナの声。


「リナ!」


「ここ!」


俺は。


声の方向へ手を伸ばした。


すると。


小さな手が。


俺の手を握った。


「いた!」


「よかった……」


「お兄ちゃんが消えちゃったかと思った」


「俺も」


「みんなは?」


「分からない」


その瞬間。


別の声が聞こえた。


「ここにいます!」


セレナだった。


「セレナ!」


「はい!」


続いて。


「私もいます」


エリス。


「俺もだ」


カイン。


「……全員いるな」


俺は。


ホッと息を吐いた。


そして。


ようやく。


周囲を見る。


「……ここは?」


そこには。


巨大な空間が広がっていた。


壁。


床。


天井。


すべてが。


世界樹の内部。


だが。


普通の木の内部とは。


まったく違う。


巨大な石造りの回廊。


無数の魔法陣。


空中に浮かぶ文字。


そして。


遥か彼方まで続く。


白い階段。


「世界樹の中……?」


リナが。


目を丸くする。


「こんなの」


「外からは見えなかったよ?」


セレナが。


周囲を見回す。


「これは」


「古代文明の遺跡ですね」


「世界樹そのものが」


「遺跡になってるのか?」


カインが。


尋ねる。


「違います」


セレナが。


首を横に振る。


「世界樹の内部に」


「遺跡が組み込まれているんです」


「誰が?」


「……」


セレナは。


答えられなかった。


そのとき。


奥から。


声が聞こえた。


「――あなたたち」


「……!」


全員が。


振り返る。


そこに。


一人の少女が。


立っていた。


銀色の髪。


黄金色の瞳。


白い服。


その姿は。


どこか神秘的だった。


俺は。


思わず。


息を止める。


「……誰だ?」


少女は。


俺を見る。


そして。


嬉しそうに。


微笑んだ。


「やっと会えた」


「……?」


「お兄ちゃん」


「……は?」


リナが。


俺を見る。


「お兄ちゃん?」


セレナも。


驚いている。


エリスは。


剣を抜いた。


「誰?」


少女は。


エリスを見る。


「怖い人」


「……」


「でも」


少女は。


少し笑う。


「お姉ちゃんも」


「あなたのこと」


「嫌いじゃないよ」


「何を言っている?」


エリスが。


睨む。


俺は。


少女を見る。


「俺のことを」


「兄ちゃんって呼んだよな?」


「うん」


「じゃあ」


「お前は誰だ?」


少女は。


首を傾げる。


「分からない?」


「……」


「私」


「お兄ちゃんの」


「妹だよ」


「――妹?」


俺は。


固まった。


「俺に」


「妹なんて」


「いないはずだ」


少女は。


少し悲しそうな顔をした。


「うん」


「普通ならね」


「……どういう意味?」


「私は」


少女が。


胸元に手を当てる。


「世界樹から生まれたの」


「……」


「だから」


「お兄ちゃんの」


「妹になった」


意味が。


分からない。


「レオン」


セレナが。


小声で言う。


「警戒してください」


「ああ」


少女は。


こちらへ歩いてくる。


エリスが。


剣を構える。


「止まれ」


「……」


少女は。


立ち止まる。


「あなたは」


「何者?」


エリスが。


尋ねる。


少女は。


少し考えた。


「名前は」


「ミア」


「ミア……」


「うん」


「でも」


ミアは。


