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追放された無能魔術師、実は世界で唯一「魔法を創れる」男でした  作者: ななほし


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第129話 第二の選択者

「第二の選択者――レオン」


その文字を。


俺は。


ただ見つめていた。


「……俺?」


誰も。


答えない。


未来の空に。


俺の名前だけが。


浮かんでいる。


レオン。


たったそれだけ。


なのに。


胸の奥が。


嫌なほど。


ざわついた。


「……」


未来の俺も。


同じ文字を。


見ている。


「これは……」


「知ってるのか?」


俺が聞くと。


未来の俺は。


首を振った。


「知らない」


「千年生きてきたけど」


「こんな表示は」


「一度も見たことがない」


「じゃあ」


「どうして俺なんだ?」


「……」


未来の俺は。


少し考えて。


答えた。


「たぶん」


「君が」


「一番」


「選択者になることを」


「嫌がっているから」


「……」


俺は。


眉を寄せる。


「それなら」


「選ぶ必要なんてないだろ」


「うん」


「でも」


未来の俺は。


空を見る。


「世界は」


「君を」


「選んだ」


「……」


その瞬間。


空から。


一つの光が。


落ちてきた。


俺の目の前で。


止まる。


白い光。


手のひらほどの大きさ。


そこから。


声がする。


『第二の選択者』


「……」


『レオン』


「俺は」


「選ばない」


即答した。


光が。


揺れる。


『……』


「俺は」


「もう」


「誰かの未来を」


「背負わない」


「世界の未来も」


「俺一人では」


「決めない」


「……」


『それでも』


「それでもだ」


俺は。


光を見る。


「俺が」


「選択者になる必要が」


「ないなら」


「ならない」


「それだけだ」


――。


未来のミナが。


少しだけ。


笑った。


「……昔のあなたなら」


「受け入れてたね」


「たぶんな」


「でも」


「今は違う」


「うん」


ミナは。


頷いた。


「それが」


「答えなのかもしれない」


「……」


俺は。


空を見る。


すると。


文字が。


変わった。


「第二の選択者――拒否。」


「……!」


ユウトが。


目を見開く。


「拒否って」


「できるんだな」


「俺も知らなかった」


未来の俺が。


呟く。


すると。


空に。


新しい文字が。


現れる。


「選択者を拒否した場合、選択者は存在しない。」


「……」


俺は。


少し。


笑った。


「それでいい」


『本当に?』


声が。


響く。


「誰だ?」


『選択者がいない世界は』


『不安定です』


「……」


『誰も』


『最後の選択を』


『決められなくなります』


「それでいい」


『世界は』


『終われなくなります』


「……」


『始まりも』


『終わりも』


『選ばれません』


「……」


俺は。


少し。


考える。


それは。


悪いことなのか。


終わらない。


始まらない。


ずっと。


途中。


誰も。


決められない。


昔の俺なら。


きっと。


怖かった。


世界が。


前へ進まない。


だから。


誰かが。


決めなければ。


ならないと。


思った。


でも。


今は。


違う。


「……それでも」


俺は。


言った。


「誰か一人が」


「世界全部を」


「決めるよりは」


「いい」


「……」


「みんなが」


「迷ったままでも」


「一緒に」


「明日を探せるなら」


「その方が」


「俺は好きだ」


――。


しばらく。


沈黙。


そして。


空の文字が。


ゆっくり。


消えていった。


「第二の選択者――不在。」


「……」


世界樹が。


一度だけ。


大きく。


揺れる。


そして。


新しい葉が。


一枚。


空から。


舞い落ちてきた。


俺の手のひらに。


文字が。


浮かぶ。


「第36原則・更新――役割を拒む自由。」


「……」


俺は。


その葉を。


見つめる。


「役割を」


「拒む自由……」


未来の俺が。


笑った。


「それ」


「僕にも」


「必要だったのかもしれない」


「……」


「千年間」


「僕は」


「自分が」


「最後の日を選ぶ役割だと」


「思っていた」


「でも」


「それも」


「誰かが決めた役割だった」


「……」


未来の俺は。


空を見上げる。


「僕自身が」


「決めたことじゃなかった」


「なら」


「やめてもいい」


「ああ」


俺は。


頷く。


「やめていい」


「……」


「それで」


「お前が」