俺を見る。


「本当の名前は」


「まだ」


「決まってない」


「……?」


その瞬間。


俺の中で。


何かが反応した。


『……』


「お前?」


『知っている』


「ミアを?」


『ああ』


「何者なんだ?」


『……』


いつもの声が。


なかなか答えない。


やがて。


低い声が。


響いた。


『世界樹の子だ』


「世界樹の……子?」


『正確には』


『世界樹の意思』


『その一部が』


『人の形を取った』


俺は。


ミアを見る。


「世界樹の意思……」


ミアが。


微笑む。


「正解」


「……」


「だから」


「私には」


「お兄ちゃんが必要なの」


「俺が?」


「うん」


「どうして?」


ミアは。


指を一本立てた。


「第三の鍵だから」


「……!」


第31話で。


終焉王が言っていた。


第三の鍵。


「それは」


「俺のことか?」


「うん」


「じゃあ」


俺は。


尋ねる。


「第三の鍵って」


「何なんだ?」


ミアが。


笑う。


「世界を」


「選び直す鍵」


「……」


「創造は」


「新しいものを作る力」


「終焉は」


「古いものを終わらせる力」


「でも」


ミアは。


胸に手を当てる。


「そのどちらでもない力がある」


「それが」


「可能性」


「……」


「可能性は」


「未来を選ぶ力」


俺は。


父さんの言葉を思い出す。


『未来を決める力』


「……じゃあ」


俺が。


ミアを見る。


「俺が第三の鍵ってことは」


「未来を」


「俺が決めるのか?」


ミアは。


首を横に振った。


「違うよ」


「え?」


「お兄ちゃんが決めるんじゃない」


「みんなが決めるの」


「……みんな?」


「うん」


ミアが。


微笑む。


「だから」


「お兄ちゃん一人じゃ」


「世界は変えられない」


「……」


「でも」


「みんなが一緒なら」


「世界は」


「何度でも」


「やり直せる」


その言葉を聞いた瞬間。


俺は。


なぜか。


アリアの顔を思い出した。


「……姉さん」


「お姉ちゃん?」


「いや」


俺は。


首を振る。


「何でもない」


ミアが。


少し笑う。


「お姉ちゃんも」


「待ってるよ」


「……!」


「ミア」


「何?」


「アリアを知ってるのか?」


「うん」


「どこにいる?」


「……」


ミアは。


少しだけ。


悲しい顔をした。


「お姉ちゃんは」


「今」


「黒い王様のところ」


「終焉王?」


「うん」


「……!」


俺は。


一歩前へ出る。


「案内してくれ」


「いいよ」


ミアは。


頷いた。


「でも」


「一つだけ」


「何?」


「お兄ちゃん」


「何だ?」


「お姉ちゃんを」


「助けたい?」


「ああ」


即答だった。


ミアは。


微笑む。


「だったら」


「途中で」


「絶対に」


「諦めないでね」


「分かった」


そのとき。


背後から。


大きな音がした。


ドォォォン!!


「何だ!」


天井が。


崩れる。


「走って!」


ミアが。


叫ぶ。


「え?」


「早く!」


俺たちは。


走り出した。


ドドドドドドッ!!


巨大な岩が。


次々と落ちてくる。


「こっち!」


ミアが。


細い通路へ入る。


「こんな場所」


「よく分かるな!」


「私は」


「世界樹だから」


「それ」


便利すぎないか?


俺たちは。


ひたすら走る。


やがて。


広い部屋に出た。


「ここは?」


俺が。


立ち止まる。


部屋の中央に。


巨大な水晶があった。


その中には。


無数の光が。


浮かんでいる。


「人?」


カインが。


目を細める。


水晶の中に。


たくさんの人影が見える。


子供。


老人。


兵士。


そして。


見覚えのある顔。


「……帝国兵?」


エリスが。


呟く。


「違う」


ミアが。


答える。


「これは」


「未来」


「未来?」


「うん」


ミアが。


水晶へ手を伸ばす。


すると。


光の一つが。


俺の前へ。


浮かび上がった。


そこには。


街が映っていた。


平和な街。


子供たちが。


笑っている。


俺も。


その街にいた。


セレナ。


エリス。


カイン。


リナ。


そして。


アリア。


「……」


胸が。


熱くなる。


「これが」


「俺たちの未来?」


「そうかもしれない」


ミアが。


言う。


「でも」


その映像が。


突然。


黒く染まった。


街が。


燃える。


人々が。


逃げていく。


空に。


終焉王。


「……!」


別の光が。


現れる。


今度は。


帝都。


そこにも。


終焉王がいる。


そして。


もう一つ。


世界樹。


崩壊している。


「全部」


「未来なのか?」


「うん」


ミアは。


頷く。


「可能性は」


「一つじゃない」


「何百」


「何千」


「何億もある」


「じゃあ」


俺は。


水晶を見る。


「どうすれば」


「正しい未来に行ける?」


ミアは。


静かに。


答えた。


「正しい未来なんて」


「ないよ」


「……」


「お兄ちゃんが」


「選んだ未来が」


「お兄ちゃんにとっての」


「正しい未来になる」


「……」


その言葉は。


不思議と。


胸に残った。


そのとき。


水晶の中に。


一つだけ。


異様な光が現れた。


黒でも。


白でもない。


赤。


真っ赤な光。


ミアの顔色が。


変わる。


「……これ」


「どうした?」


「この未来は」


「見ちゃだめ」


「なぜ?」


「これは」


「お兄ちゃんが」


「全部を失う未来」


「……!」


俺は。


水晶へ手を伸ばす。


「見せてくれ」


「だめ!」


ミアが。


俺の腕を掴む。


「見ちゃだめ!」


「でも」


「知りたい」


「知らなくていい!」


「俺は」


「知らないまま」


「仲間を失うほうが嫌だ!」


「……!」


ミアが。


黙る。


そして。


ゆっくり。


手を離した。


「……分かった」


「でも」


「覚悟して」


「何を?」


ミアが。


水晶へ触れる。


赤い光が。


大きくなる。


そこに。


未来が映った。


「……」


俺は。


言葉を失った。


燃える帝都。


崩壊する世界樹。


倒れているカイン。


血まみれのエリス。


泣き叫ぶリナ。


そして。


セレナ。


彼女は。


俺の前に立っていた。


「……セレナ」


俺の腕の中で。


血を流している。


そして。


俺自身が。


叫んでいる。


「やめろぉぉぉぉっ!!」


未来の俺の目が。


黒く染まっていた。


その手には。


巨大な黒い剣。


そして。


俺の前に。


アリアが立っている。


「……」


アリアは。


泣いていた。


『ごめんね』


『レオン』


『これしか』


『方法がないの』


未来の俺が。


剣を振り上げる。


「――!」


俺は。


水晶から。


手を離した。


「……今の」


「何だった?」


ミアが。


答える。


「可能性の一つ」


「でも」


「まだ」


「決まってない」


「……」


俺は。


拳を握る。


「絶対に」


「この未来にはしない」


「うん」


ミアが。


頷く。


「だから」


「行こう」


「どこへ?」


ミアが。


回廊の奥を指差す。


「お姉ちゃんのところ」


「そして」


「終焉王のところ」


「そこで」


「最後の鍵を」


「探すの」


「最後の鍵?」


「うん」


「第三の鍵を完成させるための」


「最後の鍵」


俺は。


歩き出した。


その後ろを。


仲間たちが続く。


そして。


ミアも。


俺の隣へ。


「ねえ」


「お兄ちゃん」


「何?」


「一つ」


「聞いていい?」


「いいよ」


「もし」


「未来を選ぶとき」


「大切な人を一人だけ」


「犠牲にしなきゃいけなかったら」


ミアが。


俺を見る。


「お兄ちゃんは」


「誰を選ぶ?」


俺は。


少し考えた。


そして。


答えた。


「誰も」


「……」


「そんな未来なら」


「別の未来を探す」


「何度でも」


「……」


ミアは。


嬉しそうに。


笑った。


「やっぱり」


「お兄ちゃんだ」


「何が?」


「ううん」


「何でもない」


そして。


俺たちは。


世界樹のさらに奥へ。


進んでいった。


---


その頃。


世界樹の外。


終焉王の前に。


一人の男が。


立っていた。


ヴァルガス。


「……」


終焉王は。


彼を見る。


『失敗したな』


「……」


「申し訳ありません」


『レオンを』


『完全に取り込めなかった』


「はい」


『それどころか』


『第三の鍵を』


『目覚めさせた』


ヴァルガスが。


顔を上げる。


「ですが」


「まだ」


「方法はあります」


『……』


「レオンには」


「弱点があります」


『何だ?』


ヴァルガスは。


笑った。


「仲間です」


『……』


「彼は」


「誰かを守るためなら」


「自分の命すら」


「簡単に捨てる」


「ならば」


「その仲間を」


「一人ずつ」


「壊せばいい」


終焉王が。


静かに。


笑った。


『なるほど』


『人間らしい』


ヴァルガスが。


頭を下げる。


「すでに」


「帝都へ」


「使者を送ってあります」


『帝都……』


「ええ」


「レオンが世界樹にいる今」


「帝都を落とします」


そして。


その頃。


帝都の空に。


黒い亀裂が。


一本。


走った。


「……!」


街の人々が。


空を見上げる。


亀裂の向こうから。


黒い翼を持つ魔物が。


次々と。


姿を現していく。


そして。


帝都の中央広場。


一人の少女が。


ゆっくり。


地面へ降り立った。


赤い髪。


白い服。


「……」


アリアだった。


だが。


その瞳は。


赤く染まっていた。


「レオン」


彼女は。


小さく呟く。


「ごめんね」


「今度は」


「私が」


「あなたの大切なものを」


「壊す番だから」


――世界樹では。


レオンたちが。


終焉王へ向かって進んでいた。


そして。


帝都では。


新たな戦いが。


始まろうとしていた。

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