「何者になるかは」


「また」


「お前が決めればいい」


未来の俺は。


目を閉じる。


「ありがとう」


――。


その瞬間。


未来の街に。


鐘の音が。


響いた。


――カァン。


一度。


二度。


三度。


街の人々が。


空を見上げる。


「何?」


アリアが。


聞く。


未来のミナが。


答えた。


「選択者が」


「消えたから」


「……」


「千年間」


「この鐘は」


「一度も」


「鳴らなかった」


「どうして?」


「選択者が」


「ずっと」


「存在していたから」


「……」


つまり。


今。


俺が。


拒否したことで。


千年続いた。


何かが。


変わった。


未来の街。


未来の世界。


そして。


未来の俺。


すべてが。


新しい方向へ。


動き始めた。


――。


すると。


街の奥から。


一人の少女が。


走ってきた。


「お父さん!」


未来の俺が。


振り返る。


「どうした?」


少女は。


息を切らしながら。


言った。


「世界樹が」


「変わったの!」


「……」


未来の俺が。


顔を上げる。


「どこが?」


「根っこ!」


「根っこ?」


「うん!」


少女は。


俺たちを見る。


そして。


目を丸くした。


「……え?」


「どうした?」


俺が。


聞く。


少女は。


未来の俺と。


俺を。


交互に見る。


「お父さんが」


「二人いる……」


「……」


未来の俺が。


苦笑する。


「まあ」


「そうなるよね」


少女は。


俺に近づいてくる。


「おじさん」


「おじさん……」


「うん?」


「お父さんと」


「そっくり」


「……」


「もしかして」


「昔の」


「お父さん?」


「……」


俺は。


少し。


笑った。


「そうかもな」


「すごい!」


少女は。


目を輝かせる。


「本当に」


「昔のお父さんだ!」


「……」


未来の俺が。


頭を抱える。


「やめてくれ」


「恥ずかしい」


「なんで?」


「自分で言ってて」


「恥ずかしいから」


少女が。


笑う。


俺も。


笑う。


その光景を。


見ていたら。


胸が。


少しだけ。


温かくなった。


千年後。


世界は。


ちゃんと。


続いていた。


人が。


生まれて。


笑って。


怒って。


食べて。


眠って。


誰かを。


好きになって。


誰かと。


別れて。


また。


出会っている。


「……」


俺は。


ふと。


未来の俺を見る。


「お前」


「幸せだったんだな」


未来の俺は。


少し。


驚いた顔をした。


そして。


笑う。


「うん」


「幸せだった」


「……」


「だからこそ」


「終わりを」


「選ぼうとした」


「……」


「でも」


「今は」


「少しだけ」


「分からなくなった」


「何が?」


未来の俺は。


少女を見る。


「この子が」


「明日を」


「選ぶなら」


「僕が」


「最後の日を」


「選ぶ必要が」


「あるのかなって」


「……」


俺は。


笑った。


「ないんじゃないか?」


「……」


「お前が」


「生きていたって」


「この子の明日は」


「この子のものだ」


「……」


「お前が」


「明日を」


「奪う必要なんて」


「ない」


未来の俺は。


黙っている。


少女が。


俺の手を。


握った。


「ねえ」


「ん?」


「おじさん」


「はい」


「未来って」


「怖い?」


「……」


思わぬ質問だった。


俺は。


少し。


考える。


「怖いよ」


「……!」


「分からないから」


「でも」


「分からないから」


「面白いんだと思う」


少女は。


笑った。


「じゃあ」


「私」


「明日も」


「楽しみ」


「……」


俺は。


胸の奥で。


何かが。


ほどけるのを感じた。


――。


その時。


世界樹の根元から。


光が。


溢れた。


「……!」


地面が。


揺れる。


未来の世界樹。


その根の間から。


一本の。


小さな芽が。


出てくる。


白い芽。


そして。


その芽が。


ゆっくり。


開く。


葉ではない。


花でもない。


小さな。


扉だった。


「……また」


俺は。


苦笑する。


「扉かよ」


ルナが。


隣に立つ。


「扉は」


「あなたたち」


「好きだからね」


「そうなのか?」


「うん」


「……」


扉には。


文字がない。


数字もない。


名前もない。


ただ。


一つだけ。


小さな。


傷がある。


「これ」


俺は。


扉に。


触れる。


――。


頭の中に。


声が。


響いた。


『開けなくてもいい』


「……」


『見なくてもいい』


「……」


『でも』


『知っておいて』


『この扉は』


『未来から』


『過去へ』


『繋がっている』


「……」


未来から。


過去へ。


「つまり」


俺は。


扉を見る。


「この扉を」


「開けたら」


「俺たちの世界に」


「何かが」


「戻ってくる?」


『うん』


「誰が?」


長い沈黙。


そして。


声が。


答える。


『最初に』


『君たちから』


『離れたもの』


「……」


俺は。


固まる。


ルナも。


目を見開く。


ユウトが。


息を呑む。


「最初に」


「離れたもの……?」


ゼロが。


小さく。


呟く。


『……』


そして。


ゼロが。


初めて。


不安そうな顔をした。


「どうした?」


俺が。


聞く。


ゼロは。


扉を見る。


『僕』


「……」


『この扉』


『知ってる』


「……!」


『でも』


『思い出したくない』


「なぜ?」


ゼロは。


しばらく。


黙っていた。


そして。


小さな声で。


言った。


『この扉の向こうで』


『最初の二人は』


『初めて』


『別れたから』


――。


俺は。


息を呑む。


-二日目。


あの日。


俺と。


ルナが。


初めて。


別れた。


でも。


それだけじゃない。


その時。


ゼロが。


残った。


なら。


「……」


俺は。


扉を見る。


「この扉は」


「-二日目へ」


「繋がってるのか?」


ゼロは。


頷いた。


『うん』


「じゃあ」


「俺たちが」


「見なかった」


「もう一つのものも」


「そこに」


「あるのか?」


ゼロは。


答えない。


その代わり。


未来の俺が。


小さく。


呟いた。


「……最初の選択者が」


「いなくなったことで」


「過去への道が」


「開いたんだ」


「……」


「なら」


未来の俺が。


扉を見る。


「今度は」


「過去を」


「変えるんじゃない」


「……」


「過去に」


「何があったのかを」


「ちゃんと」


「知るんだ」


俺は。


頷いた。


「そうだな」


――。


俺たちは。


扉の前に。


集まった。


ルナ。


ユウト。


アリア。


ゼロ。


ソウマ。


ハル。


カエデ。


ミライ。


そして。


未来の俺。


全員が。


扉を見る。


俺は。


手を伸ばした。


けれど。


また。


止める。


「……」


「どうした?」


ユウトが。


聞く。


「この扉」


「二人で開けるんだ」


「……」


ルナが。


俺を見る。


「誰と?」


俺は。


笑う。


「決まってるだろ」


俺は。


ルナに。


手を差し出した。


「最初に」


「一緒に行くって」


「約束した相手と」


ルナは。


少し。


驚いた顔をして。


それから。


笑った。


「うん」


小さな手が。


俺の手に。


重なる。


――。


そして。


もう一つ。


手が。


重なった。


「……?」


見ると。


ユウだった。


「僕も」


「一緒に」


「……」


「最初の弟だから」


「最初を」


「見届けたい」


俺は。


笑う。


「分かった」


さらに。


ゼロが。


手を伸ばす。


『僕も』


「……」


「いいのか?」


『僕が』


『一番』


『知ってるから』


「……」


俺は。


三人の手を。


見つめる。


ルナ。


ユウ。


ゼロ。


そして。


俺。


「……行こう」


四人で。


扉に。


触れる。


――。


ギィィィ……。


扉が。


開いた。


向こうに。


広がっていたのは。


白い空間。


まだ。


世界が。


存在していない。


時間も。


空間も。


何もない。


その中央に。


一つだけ。


椅子が。


あった。


俺は。


息を呑む。


「……また」


椅子。


けれど。


以前の。


「中心」の椅子とは。


違う。


この椅子の前には。


小さな文字が。


刻まれていた。


「最初に選ばなかった者の席」


「……」


ゼロが。


震える。


『……』


俺は。


ゼロを見る。


「知ってるのか?」


『うん』


「誰の席?」


ゼロは。


答えない。


代わりに。


椅子の後ろから。


一人の。


小さな影が。


現れた。


白い服。


黒い髪。


赤い瞳。


俺と。


よく似た顔。


ユウとも。


少し似ている。


その少年は。


俺を見る。


そして。


静かに。


言った。


「やっと」


「来たね」


「……誰だ?」


少年は。


微笑んだ。


「僕は」


「君が」


「最初に」


「選ばなかった」


「もう一人の」


「弟だよ」

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